僕とあの娘

みつ光男

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第04章. Girl(s) next door

【アドレス】

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「あ、知ってる、知ってる、だって前会った事あるのに、え~っと、名前は…」

「わかるぅ?」

「ま・・・舞ちゃんだった?かな?」

「わ!覚えてくれてたんだぁ」

「舞っ!よかったね、覚えてるって!」


実は久しぶりに舞の顔を見たこともあり
なかなか思い出せなかったので

記憶の糸を辿りながらの答えだったが
それは紛れもなく舞だった。

思い出せて…よかった
この時、心から思った。

 何だか初めて会った時よりも
随分と可愛くなってるような気がしたけど

この頃の僕はやはり、そんな気の利いた台詞は
口に出して言えなかった。


そしてあの頃と比べて何が変わったかと言うと
今日は舞の方から
とても積極的に会話をしようとしてることだった。

以前は誰かの影に隠れている感じで
時々口を挟む程度だったのがこの日の舞は違っていた。

自らがトークを切り出して
僕に質問したり話題を振ってくれたりした。

そして何よりも…久方ぶりに見た舞の容姿は
正に「女神」だった。

ほんのりうっすらメイクだが目元はぱっちりした猫目
毛先がややウェーブしている少し茶色に染まったロングヘアー、

とにかくビジュアルは僕のストライクゾーン、
ど真ん中だ。


 話に没頭する二人、その目を盗んで僕は
舞のことばかり見てしまっていた。

そのせいか時々目が合う…すると舞は
これまで見たことのない笑顔を投げ掛ける。

確かに当時から会う度に
舞のことは少し気になりかけていたが

数ヶ月の空白はこれほどまでに
一人の女子を垢抜けさせるものだろうか?

平静を装っていたものの、珍しく僕は
胸の鼓動を押さえる事が出来なかった。

その音が二人に聞こえるんじゃないかと
本気で気になって

僕は少しテレビのボリュームを上げた。

 そして偶然なのか運命だったのか・・・
それとも彼女なりの決意の表れだったのか?

6月3日

この日は舞の20歳の誕生日だった。


 この日どういう流れで
二人が僕の部屋に来たのかは知らないけど
かなり長い時間、かれこれ3時間くらいは
部屋にいたと思う。

三人で話し込んでる途中でふと時計を見たら
ちょうど夜の10時半を少し回ったところだった。

映りの悪いテレビを観ながら有香が

「この番組、面白くて観てんの?」

全然面白くないけど屋外アンテナの調子が悪くて
ここしか映らないからなー、と

笑いながら話したのは覚えている。

饒舌で笑顔が堪えない舞を初めて見れたことは
これまでとは違う大きなポイントだった、

それはまるで僕との距離が前より縮まってることを主張、
と言うか強調したような素振り

いい意味でのを感じた。

それが不快ではなく、むしろ僕に対して

「お互いに気を遣わないでいようね」と
態度で示してくれているようで

前よりは親しく話せている?
どことなく距離が縮まっているのを感じた。

 今思うと、有香に対して
"私もこんな感じで話が出来るんだよ"と
自己主張していたかのようだった。

「ムラコウ、何か書くもの持ってない?メモ帳でもチラシでもいいから」

帰り際に有香がそう言うので
何するつもりだろうと思ってメモ用紙を渡すと

「わたし、寮なんだけどね」

そう言って舞は
自分の部屋の電話番号を教えてくれた。

「私のもいる?需要あるかは別として、一応ね」

自虐ぽく笑いながら有香もアドレスを教えてくれた、
二人ともわざわざ丁寧に住所まで手書きで。

「これなら来年は年賀状が出せるよね」

「よろしくね」

有香とふざけて話してる途中

「もし私が部屋にいなかったらもう一人の娘に伝言しといて、寮は二人部屋だから」

「うん、今度かけてみる」

「かけてね本当に…待ってるから」


舞もいつしか会話に加わっていた。


外まで見送った後、戻った部屋には
二人の残り香がまだ心地よい余韻を醸していた。

そして、見た目の可憐さに反するような
少しハスキーな舞の話し声だけが

僕の耳から離れなかった。
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