僕とあの娘

みつ光男

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第10章.  つづいてゆくのかな?

【その時】

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 下宿に戻った僕たちはようやく一息ついた。

舞が借りたCDを帰るまでに
録音しようと言うことになったので

帰り道に買ったジュースを飲みながら
音楽を流しながら二人で話していた。

「有香には話してなかったんだ?俺らのこと」

「うん、まぁ有香が背中押してくれた、ってのあるんだけど。何か一人抜け駆けしたみたいで申し訳なくて…ね」

「舞は優しいんだね」

「でもね、その割には…」

有香と出かける機会も減っちゃったし
今日話すまで同じクラスなのに
コウイチくんとのこと、全然伝えてなかったし

友情より恋愛を取るタイプ、なんて
思われてるかもね

「有香が恋愛、って何かイメージ沸かないな」

「そう…だよね?ふふっ、でも有香もきっとそれなりに、ねぇ」

「あんなわちゃわちゃした人は、なかなか、ねぇ、相手がいたとしても」

すると舞は真剣な表情でこう尋ねた。

「わたし…どんなだった?」

「え?最初に見た時?」

「そぉ」

「あの時、有香との間に入って心配してくれたよね?優しいなぁって」

これまで有香や美波のサバサバした感じに慣れていたから

そのほんわりとした感じが印象的だった、な。

「そっかぁ、暗いとかキャラがわかんない、とか思われてるのかな?なんて思ってたから」

「そんなことなかったよ、あ、あと…」

「あと、何?」

「顔面はストライクだった」

「あはは、ストライク…って!」

「それと、これ一番大事なとこ…なんだけど」

「え?なになに?」

ー舞は俺の考えてること、よくわかってて
伝えたいこととかもすぐにわかってくれて

全然、気を遣わなくていいんだ

だからいつも一緒にいて安心できるんだよ。


「え!そんなの考えたことなかったよ、そうなんだ?おせっかいじゃない?」

「全然!ほんとにいい感じなんだよ」

「うれしいっ!それじゃわたしたち・・・」

ー つづいていくよね、これからもずっと?

「もちろん、舞に嫌われない限りは、はは」

「それ、ないよ、あぁ、よかった」

「どうしたの何か心配だった?」

「あの…わたしね、、」

 舞は心底安心したような表情でこう言った。

「わたしたちって、もうそれなりの歳じゃない?」

「うん」

「何て言うか、その、こんな感じで会って、出掛けて、だけじゃ…ね?、あの…ね、コウイチくん、物足りなくないかな、なんて、ね」

「わかり合えないかも…って?」

「そぅ…だから、セ、セ・・・」

「ん?」


その時、舞の口にした言葉は…


「セックスとか…しちゃった方がいいのかな、なんて…ね」

「ぶーーーっ!」

「あぁ…言っちゃった!」

舞の口から意外な言葉が出たことに驚いた僕は
ジュースを思い切り吹き出してしまった。

真っ赤に頬を染めて俯く舞だっだが
その表情は何だか微笑ましくもあった。

「あー!ごめんね!変なこと言って」

「そ、そんな心配、してたんだ?俺、そんなに物欲しそうに…?」

「うぅん、違うの、コウイチくんはそんなことないと思うけど、その、我慢とかしてたら、、って思うと」

僕は舞の隣に腰かけてなだめるように言った。

「舞はかわいいからそんな気にもなるよ正直、
でもそれって流れって言うか雰囲気が大事だからね」

ー嘘は言いたくない、本当の気持ちを伝えよう…

「そんな時が来ればいいな、って思うこともあるよ、それでわかることもあるだろうから」

ーでもお互い、無理はしないでおこう
時が来れば自然とそうなるもんだよ。

「そう…だよね、わたし、何言ってんだろ、もう!」

計算したつもりはないのだが
僕は突然、隣に座る舞にもたれかかった。

舞も僕に身を任せてお互いそのまま寄り添い合った。


「…コウイチくん」

「舞…」

もしかしたらこのタイミング、かも知れない。

見つめ合った僕たちの唇はほんの数センチまで
接近していた。

舞がそっと瞳を閉じた
今だ!今しかない!!と確信した

その時・・・



「いやぁ!もう!何かやってられないよな、ほんとに!」

「もう世の中のヤツら全員不幸になればいいんだ!」

突如、部屋の外から怒号のような会話が聞こえてきた。

「ぷっ!」

「ははは!」

鼻先が当たるまでほんの数ミリのところだった
僕と舞は思わず吹き出した。

「誰?」

「酔っぱらい…かな?」

どうも悟史か誰かが酔っ払って
大声で愚痴を言い合っているようだ。

僕は部屋のドアを開けてみたが
既にそこには誰もいなかった。
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