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第11章. 愛をちょうだい
【嵐の予感】
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舞と出かける日は大抵寝不足だ
ついつい時間をかけて
シミュレーションをしてしまうため
寝るのは深夜、気づけば朝になっている。
この日は6時から夕食の予定
3限の講義が終わって15時過ぎに部屋に戻ると
あまりの眠気に襲われて
横になるや否やそのまま眠ってしまった。
ほどなく…
「…コウイチくん、コウイチくん?」
遠くから舞の声が聞こえた。
夢うつつの僕は驚かせてやろう、と
頭から布団を被ったまま
舞の声がする方へ起き上がり
そのまま布団ごと"声の主"を抱きしめて
布団の中に引きずり込もうとした。
「きゃっ」
あれ?
いつもの舞のリアクションにしては小さいな
こんなことをしたら舞はもっと驚くはずなのに…
目を開けて最初に視界に飛び込んで来たのは
目を真ん丸に見開いて驚く舞の姿だった。
「あれっ?舞がこんなとこに…?」
それじゃ、今僕が抱きしめているのは
誰…だ?
「ナカムラくん…意外と強引だねぇ」
…咲良だった。
まんざらでもなさそうな表情を浮かべながら
「いつも舞にこんなことしてんの?」
「あ、いや、たまたま今日は驚かそうと思って…」
「そろそろ離さないと…ほら、舞が」
僕の目の前にいたのは目だけでなく
口もポカンと開けて呆気に取られている舞の姿だった。
「あ、いや、これは…だね」
「あ、大丈夫、大丈夫だよ!ちょっとビックリしたけど」
何だか波乱の予感がした。
寝ぼけていた僕は舞と勘違いして
咲良を抱きしめてしまうと言う失態を演じたが
決してその場の空気が重くなることはなく
むしろ部屋の中で3人、その話題で盛り上がった。
舞はその時の僕の様子を振り返って
涙を流しながら爆笑していた。
「あの時のコウイチくんの顔!」
「いや、だってビックリしたって!」
30分ほど話したところで
二人が早めにこの部屋に来た本題を話し始めた。
「じゃあ舞、例のモノを」
「うん」
舞が取り出したのは可愛いげなワンピース
そしてメイク道具と女性用のウィッグだった。
嫌な予感しかしなかった。
まさか舞と咲良がこんな計画をしていたとは…
二人は僕に女装をさせて寮の中に紛れ込ませるらしい。
「う、嘘だろ!マジで?そんなのすぐにバレるって!」
「大丈夫だよ、ねぇ!」
二人は顔を見合わせて笑っている。
「じゃ、コウイチくんおとなしくしててね!」
「うわー!やめてくれー!」
「動いちゃダメよ、ナカムラくん!」
僕はそのまま咲良に後ろから羽交い締めにされ
下手に反撃することが出来ない。
僕は二人の思惑通り、
少しずつ"女子"へと変貌していった。
すっかりメイクを終え
仕上げとばかりに僕にウィッグを被せた咲良は
「うわー、かわいいー!連れて帰りたい!」
「ダメだよ!コウイチくんは私と一緒に行くんだから!」
まさか、僕はこの姿で…
「そうだよ、このままご飯に行こう」
部屋の中ならまだしも、この姿で外に出る?
この二人は一体何でそんなに楽しそうに?
「前にもね、試したんだ、咲良の彼氏に同じこと」
「それで…どうだったの?」
「そりゃ、酷いもんでさ、もう二度と見たくないって感じ」
「それに比べてコウイチくんは…」
「かわいい…よね?」
「よね?」
嵐の予感は当たった、むしろ大嵐だ
それでも僕は何故か楽しかった
女装して外出することが…ではない。
舞といるとこんな不思議な体験も出来る
更には舞衣と咲良、仲の良い二人の世界に
ようやく入り込めた、そんな妙な優越感からだった。
ついつい時間をかけて
シミュレーションをしてしまうため
寝るのは深夜、気づけば朝になっている。
この日は6時から夕食の予定
3限の講義が終わって15時過ぎに部屋に戻ると
あまりの眠気に襲われて
横になるや否やそのまま眠ってしまった。
ほどなく…
「…コウイチくん、コウイチくん?」
遠くから舞の声が聞こえた。
夢うつつの僕は驚かせてやろう、と
頭から布団を被ったまま
舞の声がする方へ起き上がり
そのまま布団ごと"声の主"を抱きしめて
布団の中に引きずり込もうとした。
「きゃっ」
あれ?
いつもの舞のリアクションにしては小さいな
こんなことをしたら舞はもっと驚くはずなのに…
目を開けて最初に視界に飛び込んで来たのは
目を真ん丸に見開いて驚く舞の姿だった。
「あれっ?舞がこんなとこに…?」
それじゃ、今僕が抱きしめているのは
誰…だ?
「ナカムラくん…意外と強引だねぇ」
…咲良だった。
まんざらでもなさそうな表情を浮かべながら
「いつも舞にこんなことしてんの?」
「あ、いや、たまたま今日は驚かそうと思って…」
「そろそろ離さないと…ほら、舞が」
僕の目の前にいたのは目だけでなく
口もポカンと開けて呆気に取られている舞の姿だった。
「あ、いや、これは…だね」
「あ、大丈夫、大丈夫だよ!ちょっとビックリしたけど」
何だか波乱の予感がした。
寝ぼけていた僕は舞と勘違いして
咲良を抱きしめてしまうと言う失態を演じたが
決してその場の空気が重くなることはなく
むしろ部屋の中で3人、その話題で盛り上がった。
舞はその時の僕の様子を振り返って
涙を流しながら爆笑していた。
「あの時のコウイチくんの顔!」
「いや、だってビックリしたって!」
30分ほど話したところで
二人が早めにこの部屋に来た本題を話し始めた。
「じゃあ舞、例のモノを」
「うん」
舞が取り出したのは可愛いげなワンピース
そしてメイク道具と女性用のウィッグだった。
嫌な予感しかしなかった。
まさか舞と咲良がこんな計画をしていたとは…
二人は僕に女装をさせて寮の中に紛れ込ませるらしい。
「う、嘘だろ!マジで?そんなのすぐにバレるって!」
「大丈夫だよ、ねぇ!」
二人は顔を見合わせて笑っている。
「じゃ、コウイチくんおとなしくしててね!」
「うわー!やめてくれー!」
「動いちゃダメよ、ナカムラくん!」
僕はそのまま咲良に後ろから羽交い締めにされ
下手に反撃することが出来ない。
僕は二人の思惑通り、
少しずつ"女子"へと変貌していった。
すっかりメイクを終え
仕上げとばかりに僕にウィッグを被せた咲良は
「うわー、かわいいー!連れて帰りたい!」
「ダメだよ!コウイチくんは私と一緒に行くんだから!」
まさか、僕はこの姿で…
「そうだよ、このままご飯に行こう」
部屋の中ならまだしも、この姿で外に出る?
この二人は一体何でそんなに楽しそうに?
「前にもね、試したんだ、咲良の彼氏に同じこと」
「それで…どうだったの?」
「そりゃ、酷いもんでさ、もう二度と見たくないって感じ」
「それに比べてコウイチくんは…」
「かわいい…よね?」
「よね?」
嵐の予感は当たった、むしろ大嵐だ
それでも僕は何故か楽しかった
女装して外出することが…ではない。
舞といるとこんな不思議な体験も出来る
更には舞衣と咲良、仲の良い二人の世界に
ようやく入り込めた、そんな妙な優越感からだった。
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