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第07章. 釣りに行こう
【モーニングコール】
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亮二の助言に後押しされたから、言う訳ではないが
思い切って舞に電話をかけたことは
僕をとても良い方向へと導く結果となった。
こうして2人で出掛けるきっかけになった訳だし。
『一緒にどこかに行きたいな』
そう言い出したのは舞だった。
「そうだね、電話で話すのもいいけどこれからは遊びに行ったりご飯に行ったりしようか?」
「うん、そうだね!楽しみ!」
実にあっさりとしたものだった…
恐らく舞も僕にそう言われた時の
心の準備は既に出来ていたのだろう。
とは言うものの
今まで一度として2人で会った事はなかったから
果たして間が持つのだろうか?と少し心配ではあった
有香や美波とは全く違う性格なのは
さすがの僕でもわかっていた。
むしろ舞は僕の色に合わせて順応することで
彼女自身の輝きを放つタイプのように
電話で話した時に感じた。
お互いの知らない部分を吸収し合うことで
より深く強い関係へと進展するのでは?
だからお互い無理をせずに自然体で接しよう、
これが僕の舞と2人で会う前に
思い描いたビジョンだった。
そんなことを考えていたせいで
前日の夜はほとんど眠れなかった。
ようやく意識がなくなったと思ったら
既に外では賑やかに雀が鳴いていた。
ハッ!として時計を見ると朝の8時半
舞衣との約束の時間だ。
ほどなく僕の部屋に近づく小さな足音が
廊下越しに伝わってきた。
コンコン…!
今まで聞いたこともないような
穏やかで微かなノックの音が響いた。
それは僕が体験してきた
がさつでにぎやかな『音』たちとは
まるで異なる清涼感すら感じた。
「は、はーい!」
「コウイチくん?起きてる?」
「ごめーん今目が覚めた、開けていいよ」
「おはよ」
目の前に立っていたのはこれまで見たことのある
スマートでファッショナブルは舞ではなく
スポーティーなジャージとTシャツ姿の
アクティブな佇まいの舞衣だった。
「さすが!」
「似合ってる?」
「さすが」の意味を舞衣は即座に理解したようだ。
釣りに行こう、となった当日
お洒落に着こなしてくる場違いな女子だったら
きっとガッカリしていたことだろう。
舞は僕が何も伝えなくても全てわかっている。
「あんまり寝れなかったの?」
「よくわかったね、楽しみすぎて」
「わたしもそうだったから」
この時僕は思った、こんなにも安らぎを覚えることが
今まであっただろうか、と。
「ほんとはお昼用に作ったんだけど…」
舞はそう言うとバッグから
タッパーを取り出した。
「お腹すいちゃったから一緒に食べよ」
「すっげー!こんなに食べれるかな、ありがとう」
期せずして舞の手作り弁当で
僕たちの初デートはスタートした。
思い切って舞に電話をかけたことは
僕をとても良い方向へと導く結果となった。
こうして2人で出掛けるきっかけになった訳だし。
『一緒にどこかに行きたいな』
そう言い出したのは舞だった。
「そうだね、電話で話すのもいいけどこれからは遊びに行ったりご飯に行ったりしようか?」
「うん、そうだね!楽しみ!」
実にあっさりとしたものだった…
恐らく舞も僕にそう言われた時の
心の準備は既に出来ていたのだろう。
とは言うものの
今まで一度として2人で会った事はなかったから
果たして間が持つのだろうか?と少し心配ではあった
有香や美波とは全く違う性格なのは
さすがの僕でもわかっていた。
むしろ舞は僕の色に合わせて順応することで
彼女自身の輝きを放つタイプのように
電話で話した時に感じた。
お互いの知らない部分を吸収し合うことで
より深く強い関係へと進展するのでは?
だからお互い無理をせずに自然体で接しよう、
これが僕の舞と2人で会う前に
思い描いたビジョンだった。
そんなことを考えていたせいで
前日の夜はほとんど眠れなかった。
ようやく意識がなくなったと思ったら
既に外では賑やかに雀が鳴いていた。
ハッ!として時計を見ると朝の8時半
舞衣との約束の時間だ。
ほどなく僕の部屋に近づく小さな足音が
廊下越しに伝わってきた。
コンコン…!
今まで聞いたこともないような
穏やかで微かなノックの音が響いた。
それは僕が体験してきた
がさつでにぎやかな『音』たちとは
まるで異なる清涼感すら感じた。
「は、はーい!」
「コウイチくん?起きてる?」
「ごめーん今目が覚めた、開けていいよ」
「おはよ」
目の前に立っていたのはこれまで見たことのある
スマートでファッショナブルは舞ではなく
スポーティーなジャージとTシャツ姿の
アクティブな佇まいの舞衣だった。
「さすが!」
「似合ってる?」
「さすが」の意味を舞衣は即座に理解したようだ。
釣りに行こう、となった当日
お洒落に着こなしてくる場違いな女子だったら
きっとガッカリしていたことだろう。
舞は僕が何も伝えなくても全てわかっている。
「あんまり寝れなかったの?」
「よくわかったね、楽しみすぎて」
「わたしもそうだったから」
この時僕は思った、こんなにも安らぎを覚えることが
今まであっただろうか、と。
「ほんとはお昼用に作ったんだけど…」
舞はそう言うとバッグから
タッパーを取り出した。
「お腹すいちゃったから一緒に食べよ」
「すっげー!こんなに食べれるかな、ありがとう」
期せずして舞の手作り弁当で
僕たちの初デートはスタートした。
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