僕とあの娘

みつ光男

文字の大きさ
上 下
28 / 129
第06章. 夜中の3時のロマンチック

【既成事実の上書き作戦】

しおりを挟む
 これまでの彼女の素振りからは
『想われてる』なんて考えた事はなかったから
どんな心境で舞と関わっていけばいいのだろう?
と少し困惑した。

有香の言うとおり、本来ならここは
僕が積極的に動かないといけないんだろうけど…


ー 大丈夫なのかなぁ?
まだ『手遅れ』にはなってないよね?


「大丈夫だよ、舞のムラコウへの気持ちが冷めることなんて、ないだろうからね」

そこまで言わせるとは、よほど舞は熱心に
有香にあれこれと僕のことを聞いているのだろう。

「じゃあ、今日はこの辺で帰るよ。舞には私からも言っとくけど…好きってことでいいんだよね?ムラコウも舞のことは?」

「す、す、好き、って?」

「だってそう言うことでしょ?じゃ、舞のこと頼んだよ、ムラコウ!」

「え?あ、わかった…」

「また話してみなよ、いい娘だからさ、舞」

「うん」

「舞のこと、泣かせたらダメだからね!」

有香は最後に僕に一言釘を刺して帰っていった。

 ふと窓の外を見るとカーテンの隙間から
ほんのりと朝の光が射し込んできた。

時間は既に日曜日の早朝5時過ぎで
既に東の空から白々と朝日が昇り始めている。

有香を見送った後、僕はその流れで
下宿の周りをあてもなくふらふらと歩いてみた。

そしてあの日、初めて舞衣を見た
レンタル屋の駐車場まで来ると

あの日の淡い記憶が呼び戻された。

僕は意味もなくそこにある自販機で
ジュースを買ってから部屋へと戻り

少し動揺はしてはいたけど

嬉しいような恥ずかしいような
何とも言えない気持ちのままベットに潜り込んだ。

「舞ちゃん・・・かぁ…舞ちゃんが俺のこと…」

その表情は気持ち悪いくらいに
ニヤニヤしていた…はずだ。

 横になってもなかなか寝付けなかった、
朝帰りした1年前の10人ドライブ、
あの日帰宅したのもこのくらいの時間だったが

あの時のモヤモヤとした気持ちとは全く違う感覚。

僕の周辺で、そして僕の心の中で何が起きているのか?
それすら何の結論にも辿り着きそうにない、

何はさておき舞と電話で話す、
まずはそこから始めないと。

ここまでのフィクションの部分を
ノンフィクションに塗り替えることから

舞との関わりを始めようと思った。

 有香はきっと僕のことをあれこれと
舞に話してるのだろうし僕は何をすべきなんだろう、と。


ー 舞が『この前ムラコウから電話かかってきた』って言ってたよ…

あの日、有香から言われた言葉が
まだ僕の中で引っ掛かっていた。

僕からかけた事は一度もない、
なのに舞衣は何故、そんなことを…?

 ある日、亮二やシンちゃんと色々話してる時に
たまたま恋愛の話になったので僕は二人に聞いてみた。

ー ちょっと聞いてほしいんだけど…

例えば、まだ何のやり取りもしてないのに
連絡先を教えた男子から電話もらったって
友達に話したりしてる…

そんな女の子がいると仮定して、

その娘ってどんな気持ちでそれ言ってるんだろう?
この場合、その男は女子にどう接したらいいと思う?…と

「こいつ、また難しいこと言い出したな」

亮二は笑ってたけど

「そりゃ、男がガンガン行かなきゃダメだろ。それは相手に思われてるんだから」

その一言で話が片付けられてしまった。
珍しくシンちゃんも同じ意見だった。

まさか『その男』と言うのが僕だとは
亮二も思ってなかったらしく

またいつもの妄想を
歌詞のネタにでもするつもりなんだろってくらいの
軽く受け止めての回答だったのだろう。

僕としては藁にもすがりたい思いでの質問だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

処理中です...