僕とあの娘

みつ光男

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第11章.  愛をちょうだい

【3人の女子】

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 とは言うものの女性もののワンピースを身に纏って
しかもメイクをして外出するのは
なかなかの勇気だった。

幸い、管理人さんは不在だったが
外に出るなりこれまで感じたことのない異変を感じた。

足の間を風が吹き抜ける、そんな不思議な感覚

女子がスカートを穿く時はこんな感じなのか
と言うのを正に『実感』した。


「似合ってるよぉ、ナカムラくん!」

「冷やかさないでくれよ、なかなか恥ずかしいんだから」

「やっぱり喋ると男子だね、コウイチくん」

「そりゃそうだよ、まさか、こんな姿で舞と出かけるとは、ね」

「なかなかないよぉ、こんな体験」

「じゃ、うちも今度男装しよっかな」

「あはは、何で咲良まで」

「あ、あくまでも趣味で」

「どんな趣味だよ」

「その格好だと全然説得力ないー!」

「俺は趣味でやってるんじゃないから」

バスに乗り込み"3人の女子"が向かったのは
舞と咲良の寮の近くにある
食べ放題のしゃぶしゃぶ店だった。

このお店は個室なので
女装を気にせず心おきなく話も出来る。

僕は舞と咲良の関係性や出会いのきっかけ
そして看護学校での話を聞きたかった。

「ここならコウイチくん、好きなだけ食べれるよ!」

僕が見た目と反してかなり大食いなのを
釣りの後の夕食やフードコートでの食べっぷりを 見て
当然ながら舞は知っていた。

その洞察力と心遣いには
いつものことながら感服させられる。

舞と咲良の出会いから今に至るまで、の
僕が知りたかったことを

咲良がこれでもか、とばかりに話してくれた。

ー うちと舞が同じ部屋になったのは
本当ラッキーだったよ

入寮の日が一緒で、クラスも同じ

性格は違うけど
内面は似た者同士だからすぐに打ち解けて
お互いに色々相談したり悩み打ち明けたり

そう、恋愛の話もよくしたよね
どっちが先に彼氏できるかな、なんてね。

有香…隠岐田有香のことは知ってるよね?
あの娘、入学してすぐの頃

東郷大のヤツと付き合っててさ

「あ、私立の大学だね、少し外れたとこにある」

「そ、ここだけの話、ちょっとガラの悪い学校でさ」


昔、有香に彼氏がいたのは少し驚いた
異性でも友人感覚で接するイメージがあったので
人は見かけによらないものだ、と。

「うちらもよくコンパに駆り出されてさ、ねぇ、舞」

「そうそう、そんなことあったよね」

ー 二人ともコンパでは
かなり声かけられたりしたんじゃない?

「あ・・・うちはそんなのあんまりないけど、
舞は…ねぇ?」

「あったよねぇ」

どこから嗅ぎ付けたのか知らないけど
部屋に電話かけてくるヤツとかいてさ、

それがしつこいんだよ…!


「あ、だからか、さくちゃんが…」

「誰にでも電話対応が冷たくなったのは、ね」

「それで俺がかけた時も」

「ははは、そうだった?もう癖になってて」

ー 舞は・・・

僕から電話があるかも知れないことは
話してなかったのかな?


「うん、聞いてたんだよ、でも名乗らないからわかんなくて」

「なるほど、そう言うことか」


「だから二人で『それはきっとコウイチくんだろうな』って噂してたの」


これで何となく舞が有香に語ったあの件…

実際に話してないのにも関わらず
僕から電話があった、と話した真相が掴めた。

おそらく舞には僕と付き合う直前に開かれた
例のコンパの後にも

有香あたりからこっそり連絡先を仕入れた
面倒くさいヤツからの電話があったりしたのだろう。

その時期と重なって連絡していた僕に対して
咲良は冷たい応対をしていたのだ

今の気さくな二人の会話を聞いていると

咲良が決して冷徹な女子でないのは
僕に対する態度からも一目瞭然

そして舞との信頼関係もしっかりしている。


「それじゃもう今は、変なヤツから電話とかはないってことだ」

「そ!一回あったけど『舞には彼氏いるから!』って切ってやったら…」

「もうかかってこなくなったよ」

まさかその彼氏が…

今、女装して舞と外食してるだなんて
その男は思ってもいないだろう。

「ははは!それな!ほんっとに!」

そう言って咲良は大笑いした。
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