僕とあの娘

みつ光男

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第08章. 大好きだよ

【盟友】

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 車輪が擦り切れるくらい全力でペダルを漕いで
ようやく舞の寮のすぐ近くまで到着した。

「はぁはぁ…今、何分かな?」

「9時47分!ギリギリ間に合いそう、ありがとう!」

さすがに寮の前まで送っていくのはマズいと思い
寮の近くに停車して少し二人で歩いた。

 ほどなく月明かりに照らされた白い壁の建物が
見上げた街灯の上から確認できた。

「あそこに見えるアパート、わたしが住んでる寮だよ」

「これが"禁断の女子寮"かぁ…」

「ふふふっ、そんな大したことないよ、川俣荘とそんなに変わんない」

「いやいや、あそこはほぼ未開のジャングルみたいなモンだから」

「最近は虫、出てないのぉ?」

「蚊は年がら年中」

「あ、そう言えば…痒い、ははは」

舞の左肘は小さく腫れて赤くなっていた。

「舞ちゃんの血を吸うとは」

「なになに?」

「不届きな蚊、だな、でもちょっと」

「なぁに?」

「羨ましいかも」

「ふふっ、コウイチくんもいかがですか?」

舞はふざけて左腕を差し出した、
僕は少し強面な表情を作って

「ドラキュラくらいにいただいちゃうよ」

冗談ぽく脅かした。

「ダメだよ、そしたらわたし、カラッカラに干からびちゃう」

何てことない会話が今はとても楽しい。

「あ、そうだ!」

「何?」

「今度、寮の中に入ってみる?」

「いやいやいや、さすがにそれは!」

「わたしに秘策があるの」

「え?どんな?」

「いつも咲良と…あ、わたしの同室の娘と話してるんだけど」

「うんうん」

「その作戦、コウイチくんならちょうどピッタリハマりそうかも」

「何だろう?気になるなぁ」

「また話すね、その『秘策』について」

「うん、楽しみにしてるよ」

「それじゃぁ、ね…」


その時だった…

「舞!」

「あ、咲良!どうしたの?」

突然目の前に現れたのは
舞に電話する度に取り次いでくれる

当初は"無愛想な印象"しかなかった
同室の女の子、浅川咲良だった。

身長159センチの舞よりも更に小柄
もしかしたら150センチあるかないか、くらい

そして黒髪のショートカット、
素っぴんなこともあってか
咲良はまるで少年のような風貌だった。
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