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第09章. “愛してる”がわからない
【愛してるって…】
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理由なんて考えても仕方のないことだ
僕は美波とある日突然このような関係になった
ただそれだけのこと。
しかしここに至っても
僕と美波が恋人のような関係に進展する
そんな感じが全くなかった。
何故だろう?
恋愛とは二人で艱難辛苦を乗り越えて
もっと悩み、葛藤を重ねながら
ようやく成立するものだと僕は勝手に思い込んでいた。
それがこうも容易く体を交えてしまうことで
完結してしまったのではないだろうか?
決して美波との関わりが友情の部分も含めて
そんなに薄っぺらなものだとは思えないが
何だか呆気ない繋がりだと錯覚したのだろう。
恋愛において“体の関係”がゴールであるはずはないのに
そこをゴールに設定してしまったような
そんな罪悪感すら感じた。
まさか僕は舞と同じ境遇になっても
そのように思ってしまうのだろうか?
そしてこの既成事実を重い十字架として背負ってしまい
常に舞に対して後ろめたさを感じながら
接していくことになるのだろうか?
いや、それは違う
少なくともこれは舞と付き合う前の
些細な出来事に過ぎない
そう思っておこう。
これが罪であると言うのなら
過去に交際した相手が存在する時点で罪じゃないか?
そんな天使と悪魔の囁きが
先ほどから僕の頭の中で繰り返されて
舞と下宿に向かう道すがら気づけばこれまで以上に
その手を強く握りしめていた
「コ、コウイチくん?どうしたの?痛いよ」
「あ、ごめん、強く握りすぎてた?何かさ暗くなると舞がどこかに行ってしまいそうでさ」
「ま…舞…って」
「あ、ごめん、呼び捨てしちゃ・・・」
「舞って呼んでくれたんだね!初めて…」
こんなにも純情過ぎる舞に
美波との過去を知られるわけにはいかない
ゆっくり…そうゆっくりと舞とは時間を重ねていこう
" 愛してる "の意味がわかるまでは・・・
あの日、美波は冗談交じりに
「お泊まりしちゃおうかなー」
などと笑いながら話していたが
「こんな狭いベッドに二人で寝たら絶対に落ちるよ、俺」
「大丈夫だよ、もっとくっついて寝たら」
そんな会話の途中で
僕はそのまま眠ってしまったようで
目覚めた時は明け方になっていて
さっきまで隣で眠っていた美波の姿はなかった。
「あ…帰ったんだ」
まだはっきりとしない意識の中で
そう思っただけで
僕はまた眠りについた。
その時…美波はまだドアの前に座り込んでいた
まるでこの部屋から離れるのを惜しむように。
「ムラコウ…ありがとね」
もうこれで会うこともないかな
ムラコウは私なんかとより…
そう、そうだよね…
ようやく立ち上がった美波は
まだ朝日の昇りきっていない薄闇に向けて
車を飛ばした。
あの日そんな "情事" が交わされた部屋に今、
僕は舞と二人でいる
無論、舞はそんなことを知るはずもない。
僕は美波とある日突然このような関係になった
ただそれだけのこと。
しかしここに至っても
僕と美波が恋人のような関係に進展する
そんな感じが全くなかった。
何故だろう?
恋愛とは二人で艱難辛苦を乗り越えて
もっと悩み、葛藤を重ねながら
ようやく成立するものだと僕は勝手に思い込んでいた。
それがこうも容易く体を交えてしまうことで
完結してしまったのではないだろうか?
決して美波との関わりが友情の部分も含めて
そんなに薄っぺらなものだとは思えないが
何だか呆気ない繋がりだと錯覚したのだろう。
恋愛において“体の関係”がゴールであるはずはないのに
そこをゴールに設定してしまったような
そんな罪悪感すら感じた。
まさか僕は舞と同じ境遇になっても
そのように思ってしまうのだろうか?
そしてこの既成事実を重い十字架として背負ってしまい
常に舞に対して後ろめたさを感じながら
接していくことになるのだろうか?
いや、それは違う
少なくともこれは舞と付き合う前の
些細な出来事に過ぎない
そう思っておこう。
これが罪であると言うのなら
過去に交際した相手が存在する時点で罪じゃないか?
そんな天使と悪魔の囁きが
先ほどから僕の頭の中で繰り返されて
舞と下宿に向かう道すがら気づけばこれまで以上に
その手を強く握りしめていた
「コ、コウイチくん?どうしたの?痛いよ」
「あ、ごめん、強く握りすぎてた?何かさ暗くなると舞がどこかに行ってしまいそうでさ」
「ま…舞…って」
「あ、ごめん、呼び捨てしちゃ・・・」
「舞って呼んでくれたんだね!初めて…」
こんなにも純情過ぎる舞に
美波との過去を知られるわけにはいかない
ゆっくり…そうゆっくりと舞とは時間を重ねていこう
" 愛してる "の意味がわかるまでは・・・
あの日、美波は冗談交じりに
「お泊まりしちゃおうかなー」
などと笑いながら話していたが
「こんな狭いベッドに二人で寝たら絶対に落ちるよ、俺」
「大丈夫だよ、もっとくっついて寝たら」
そんな会話の途中で
僕はそのまま眠ってしまったようで
目覚めた時は明け方になっていて
さっきまで隣で眠っていた美波の姿はなかった。
「あ…帰ったんだ」
まだはっきりとしない意識の中で
そう思っただけで
僕はまた眠りについた。
その時…美波はまだドアの前に座り込んでいた
まるでこの部屋から離れるのを惜しむように。
「ムラコウ…ありがとね」
もうこれで会うこともないかな
ムラコウは私なんかとより…
そう、そうだよね…
ようやく立ち上がった美波は
まだ朝日の昇りきっていない薄闇に向けて
車を飛ばした。
あの日そんな "情事" が交わされた部屋に今、
僕は舞と二人でいる
無論、舞はそんなことを知るはずもない。
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