僕とあの娘

みつ光男

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第05章. 海まで行こうよ

【Motel】

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 車から降りた美波は
明らかに動揺している僕を見てこう言った。

「ごめんね、びっくりした?」

「そりゃ、ね…でも何か訳ありって感じだな」

「そ…それは間違いないね。よかったら話、聞いてくれる?」

「ここで?」

「人のたくさんいるとこで話したくないんだ」

「うん…わかった、いいよ」

「ありがと、じゃ行こっか?」

館内に入った僕たちは
カーテンで閉ざされた受付の前を通り過ぎると

好きな部屋が選べるパネルを見つけた。

「へぇ、こんな感じなんだね」

僕が妙に感心していると美波は笑いながら

「お客さま、どちらのお部屋がお気に入りですかぁ?」

「…そうだなぁ」

「あ、お金の心配ならしなくていいよ」

「え、別にそう言うわけじゃ、、」

「お支払いのことなら社会人の私に任せてよ」

「でも、そんな訳には…」

「大丈夫、大丈夫、それくらいなら。それに
私が強引に連れて来たわけだし、さ」

「うん、でも少しだけなら大丈夫だよ」

「じゃ!気持ちだけ受け取っとくね、ありがと」

そう言って美波はスッと僕に体を寄せてきた、
少し前ならドキドキしていただろうが

今やそれくらいではもう僕も驚かなくなっていた。

僕たちは部屋を決めてエレベーターの前に立つ。

「まだ来ないね…」

「誰か乗ってるのかな?」

そんな話をしてる間にランプが1Fを指し

およそ二人しか乗れないであろう
狭くて薄暗いエレベーターに入ると

3階の部屋へと僕たちは向かった。


324号室・・・

部屋の中は薄暗い黄色の電灯が灯いているだけで
それだけで既に妙な気持ちの昂りを覚えてしまい

これはマズい、と部屋の灯りを
めいっぱい明るくした。

そしてその行為は
正解だったとすぐに気づくこととなった。

 美波は物珍しそうに室内をウロウロしながら
浴室やトイレのドアを全開にした。

部屋の中央には大きめのダブルベッド
枕が二つ、並んでいる

明らかに2人で過ごすための空間だ。

僕が所在なさげに部屋の真ん中に立っていると
いきなり後ろから美波が

「ムラコウ~っ!」と
僕の名を呼びながら抱きついてきたので

そのまま二人してベッドへと転がり落ちた。

向かい合わせになった美波の顔がすぐそこにある。

美波がふざけて

「ふっ」と顔に息を吹きかけてきた。

「ねえ…?」

「何?」

?…これから」

「な、な、何言ってんだよ!」

僕は慌てて飛び起きた。

ベッドの真ん中で大きく背伸びをしながら

「冗談だよ、冗談!」

その直後、美波は急に真剣な表情でこう話し始めた。

「私、別れたんだよね、ついこの前…」
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