29 / 129
第06章. 夜中の3時のロマンチック
【舞いあがれ!】
しおりを挟む
それでもしばらくの間、
僕は舞とどう関わっていけばいいのかわからなかった。
まず、あんな話を聞かされたにも関わらず
未だに舞に電話をかけることができない。
有香から話を聞いてはや数日過ぎていたが
この日も下宿に据え付けの赤電話の前で
空き缶に入った10円玉を眺めながら
ずっと立ち尽くす日が続き
「な、何してるんすか?中村さん?」
そんな僕を見ては1階の新住人である
新入生の後輩三浦に毎夜怪しまれる始末。
何度か思い切ってダイヤルしてみたが
その度受話器を取るのはやはり舞ではなく
いつものように愛想のない対応な同室の女の子。
あぁ…何か怪しまれてるな…?
変な奴が何回も電話してきてるって思われるんじゃ?
これ以上かけるともしかしたら何か言われる?
いや、この娘は電話があったことを舞に伝えてないのか?
そりゃそうだよな…名乗りもせず毎回
「またかけ直します」なんだから伝えようもないか…
それから数日が過ぎ、ようやく思い立って
ダイヤルを回したのが木曜日の夜22時過ぎ
この日を選んだのは
週末だと外出している可能性がある、と読んだからだ。
木曜の夜なら、この時間なら、
大丈夫?
そう言い聞かせて決意しながらも
もしかしたらお風呂に?
タイミングを逃してまたあの同室の娘に煙たがられたら…
なんて考えるとどうしても躊躇ってしまう。
遂に『えーい、どうにでもなれ!』と
半ば勢いに任せてもう覚えてるはずなのに
舞からもらったメモを手にダイヤルを回した。
「もしもし」
あ、今回もこのパターンか?
今日も電話に出たのはやはり同室の女の子だった。
「あ、北浜さんは…いないですよね?またかけ直します」
「えっと、いつもの方ですよね?舞に伝言しましょうか?」
「あ、よかったらお願いします、中村…中村鴻一って言ったらわかると思うので…」
「ナカムラさん…ですね?じゃ電話があったこと伝えときますので」
「あ…よろしくお願いいたします…」
恐らく同い年と思われるその女の子に
何故か敬語を使いながら僕は受話器を置いた。
またタイミングを間違えた、
次はどのタイミングでかけたらいいんだ…
あまり頻繁に電話して「しつこい人」と思われたら
逆に舞に対して申し訳ない。
でも今回は一歩前進したな、しっかり舞に伝言を頼めた
これで疑惑も少しは解消されるのでは?
後はまた日を改めてかけ直せばいい…
僕からのアプローチは少しずつ舞に届くだろう
あれこれ考えながら部屋に戻るや否や
けたたましく下の階から電話のベルが鳴る音が聞こえた。
僕は部屋の敷居に躓きながら
再び廊下に飛び出し
階段を飛ぶように降りると電話に向けて全力疾走
「…もしもし!」
三浦が出るよりも早く受話器を掴んだ、
多分「そうではないか」と思ったからだ。
僕は舞とどう関わっていけばいいのかわからなかった。
まず、あんな話を聞かされたにも関わらず
未だに舞に電話をかけることができない。
有香から話を聞いてはや数日過ぎていたが
この日も下宿に据え付けの赤電話の前で
空き缶に入った10円玉を眺めながら
ずっと立ち尽くす日が続き
「な、何してるんすか?中村さん?」
そんな僕を見ては1階の新住人である
新入生の後輩三浦に毎夜怪しまれる始末。
何度か思い切ってダイヤルしてみたが
その度受話器を取るのはやはり舞ではなく
いつものように愛想のない対応な同室の女の子。
あぁ…何か怪しまれてるな…?
変な奴が何回も電話してきてるって思われるんじゃ?
これ以上かけるともしかしたら何か言われる?
いや、この娘は電話があったことを舞に伝えてないのか?
そりゃそうだよな…名乗りもせず毎回
「またかけ直します」なんだから伝えようもないか…
それから数日が過ぎ、ようやく思い立って
ダイヤルを回したのが木曜日の夜22時過ぎ
この日を選んだのは
週末だと外出している可能性がある、と読んだからだ。
木曜の夜なら、この時間なら、
大丈夫?
そう言い聞かせて決意しながらも
もしかしたらお風呂に?
タイミングを逃してまたあの同室の娘に煙たがられたら…
なんて考えるとどうしても躊躇ってしまう。
遂に『えーい、どうにでもなれ!』と
半ば勢いに任せてもう覚えてるはずなのに
舞からもらったメモを手にダイヤルを回した。
「もしもし」
あ、今回もこのパターンか?
今日も電話に出たのはやはり同室の女の子だった。
「あ、北浜さんは…いないですよね?またかけ直します」
「えっと、いつもの方ですよね?舞に伝言しましょうか?」
「あ、よかったらお願いします、中村…中村鴻一って言ったらわかると思うので…」
「ナカムラさん…ですね?じゃ電話があったこと伝えときますので」
「あ…よろしくお願いいたします…」
恐らく同い年と思われるその女の子に
何故か敬語を使いながら僕は受話器を置いた。
またタイミングを間違えた、
次はどのタイミングでかけたらいいんだ…
あまり頻繁に電話して「しつこい人」と思われたら
逆に舞に対して申し訳ない。
でも今回は一歩前進したな、しっかり舞に伝言を頼めた
これで疑惑も少しは解消されるのでは?
後はまた日を改めてかけ直せばいい…
僕からのアプローチは少しずつ舞に届くだろう
あれこれ考えながら部屋に戻るや否や
けたたましく下の階から電話のベルが鳴る音が聞こえた。
僕は部屋の敷居に躓きながら
再び廊下に飛び出し
階段を飛ぶように降りると電話に向けて全力疾走
「…もしもし!」
三浦が出るよりも早く受話器を掴んだ、
多分「そうではないか」と思ったからだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
闇鍋【一話完結短編集】
だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。
ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。
念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。
読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる