僕とあの娘

みつ光男

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第01章. 突然

【Deep Blueの彼女】

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 最初は眠くてあまり話せなかったけど
しばらくすると眠気も覚めてきて色々話した。

まず有香が食いついたのは僕の髪色だった。

「ムラコウくんてさ、その髪の色…派手!」

「あ、びっくりした?」

「それって…やっぱりオキシドールとかで?」

「ぶぶー!そんな原始的なやり方では落ちないって高2で悟った」

「美容室だ!」

「残念、そんなにお金持ってないよ」

「えー?じゃ、どうやって染めたの?」

「市販のブリーチだよ」

「え!そんなに色、落ちるんだ?」

「30分放置したらこれくらいに…この後染める用のブリーチだから」

「あ、ここから赤や紫に染め直したりするんだ?」

「そうそう」

車内はしばらく髪色の話題で持ちきりになった。

「渋谷さんから聞いたよ、バンドやってるんだよね?新歓コンサート見に行ったんだよ」

「俺、出てた…んだけどな」

「へぇ?そうなの?」

「ライブ見てた?本当に?歌ってたんだけどなぁ」

「忘れちゃったー、美波ほど音楽に興味ないし、へぇ…ボーカルなんだ?」

「カッコいい人いないかな、とか目当てだったんじゃないの?」

「そうそう!」

「そうなんかい!」

 僕の得意分野である音楽の話に関しては
どうも美波の方が"できる"ようだ。

高校を卒業してすぐに髪の色を変えた。
音楽を、バンドをするには、まず見た目から

ならば髪の色を変えようと、言う
短絡的な発想からだった。

今は白に近い金髪、と言った感じだが長髪ではない。

バンドマン = 長髪…なんてありきたり、
そんな考えもあった。

現に僕の好きなあるバンドのボーカルは
金髪でありながら長髪ではなかった。

 こんな外見だからクラスでは
同期からあまり話しかけられる機会がない。

見た目で近づきがたい雰囲気があるのだろうか?

だが有香は違った、
全く臆することなく普通に話しかけてくる

そんな事もあってか、すぐに打ち解けることができた。

「お、調子出てきたね?」

有香にもそう言われるくらい
起き抜けにしては僕はいつも以上に饒舌だった、

いつの間にか眠気もすっかり吹き飛んでいた。

「学校が隣同士でこんな近くなのにこれまで知り合う機会なかったよね?」

「不思議だよね、通り道にあるのに」

「これまでにどこかですれ違ってたかも」

「かもね!人の縁ってそんなもんだよね」

 大学の真横に隣接する看護学校…
そんなにも近くであったにも関わらず

この二つの学校はこれまで
全くと言っていいほど交流がなかった。

有香の通う看護学校は
僕が通う大学の校門を出るとすぐ隣にある。

とは言え、住む世界が違うからか
これまで僕たちの間には接点がなかった。

あの頃、看護学校の生徒と仲良くなるのは
至難の技だと先輩から聞いていた。

それ故うちの大学の生徒なら誰しも知っている
ブレザーもスカートも同系色な

"目が覚めるような青色"の
看護学校の制服は近くて遠い存在だった。

正直、僕も入学当初はあの上下ほぼ原色の真っ青な制服を
羨望の眼差しで遠巻きに眺めていたのだが…


 それがどうだ、こうしてこの日から
僕と看護学校との間に

小さなコネクションが生まれるとは…
奇跡に近い出来事と言っても過言ではない。

有香が言うにはうちの大学は
真面目でお堅いイメージがあるらしく

向こうも少し敬遠してたようだったが

薮田さんを始めとするここの下宿の住人と
関わり始めてから認識が変わったようだ。

歴代の僕たちの下宿住人が看護学校との縁を作る
パイオニアになっていたらしい。

実際、この後も我が校の学生と看護学生が関わったと
言う話をあまり聞いたことはない。

別にいがみ合っていたわけではない、

ただただうちの学生は真面目すぎて
何につけて面白味がなかったんだそうだ。
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