僕とあの娘

みつ光男

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第06章. 夜中の3時のロマンチック

【既成事実の上書き作戦】

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 これまでの彼女の素振りからは
『想われてる』なんて考えた事はなかったから
どんな心境で舞と関わっていけばいいのだろう?
と少し困惑した。

有香の言うとおり、本来ならここは
僕が積極的に動かないといけないんだろうけど…


ー 大丈夫なのかなぁ?
まだ『手遅れ』にはなってないよね?


「大丈夫だよ、舞のムラコウへの気持ちが冷めることなんて、ないだろうからね」

そこまで言わせるとは、よほど舞は熱心に
有香にあれこれと僕のことを聞いているのだろう。

「じゃあ、今日はこの辺で帰るよ。舞には私からも言っとくけど…好きってことでいいんだよね?ムラコウも舞のことは?」

「す、す、好き、って?」

「だってそう言うことでしょ?じゃ、舞のこと頼んだよ、ムラコウ!」

「え?あ、わかった…」

「また話してみなよ、いい娘だからさ、舞」

「うん」

「舞のこと、泣かせたらダメだからね!」

有香は最後に僕に一言釘を刺して帰っていった。

 ふと窓の外を見るとカーテンの隙間から
ほんのりと朝の光が射し込んできた。

時間は既に日曜日の早朝5時過ぎで
既に東の空から白々と朝日が昇り始めている。

有香を見送った後、僕はその流れで
下宿の周りをあてもなくふらふらと歩いてみた。

そしてあの日、初めて舞衣を見た
レンタル屋の駐車場まで来ると

あの日の淡い記憶が呼び戻された。

僕は意味もなくそこにある自販機で
ジュースを買ってから部屋へと戻り

少し動揺はしてはいたけど

嬉しいような恥ずかしいような
何とも言えない気持ちのままベットに潜り込んだ。

「舞ちゃん・・・かぁ…舞ちゃんが俺のこと…」

その表情は気持ち悪いくらいに
ニヤニヤしていた…はずだ。

 横になってもなかなか寝付けなかった、
朝帰りした1年前の10人ドライブ、
あの日帰宅したのもこのくらいの時間だったが

あの時のモヤモヤとした気持ちとは全く違う感覚。

僕の周辺で、そして僕の心の中で何が起きているのか?
それすら何の結論にも辿り着きそうにない、

何はさておき舞と電話で話す、
まずはそこから始めないと。

ここまでのフィクションの部分を
ノンフィクションに塗り替えることから

舞との関わりを始めようと思った。

 有香はきっと僕のことをあれこれと
舞に話してるのだろうし僕は何をすべきなんだろう、と。


ー 舞が『この前ムラコウから電話かかってきた』って言ってたよ…

あの日、有香から言われた言葉が
まだ僕の中で引っ掛かっていた。

僕からかけた事は一度もない、
なのに舞衣は何故、そんなことを…?

 ある日、亮二やシンちゃんと色々話してる時に
たまたま恋愛の話になったので僕は二人に聞いてみた。

ー ちょっと聞いてほしいんだけど…

例えば、まだ何のやり取りもしてないのに
連絡先を教えた男子から電話もらったって
友達に話したりしてる…

そんな女の子がいると仮定して、

その娘ってどんな気持ちでそれ言ってるんだろう?
この場合、その男は女子にどう接したらいいと思う?…と

「こいつ、また難しいこと言い出したな」

亮二は笑ってたけど

「そりゃ、男がガンガン行かなきゃダメだろ。それは相手に思われてるんだから」

その一言で話が片付けられてしまった。
珍しくシンちゃんも同じ意見だった。

まさか『その男』と言うのが僕だとは
亮二も思ってなかったらしく

またいつもの妄想を
歌詞のネタにでもするつもりなんだろってくらいの
軽く受け止めての回答だったのだろう。

僕としては藁にもすがりたい思いでの質問だった。
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