僕とあの娘

みつ光男

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第04章. Girl(s) next door

【6月3日】

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 あの日のことは今でも鮮明に覚えている、
そう、それは忘れもしない6月3日のことだった、

やたらバタバタとした記憶だけが残っている
そんな日曜の午後…

その原因のひとつとなったのが亮二だった。
彼は突然やってきてこう言った。

「今からギター買いに行こうぜ!」

少し前に
「そのうちアコギ買いに行きたくて、ね」

僕がそんな話をしたから
亮二にも何か街中に行きたい、と言う
理由があったのだろう

突如、ギターを買いに行く事になった。

あの頃はまだ車もなかったから確か電車に乗って
市内のショッピングモールの中にある
楽器店まで行った。

そこでちょっと安めのアコースティックギターを買って
電車で帰る途中

目の前でつり革を持って立っていた
ミュージシャンらしき人に声をかけられた。

「よかったら一緒に音楽やりませんか」
みたいなノリで。

でも、その人は見るからに
フォーク系の人だったので丁重にお断りした。

実はこれから亮二と二人で
お互いのバンド活動とは別に

「機械と生音」をミックスしたロック系の曲を
作っていこうって話をしてたところだった。

この日珍しく亮二は早く帰宅した。

普段ならこれから
夜中まで音楽談義とかすることも多いのに
何故だかわからないけど彼は夜の7時過ぎに帰ったので

僕も隣の部屋のシンちゃんこと
濱辺進一に声をかけて夕食をすませた。

その後、いつもなら
シンちゃんの部屋でダラダラ過ごすんだけど

今日はギターって“おもちゃ”があったから
早々と自分の部屋に戻り、

煙草をくわえたままギターを掻き鳴らしていた。

当時、僕の部屋だけが管理人さんの手違いで
屋外アンテナが機能していなかったため

テレビの受信電波環境が酷かった。

仕方なく唯一まともに映っていたチャンネルでは
限りなく面白くないドキュメンタリー番組が
放送されていた。

まだ部屋にビデオもなかった頃なので
リアルタイムで観れる番組だけを
視聴せざるを得なかったのだ。


夜の9時前だっただろうか…

遠くの方から足音が聞こえて
僕の部屋で止まってコンコンとノックする。

「あ、リョウジのやつ、忘れ物でもしてまた帰ってきたな」

そう思いながら

「ほーい」と

気の抜けた返事をして開いたドアの方を見た時
目の前に立っていたのは…


有香だった。

僕はかなりだらしない体勢で
ギターを弾いてたもんだから

その姿を見た有香は大笑いしていた。

「すごい体勢でギター弾くんだね」

別に好き好んで
でこの体勢で弾いてるんではないんだけど

自然と体が座椅子からずり落ちた状態で
ギターを抱えている姿が

よほどおかしかったのか
有香は腹を抱えて笑っていた。

「今日はね、この娘も一緒なんだよ」

有香の後ろにいたのは


舞・・・

舞と、実に9ヶ月ぶりの再会を果たした。
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