僕とあの娘

みつ光男

文字の大きさ
上 下
48 / 129
第10章.  つづいてゆくのかな?

【その時】

しおりを挟む
 下宿に戻った僕たちはようやく一息ついた。

舞が借りたCDを帰るまでに
録音しようと言うことになったので

帰り道に買ったジュースを飲みながら
音楽を流しながら二人で話していた。

「有香には話してなかったんだ?俺らのこと」

「うん、まぁ有香が背中押してくれた、ってのあるんだけど。何か一人抜け駆けしたみたいで申し訳なくて…ね」

「舞は優しいんだね」

「でもね、その割には…」

有香と出かける機会も減っちゃったし
今日話すまで同じクラスなのに
コウイチくんとのこと、全然伝えてなかったし

友情より恋愛を取るタイプ、なんて
思われてるかもね

「有香が恋愛、って何かイメージ沸かないな」

「そう…だよね?ふふっ、でも有香もきっとそれなりに、ねぇ」

「あんなわちゃわちゃした人は、なかなか、ねぇ、相手がいたとしても」

すると舞は真剣な表情でこう尋ねた。

「わたし…どんなだった?」

「え?最初に見た時?」

「そぉ」

「あの時、有香との間に入って心配してくれたよね?優しいなぁって」

これまで有香や美波のサバサバした感じに慣れていたから

そのほんわりとした感じが印象的だった、な。

「そっかぁ、暗いとかキャラがわかんない、とか思われてるのかな?なんて思ってたから」

「そんなことなかったよ、あ、あと…」

「あと、何?」

「顔面はストライクだった」

「あはは、ストライク…って!」

「それと、これ一番大事なとこ…なんだけど」

「え?なになに?」

ー舞は俺の考えてること、よくわかってて
伝えたいこととかもすぐにわかってくれて

全然、気を遣わなくていいんだ

だからいつも一緒にいて安心できるんだよ。


「え!そんなの考えたことなかったよ、そうなんだ?おせっかいじゃない?」

「全然!ほんとにいい感じなんだよ」

「うれしいっ!それじゃわたしたち・・・」

ー つづいていくよね、これからもずっと?

「もちろん、舞に嫌われない限りは、はは」

「それ、ないよ、あぁ、よかった」

「どうしたの何か心配だった?」

「あの…わたしね、、」

 舞は心底安心したような表情でこう言った。

「わたしたちって、もうそれなりの歳じゃない?」

「うん」

「何て言うか、その、こんな感じで会って、出掛けて、だけじゃ…ね?、あの…ね、コウイチくん、物足りなくないかな、なんて、ね」

「わかり合えないかも…って?」

「そぅ…だから、セ、セ・・・」

「ん?」


その時、舞の口にした言葉は…


「セックスとか…しちゃった方がいいのかな、なんて…ね」

「ぶーーーっ!」

「あぁ…言っちゃった!」

舞の口から意外な言葉が出たことに驚いた僕は
ジュースを思い切り吹き出してしまった。

真っ赤に頬を染めて俯く舞だっだが
その表情は何だか微笑ましくもあった。

「あー!ごめんね!変なこと言って」

「そ、そんな心配、してたんだ?俺、そんなに物欲しそうに…?」

「うぅん、違うの、コウイチくんはそんなことないと思うけど、その、我慢とかしてたら、、って思うと」

僕は舞の隣に腰かけてなだめるように言った。

「舞はかわいいからそんな気にもなるよ正直、
でもそれって流れって言うか雰囲気が大事だからね」

ー嘘は言いたくない、本当の気持ちを伝えよう…

「そんな時が来ればいいな、って思うこともあるよ、それでわかることもあるだろうから」

ーでもお互い、無理はしないでおこう
時が来れば自然とそうなるもんだよ。

「そう…だよね、わたし、何言ってんだろ、もう!」

計算したつもりはないのだが
僕は突然、隣に座る舞にもたれかかった。

舞も僕に身を任せてお互いそのまま寄り添い合った。


「…コウイチくん」

「舞…」

もしかしたらこのタイミング、かも知れない。

見つめ合った僕たちの唇はほんの数センチまで
接近していた。

舞がそっと瞳を閉じた
今だ!今しかない!!と確信した

その時・・・



「いやぁ!もう!何かやってられないよな、ほんとに!」

「もう世の中のヤツら全員不幸になればいいんだ!」

突如、部屋の外から怒号のような会話が聞こえてきた。

「ぷっ!」

「ははは!」

鼻先が当たるまでほんの数ミリのところだった
僕と舞は思わず吹き出した。

「誰?」

「酔っぱらい…かな?」

どうも悟史か誰かが酔っ払って
大声で愚痴を言い合っているようだ。

僕は部屋のドアを開けてみたが
既にそこには誰もいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

処理中です...