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第08章. 大好きだよ
【今度…】
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「舞の帰りが遅いから探してたんだよ、そろそろ寮母さんの巡回もあるし」
「ごめーん、ギリギリ間に合いそう」
咲良は僕をちらっと見ると笑顔で軽く会釈をした、
その表情は過去の電話応対ほど冷たい印象ではなかった。
「もしかして、例の彼氏…さん?」
「そ!中村コウイチくん」
「ナカムラくん?よろしくね!舞、ド天然でしょ?仲良くしてあげてねー」
「あ、こちらこそいつも電話で…」
「ぷっ!最初の頃、名乗らずに切ってた人だね!」
「そうでーす」
「コウイチくん、咲良が愛想ないから怖くて名乗れなかったんだって」
「えっ!そんなこと言ってないよ!全然!」
「ふふっ、気にしないで、それには訳があるから」
「そっ!」
そう言って二人は申し合わせたようにニコニコと笑った。
「ねぇ、咲良、今度…」
「え?もしかして?アレ試すの?」
「そう、コウイチくんならピッタリでしょ」
そう言うと二人は僕を見ながら
顔を見合わせてニヤニヤと笑った。
「何か意味深だなぁ」
「気にしないで、全然変なことじゃないから」
「コウイチくん、今度、咲良も一緒にご飯とか
食べに行こうよ」
「そうだね、また近いうちに」
「それっ、楽しみだ!で、何でここに?舞を送ってきてくれたの?」
「そっ!バスに乗れなかったから自転車で」
「へぇ~!優しい!いい人だね、舞!」
「でしょお…?」
「それじゃまたね舞ちゃん」
「うん、今日はありがとう、楽しかったぁー!」
こうして二人は寮へと戻っていった、
舞に親友と思える存在がいたことに少し安心した。
舞は明らかに有香や美波とはタイプが違う。
なので、舞と近い雰囲気を持った咲良が
友人だったことに何故だか安心感を覚えた。
行きは15分で到着した道のりも
帰りは疲労困憊だったからか30分を要した。
田舎街だからか22時を過ぎると
ひとつ、またひとつと店の灯りが消えていく。
薄暗い街灯に羽虫がぶつかる
バチバチと言う音をを聞きながら
僕は漕いでいた自転車を停めて夜空を見上げた。
北浜舞・・・
僕がこれまで思い描いてきた
「理想の彼女」に最も近い存在
そんな舞とこの日から始まった物語
これからのことを考えると
部屋に戻ってから過ごす一人の時間も
残された夕食の後片付けすら
全く苦痛に感じられなかった。
むしろ舞が使っていたコップや箸を
洗うことすら何故か愛しく思えてきた。
川俣荘に戻ると赤電話の隣のホワイトボードに
"中村さん、キタハマさんから電話がありました"
そう伝言が書き記されていた。
それから僕はつい数10分前まで一緒だった舞と
またひとしきり電話で話してから部屋を片付け始めた。
舞と初めて二人で過ごす長い1日は
ここでようわく終わりとなった、
『サヨナラ』の言葉はお互い無いままに・・・
「ごめーん、ギリギリ間に合いそう」
咲良は僕をちらっと見ると笑顔で軽く会釈をした、
その表情は過去の電話応対ほど冷たい印象ではなかった。
「もしかして、例の彼氏…さん?」
「そ!中村コウイチくん」
「ナカムラくん?よろしくね!舞、ド天然でしょ?仲良くしてあげてねー」
「あ、こちらこそいつも電話で…」
「ぷっ!最初の頃、名乗らずに切ってた人だね!」
「そうでーす」
「コウイチくん、咲良が愛想ないから怖くて名乗れなかったんだって」
「えっ!そんなこと言ってないよ!全然!」
「ふふっ、気にしないで、それには訳があるから」
「そっ!」
そう言って二人は申し合わせたようにニコニコと笑った。
「ねぇ、咲良、今度…」
「え?もしかして?アレ試すの?」
「そう、コウイチくんならピッタリでしょ」
そう言うと二人は僕を見ながら
顔を見合わせてニヤニヤと笑った。
「何か意味深だなぁ」
「気にしないで、全然変なことじゃないから」
「コウイチくん、今度、咲良も一緒にご飯とか
食べに行こうよ」
「そうだね、また近いうちに」
「それっ、楽しみだ!で、何でここに?舞を送ってきてくれたの?」
「そっ!バスに乗れなかったから自転車で」
「へぇ~!優しい!いい人だね、舞!」
「でしょお…?」
「それじゃまたね舞ちゃん」
「うん、今日はありがとう、楽しかったぁー!」
こうして二人は寮へと戻っていった、
舞に親友と思える存在がいたことに少し安心した。
舞は明らかに有香や美波とはタイプが違う。
なので、舞と近い雰囲気を持った咲良が
友人だったことに何故だか安心感を覚えた。
行きは15分で到着した道のりも
帰りは疲労困憊だったからか30分を要した。
田舎街だからか22時を過ぎると
ひとつ、またひとつと店の灯りが消えていく。
薄暗い街灯に羽虫がぶつかる
バチバチと言う音をを聞きながら
僕は漕いでいた自転車を停めて夜空を見上げた。
北浜舞・・・
僕がこれまで思い描いてきた
「理想の彼女」に最も近い存在
そんな舞とこの日から始まった物語
これからのことを考えると
部屋に戻ってから過ごす一人の時間も
残された夕食の後片付けすら
全く苦痛に感じられなかった。
むしろ舞が使っていたコップや箸を
洗うことすら何故か愛しく思えてきた。
川俣荘に戻ると赤電話の隣のホワイトボードに
"中村さん、キタハマさんから電話がありました"
そう伝言が書き記されていた。
それから僕はつい数10分前まで一緒だった舞と
またひとしきり電話で話してから部屋を片付け始めた。
舞と初めて二人で過ごす長い1日は
ここでようわく終わりとなった、
『サヨナラ』の言葉はお互い無いままに・・・
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