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第05章. 海まで行こうよ
【誘惑の美波】
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「え?別れたって例の束縛が強い彼氏?」
「そうそう!よく覚えてるね」
「てっきりあの話聞いた時は別れてると思ってて…」
「それが、何かズルズルと…ね」
ムラコウにCDを返しに行けなかったのもそいつのせい。
「誰に借りた?」
「男か?」
「2人で会うのか?」ってうるさくてね…
ー女友達から借りたんだよ、って
目の前で有香に返したから…そいつの見てる前で。
「有香から聞いてない?CDのこと」
「あ、それでかぁ、有香があのライブの時に
CD持ってきたのは」
「受け取った?」
「いや、まだ…あの日は置き場がなくてね、持って帰ってもらったんだよ」
「ふふっ、実は今持ってるの、私が」
「え?何で?」
ーあいつと別れたんならもう美波が返せばいいじゃん
有香にそう言われてさ…だから今日持ってきてる。
「長い間ありがとね、ムラコウ」
もしかしてこのホテルって…?
「そう、時々来てたんだ」
でも、もう来ることもないかな?なんて思ったらさ
何か、あんなヤツと来た場所なのに
懐かしくなっちゃって…
「そんなもんなんじゃない?」
「そうかなぁ?」
ーその彼氏と別れる決定的な原因ってあったのかな?
「聞いてよ!あんだけ束縛しときながらさ、
よそに別の女作ってたんだよ!二股!」
「それ、最低じゃね?…あ、ごめん悪口だな」
「その通りだよ、サイテー!」
ーそれでこのホテルに来たのも
過去の自分を清算したくて1人で来れないから俺を…
「ううん、最初はそんなつもりじゃなかった」
なら何で?
「何かね、あんな男でもいなくなると寂しい、って言うかさ…孤独に耐えられなくて」
「で、都合よく俺が今日、暇してたって訳だね」
「えー!何かその言い方、ひどいなー!」
「はは、怒った?」
「…怒ってない、だって誰でも良かったわけじゃないから」
「ほんとに?」
「ほんとだよぉ!」
美波の言葉を全て鵜呑みにしたわけではなかったが
そう言われるとやはり気分は悪くない。
「とりあえず、ご飯食べよう」
「そうだね」
当然?と言っては何だが
このような場所に来れば
話すネタも自然とかなり大胆になる。
「ムラコウは、これまでどれくらい経験、してるの?」
「え?それ聞くの罰ゲームじゃない?」
「何かモテそうだもん」
「いや、見た目もパッとしないし、そんなことないよ」
「見た目…大事だけどやっぱり優しくないとね」
「そっか?それならチャンスあり、かな?」
「自画自賛してる」
「ははは」
上手くはぐらかすことができたが
僕自身、過去の男女交際歴など話すに及ばないほど
知れたものだ。
周りからはバンドマンだし遊んでるように思われがちだが
決してそんなことはなかった。
「ふーん」
「何だよ?」
私が思うにムラコウはかなりうぶだよね。
「え?」
「私にはわかっちゃう」
「さすが!恋愛経験の賜物、かな?」
「だって…」
「私が近くに行くとビクッてなるんだもん」
まんまと美波に見抜かれていた、
過去の失恋経験からどうしても
女子に対して臆病になりがちだった。
会話なら何とかなるけど
その先に踏み込まれるとまるで借りてきた猫だ。
「そう言うとこ、かわいいから何かつい、くっつきたくなるんだよね」
そう言うと美波は
ぎこちなくベッドに腰かけて食事をする僕に
じわりじわりと体をすり寄せてきた。
「そうそう!よく覚えてるね」
「てっきりあの話聞いた時は別れてると思ってて…」
「それが、何かズルズルと…ね」
ムラコウにCDを返しに行けなかったのもそいつのせい。
「誰に借りた?」
「男か?」
「2人で会うのか?」ってうるさくてね…
ー女友達から借りたんだよ、って
目の前で有香に返したから…そいつの見てる前で。
「有香から聞いてない?CDのこと」
「あ、それでかぁ、有香があのライブの時に
CD持ってきたのは」
「受け取った?」
「いや、まだ…あの日は置き場がなくてね、持って帰ってもらったんだよ」
「ふふっ、実は今持ってるの、私が」
「え?何で?」
ーあいつと別れたんならもう美波が返せばいいじゃん
有香にそう言われてさ…だから今日持ってきてる。
「長い間ありがとね、ムラコウ」
もしかしてこのホテルって…?
「そう、時々来てたんだ」
でも、もう来ることもないかな?なんて思ったらさ
何か、あんなヤツと来た場所なのに
懐かしくなっちゃって…
「そんなもんなんじゃない?」
「そうかなぁ?」
ーその彼氏と別れる決定的な原因ってあったのかな?
「聞いてよ!あんだけ束縛しときながらさ、
よそに別の女作ってたんだよ!二股!」
「それ、最低じゃね?…あ、ごめん悪口だな」
「その通りだよ、サイテー!」
ーそれでこのホテルに来たのも
過去の自分を清算したくて1人で来れないから俺を…
「ううん、最初はそんなつもりじゃなかった」
なら何で?
「何かね、あんな男でもいなくなると寂しい、って言うかさ…孤独に耐えられなくて」
「で、都合よく俺が今日、暇してたって訳だね」
「えー!何かその言い方、ひどいなー!」
「はは、怒った?」
「…怒ってない、だって誰でも良かったわけじゃないから」
「ほんとに?」
「ほんとだよぉ!」
美波の言葉を全て鵜呑みにしたわけではなかったが
そう言われるとやはり気分は悪くない。
「とりあえず、ご飯食べよう」
「そうだね」
当然?と言っては何だが
このような場所に来れば
話すネタも自然とかなり大胆になる。
「ムラコウは、これまでどれくらい経験、してるの?」
「え?それ聞くの罰ゲームじゃない?」
「何かモテそうだもん」
「いや、見た目もパッとしないし、そんなことないよ」
「見た目…大事だけどやっぱり優しくないとね」
「そっか?それならチャンスあり、かな?」
「自画自賛してる」
「ははは」
上手くはぐらかすことができたが
僕自身、過去の男女交際歴など話すに及ばないほど
知れたものだ。
周りからはバンドマンだし遊んでるように思われがちだが
決してそんなことはなかった。
「ふーん」
「何だよ?」
私が思うにムラコウはかなりうぶだよね。
「え?」
「私にはわかっちゃう」
「さすが!恋愛経験の賜物、かな?」
「だって…」
「私が近くに行くとビクッてなるんだもん」
まんまと美波に見抜かれていた、
過去の失恋経験からどうしても
女子に対して臆病になりがちだった。
会話なら何とかなるけど
その先に踏み込まれるとまるで借りてきた猫だ。
「そう言うとこ、かわいいから何かつい、くっつきたくなるんだよね」
そう言うと美波は
ぎこちなくベッドに腰かけて食事をする僕に
じわりじわりと体をすり寄せてきた。
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