僕とあの娘

みつ光男

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第02章. 友達のまま

【オープンマインド】

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 もう外は真っ暗だった、車のエンジンをかけると
ふっ、と美波の横顔がおぼろに浮かび上がる

暗さゆえか速度計のランプに照らし出された
美波の表情が随分大人っぽく映った。

月明かりを真上に見ながら下宿の駐車場を後にすると
美波の運転する車は広い国道へと合流した。

歩いていける近場だと
また渋谷さんに遭遇してもいけないから、と

美波が選んだのは車で30分ほど走った
海辺のレストランだった。

「お店、色々知ってるんだ?」

「まあね、行くのは女友達ばっかりだけど」

こんなに可愛いビジュアルの美波なのに
何で彼女はいつも有香とばかり行動してるのだろう?

「彼氏とかは…作らないの?」

「女子校だったからあんま出会いもなくてさ、
1回付き合ったことあるけど、もう束縛がひどくって…!」

「あ、それはめんどくさいタイプだな?」

「そうそう、だからもう彼氏とかいなくていいや、ってなるわけ」

「なるほどね」

「あと…さ」

「何?」

しばしの沈黙の後、美波が微笑みながら口にした言葉


「すぐに…ヤリたがる!」

「ぶっ!そっち系、あんま好きじゃないんだ?」

「そんなに、ねぇ、だって…疲れるじゃない?」

まさかそんな話題になろうとは…
僕はなけなしの知識で切り返すのがやっとだった。

「ま、その時はいいんだろうけどね」

「そっかな?男って何でそうなんだろうね?」

「ま、仕方ないよ」

「ムラコウもそうなの?」

「さぁ、どうだろう?」

「どっちだぁ?」

「この後試してみる?」

「もう…やだ!」

美波は非常に気楽なスタンスで関わる事ができるタイプで
多少の下ネタも笑顔で切り返してくれる。

だからと言って実際"その気"になるか?と言えば
それがそうでもない。

どちらかと言うと異性と言うよりは
同性の仲の良い友達感覚だ。

 美波に連れて来られたお店…

そこは窓越しに夜の海が見える
思いの外お洒落なレストランで

そのせいか時折、まるで僕たち二人が
本当のカップルであるかのような

何とも言えない雰囲気を体感した。

確かにこの日、美波との距離は随分縮まったものの
それ以上の関係に発展する雰囲気ではなく

どちらかと言えば友情を深めた感が強かった。


 元々、美波とは音楽の話がしたかったのだが
空腹が満たされた帰りの車内では
そんな話もたくさん出来て

僕はすっかり満足していた。

話が盛り上がったせいかテンションの上がった美波は

「ねえ、帰りにもう1回部屋に寄っていい?」

「いいよ、どうしたの?」

「CD、見せてほしいんだ!」

「うん、聴きたいのあったら貸してあげるよ」

「え?本当に?やったー!」


二人を乗せた車が再び下宿に戻った。

「じゃ行こうよ!」

「ちょっと待った!渋谷さんが帰ってるかも…」

「あ、すっかり忘れてた」

「ちょっと確認してくるから車で待ってて」

「うん」

玄関のドアを開けると
そこに渋谷さんの履き物はなかった。

「うん、大丈夫みたい、来ていいよ」

「わかった」

二人でこっそり玄関を開けて
部屋に入ろうとした、その時だった。

僕の向かいの部屋のドアが開いた。


出てきたのは…



悟志だった。

「やぁ、やまちゃん!」

「あ、コウイチ…」

美波は悟志に向かって軽く会釈した。

「やっぱり運がないようで…」

「全くな…」

僕の後ろにいた美波を見た悟志は自嘲気味にそう言った。

「それじゃ」

「はいよ、ごゆっくり」

こうして僕たちは数時間ぶりに
渋谷さんと"G"のおかげで大騒ぎした
この部屋に戻ってきた。
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