僕とあの娘

みつ光男

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第11章.  愛をちょうだい

【ミッション】

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 この日は舞だけでなく
咲良ともかなり話をすることが出来た。

これまではどうしても素っ気ない電話対応のイメージが
抜けきらなかったのだが

この日の饒舌な雰囲気で
咲良のイメージは随分と変わった。

そして"彼女の親友"と仲良くなれたのも
舞との距離が更に縮まったような思いだった。

「あ、ちょっと」

舞がトイレに行ったのを見計らったかのように
咲良が話し始めた。

「あの娘、多分うちに気を遣ってて…」

「え?何で」

「うち、この前…別れたんだ」

「…彼氏と?」

「そっ、何か寂しくってね…そんな時にほら、舞は、ねぇ」

そう言って咲良はまじまじと僕を見た。

「あ、何か、俺、申し訳ないな」

「ううん、気にしなくっていいって」

ー 彼氏ってコンパで見つかるもんじゃないし、ね
やっぱり何か運命めいたモノがないと…

「だよねー!良いこと言うじゃない!うちも同感」

ー有香なんかはそう言うので手っ取り早く、って
感じだから

でもうちはコンパとかグループで男友達と出掛けるとか
そんなのはうんざりなんだよね。

「新しい出会いがあるといいね」

「ほんと、それ」

「このカッコで言っても説得力ないか」

「あはは、だよね、今日は飲むぞー!」

 舞がトイレから戻ると咲良は
まるで火がついたかのように
アルコールを注文し始めた。

「え?そんなに飲んで大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫ぅ~、あれ?何杯目だったっけな~?」

「何か…しどろもどろになってるけど」

「あ、咲良、底無しだから、気が済むまで飲んだら…ね」


グー・・・

ほどなく咲良はそのまま寝てしまった。

「そう言うこと、か」

「酒癖が悪いわけじゃないから、でも連れて帰るのは大変だけどね、ふふっ」

「仲いいんだね」

「そぅ、咲良には助けられてる、わたし一人じゃ何にも出来ないから」

舞にもたれかかったままスースーと
子供のように寝息を立てて眠る咲良を見ていると
この二人の絆の強さを感じた。

 僕が女装したままと言うこともあって
宴の場はまるで女子会だった

咲良はまだ舞の膝の上で眠っているので
途中からは僕と舞、二人きりのような感じに。

門限まであと1時間となったところで

「じゃ、コウイチくん、そろそろ」

「え?」

「今日のメインイベント…」

「・・・あっ!」

そうだった

そもそも今日は舞の寮の部屋に行くことが
メインの目的だった

僕は自分が女装させられた理由を
すっかり忘れていた。

「でも、門限の時間を過ぎたら俺、外には出られないよ?」

「最初から…そのつもり」

「え?それってまさかの?」

「お・と・ま・り してってね!」

何てことだ…

舞と咲良は最初から
僕を女装させたのだろう

僕は少しだけ滞在してキリのいい時間に
帰るつもりだったのだが。


「大丈夫だよ!入る時に寮長に見つからなかったら」

舞は涼しい表情でそう言った。

「ま、マジで言ってる?」

「うん、先輩も同じことしてたけどバレなかったし」

こうなったら腹をくくるしかない

僕は"女子"として舞の部屋に行くと言う
選択肢しか残されていないのだから。

「でね、コウイチくん、咲良をお願い!」


酔いつぶれて一向に起きる気配のない
咲良を背負って寮へ送ってきた、と言うてい
僕はこの二人の部屋に潜入することになった。


 舞に手伝ってもらって咲良を僕の背中に乗せる
咲良はまるで紙のように軽かった、

だから連れて帰るのにはさほど苦労はなかった。

しかしその時、僕の背中の上の咲良は目を開けて
舞と申し合わせたように目配せをした

"よし!ミッションその1、成功!"

それに僕が気づくはずもなかった。
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