僕とあの娘

みつ光男

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第02章. 友達のまま

【ほんとの理由】

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 ライブのチケットは下宿の先輩は全員
半ばお情けで購入してくれた。

あとは同期のやまちゃんやシンちゃん始め
クラスの連中が何枚か買ってくれたので
ある程度売りさばけてはいたものの

何せ1枚600円のチケット30枚がノルマ
残りがまだ10枚以上あったため

それを有香に頼んでいた、と言うわけだ。

 ひとり暮らしの生活費に加え
まだバイトもしていなかった僕にとって

チケット10枚…
6,000円以上の自腹はなかなかの負担となる。

数日前に状況を聞くと
「学校で全部売れると思うから!」と
有香が軽く言ってくれたので

すっかり安心して全部預けていたのだ。

ところが有香が売ってくれたのは4枚
もちろん有香自身の分も含めて。

いや、それでも十分ありがたい
そもそも他力本願の僕がダメなだけだ。

あとは美波の分を1枚残してはいたが
この調子だと学園祭までに会えるかどうかすら
微妙な感じだし

それでも残りのチケット枚数は5枚
他のバンドメンバーと比べると
かなり完売に近い状態ではあった。

他のメンバーたちは自分のクラスメイト以外に
ほとんど交流もなかったから売れてなかった。

そして有香から頼まれたチケットを
買ってくれた中の一人に


舞がいたことを今日知ることになる。


舞と有香、二人は看護学校では同じクラスで
仲良しグループの一員だった。

 そして僕はこの日、舞を含めた数人の女子たちと
初対面を果たした。

まだお互いのことなど何も知らない
ましてや気になる存在でもない

そして特に会話ややり取りがあったわけでもない

今後起きる出来事など全く知る由もない
僕と舞との初遭遇だった。

そしてこの場は何故か有香の独壇場だった。

僕もそれなりに受け答えはしていたが
有香は友達と一緒だからかテンションも高めで

正に立て板に水

レンタル屋の駐車場で繰り広げられる
僕と有香の会話は次第にヒートアップしていった。

有香の友達は皆、呆気に取られている。

そろそろ学園祭のライブだね
そんな話題になった時、有香が言った。

「ムラコウ、ライブでは髪立てたりするの?」

「まあ久々のライブだからね、立ててみようかな、とは思ってるんだけど。あれ、結構めんどくさくて」

「『例のスプレー』で立てるんだよね」


 長めの髪を立てるためのハードなスプレーは
ある特定のスーパーで販売されているため

そのお店の名前が通称として使われている。

「よく知ってるな、あれ臭くてさぁ、部屋で使うと気分悪くなって…一応持ってるけど」

「じゃあ、ライブでは髪立ててよ!せっかくチケットも売ってあげたんだし。立ててなかったら許さないから!」

一気にまくし立てる有香

なぜそこまで?
彼女がムキになる理由がわからない。

そんな事で友達を失くすわけにもいかない、
疑問に思いながらも有香をなだめるように

「わかったわかった、じゃ学園祭は髪立てて
ライブ出るから」

「絶対立てるんだよ!」

ひどく髪の事にこだわるなと思いながらも

「わかったって」

僕もそんな意地になるほどの事でもない

実際、髪は立てようかどうしようか
悩んでたところだったので

有香の一言がちょどいいきっかけにもなり
この時僕はライブで髪の毛を立てる

をした。

何故そこまで決心がいるのかは
「例のスプレー」を使った人にしか

解らないだろう・・・
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