僕とあの娘

みつ光男

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第08章. 大好きだよ

【スタートライン】

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 これまで舞と過ごす時間は
いつも有香が一緒だったり複数人で会ってたから

気づかなかったことや出来なかった話題があった。

だから初めて二人で会う時は本当にお見合いの席みたいに
堅くなるんじゃないかと心配したのだが

それは全くなかった。

逆に二人だけの方がお互い素をさらけ出せて
より距離感が近くなったようにすら思えた。

特に舞は二人きりの方が
遠慮なく俺に何でも話しかけてくれる、
それは意外な発見でもあった。


 成るべくして、出会うべくして僕たちはここに到達した
それはまるでずっと前から付き合っているような
よそよそしさのない“始まり”だった。

何よりも舞の性格の良さや
一歩先を読むような気配りがあって、のことで

僕はただ、その流れの中にただ
身を委ねているだけでよかった。


僕自身も舞と出会ったことが
自堕落でフラフラした私生活を改めるきっかけになった。

きっと随分と "いい奴" になったと思う、

それは正に少し前の80年代中盤、
プロ野球で話題になった言葉
『落合効果』ならぬだった。

 これまで校門の辺りを行き来する看護学生を見る度に
少しヤンキーっぽいイメージが先行して

派手な雰囲気に近寄りがたくありながら
少なからず羨望の思いも抱いていた。

 舞もまたどちらかと言えば
ビジュアル的には『派手なタイプ』ではあるが

それはメイクとか髪色ではなくて
顔の造形も含めた全体的な雰囲気であり

また実際に話してみると
清楚な部分と華やかさがほどよくブレンドされた
ハイブリッドな感覚とでも言おうか、

両面を持ち合わせたような心地よさがあり
恐らく僕はそこに惹かれたのだろう。


「付き合ってください」
「今日から付き合おう」


そんな台詞はお互い一度も口にしていない。

それよりも「始まり」と言うフレーズが
最もふさわしいように思えた。

こうして初めて会ってから8ヶ月を要して
僕と舞はようやくここまで辿り着いた。

これだけの時間をかけて
ようやく“出会ってしまった”二人…

それでもお互いの前には何の障害もなく
越えなければいけない高い壁もなかった。

いつでも自然体な二人、飾る必要もない。

ただ二人の気持ちが歩み寄るための時間だけが
必要だったのだろう。

それは、出会う前から出会う事が
この日を迎えることが決まっているかのように

まるで「運命」に導かれたようだった。
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