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第01章. 突然
【古風なる下宿】
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ここで僕の暮らす下宿について
簡単に説明をしておきたい。
「諏訪荘」なるこの下宿は
大学から歩いて5分ほどの場所にある。
下宿の真裏にはCDレンタル店があり
建物の真横は地下駐車場でその階上がカラオケボックス
近くにはスーパーと海が近いわけでもないのに
何故だか「釣り吉」なる名前の釣具屋がある。
立地条件や利便性については申し分ないのだが
この諏訪荘なる下宿は今の時代、
このような古風な建物があるだろうか?と、言うくらい
昭和の匂いを残した2階建ての小さな共同住宅。
個別部屋だが先ほども述べた通り四畳半一間
その中には当然ながら何もない、まるで伽藍堂。
僕は簡易型のパイプベッドを購入していたため
部屋の半分はベッドで埋め尽くされた。
そして空調の無いこの部屋で
ひと夏を過ごすのかと思うと気の遠くなる思いだった。
洗面所、浴室、キッチンは共同で
いつでも勝手に使用して問題ない。
洗濯機は備え付けのものがあり、
冷蔵庫は下宿の住人が共同購入して廊下に据え置かれ
寛大な先輩たちの恩恵で
僕たち新入生も無償で使用させてもらっている。
部屋は1階に3部屋、廊下の突き当たりにある
一番奥の大部屋には齢70は軽く過ぎているであろう
管理人のスワさんが暮らしている。
僕の部屋は2階の階段を昇ってすぐ左側、
向かいの部屋は空室で
その隣には2年の薮田さん、
その隣室には僕と同じ新入生の山岡悟史がいた。
僕の隣には日下さんと言う
3年生の先輩がいたが
入学の時に挨拶して以来
顔を会わすことがないくらい存在感は薄かった。
そしてその隣にはこれまた入学して以降
ほとんど会話のない3年生の植田さん、
そして黒川さんが暮らしていたが
お二人とも挨拶程度しかコミュニケーションは
なかった。
共同生活とは言え、それぞれが
自分の生活スタイルを確立していて
みんなでわいわい騒ぐ、なんてことはなかった、
のだが・・・
2階の一番奥の部屋、4年の渋谷さんだけは違った。
入学当初から僕を含め三人いる
新入生の部屋へと頻繁に顔を出し、
新生活に慣れない僕たちを和ませてくれた。
そして1階にもう1人、同じ新入生の濱辺進一
彼の部屋を出ると隣に昔懐かしの赤電話があり
こちらは公衆電話同様に10円玉を入れて通話するタイプ。
電話の隣の部屋の住人は必然的に電話番に任命され
スワさんが不在時は彼が電話を取り継いでいた。
一見、何不自由のない空間に思われがちだが
この下宿における最大の難関
それは掃除嫌いなスワさんの影響だろうか?
あまりにも多種多様な生き物の巣窟と化していた。
僕が下見で初めてこの部屋に入った時、
目の前をカサコソと黒い虫が駆け抜けていった。
確かにその時イヤな予感はしたのだが
ここで気づくべきだった。
1匹いたら30匹、なんてレベルではなかった、
聞けばこれは新たに入居した人たちが
皆通る道なのだとか
みんなそれぞれに様々なアイテムで
そんな虫たちを駆除していくことになった。
更には年がら年中、部屋を飛び回る蚊や
およそ外でしか見ることのない生物、
ゲジゲジやらヤモリやらその他諸々…
一体何処から入ってくるんだ?
こちらの侵入者たちについては
また、機会があれば述べていきたいと思う。
簡単に説明をしておきたい。
「諏訪荘」なるこの下宿は
大学から歩いて5分ほどの場所にある。
下宿の真裏にはCDレンタル店があり
建物の真横は地下駐車場でその階上がカラオケボックス
近くにはスーパーと海が近いわけでもないのに
何故だか「釣り吉」なる名前の釣具屋がある。
立地条件や利便性については申し分ないのだが
この諏訪荘なる下宿は今の時代、
このような古風な建物があるだろうか?と、言うくらい
昭和の匂いを残した2階建ての小さな共同住宅。
個別部屋だが先ほども述べた通り四畳半一間
その中には当然ながら何もない、まるで伽藍堂。
僕は簡易型のパイプベッドを購入していたため
部屋の半分はベッドで埋め尽くされた。
そして空調の無いこの部屋で
ひと夏を過ごすのかと思うと気の遠くなる思いだった。
洗面所、浴室、キッチンは共同で
いつでも勝手に使用して問題ない。
洗濯機は備え付けのものがあり、
冷蔵庫は下宿の住人が共同購入して廊下に据え置かれ
寛大な先輩たちの恩恵で
僕たち新入生も無償で使用させてもらっている。
部屋は1階に3部屋、廊下の突き当たりにある
一番奥の大部屋には齢70は軽く過ぎているであろう
管理人のスワさんが暮らしている。
僕の部屋は2階の階段を昇ってすぐ左側、
向かいの部屋は空室で
その隣には2年の薮田さん、
その隣室には僕と同じ新入生の山岡悟史がいた。
僕の隣には日下さんと言う
3年生の先輩がいたが
入学の時に挨拶して以来
顔を会わすことがないくらい存在感は薄かった。
そしてその隣にはこれまた入学して以降
ほとんど会話のない3年生の植田さん、
そして黒川さんが暮らしていたが
お二人とも挨拶程度しかコミュニケーションは
なかった。
共同生活とは言え、それぞれが
自分の生活スタイルを確立していて
みんなでわいわい騒ぐ、なんてことはなかった、
のだが・・・
2階の一番奥の部屋、4年の渋谷さんだけは違った。
入学当初から僕を含め三人いる
新入生の部屋へと頻繁に顔を出し、
新生活に慣れない僕たちを和ませてくれた。
そして1階にもう1人、同じ新入生の濱辺進一
彼の部屋を出ると隣に昔懐かしの赤電話があり
こちらは公衆電話同様に10円玉を入れて通話するタイプ。
電話の隣の部屋の住人は必然的に電話番に任命され
スワさんが不在時は彼が電話を取り継いでいた。
一見、何不自由のない空間に思われがちだが
この下宿における最大の難関
それは掃除嫌いなスワさんの影響だろうか?
あまりにも多種多様な生き物の巣窟と化していた。
僕が下見で初めてこの部屋に入った時、
目の前をカサコソと黒い虫が駆け抜けていった。
確かにその時イヤな予感はしたのだが
ここで気づくべきだった。
1匹いたら30匹、なんてレベルではなかった、
聞けばこれは新たに入居した人たちが
皆通る道なのだとか
みんなそれぞれに様々なアイテムで
そんな虫たちを駆除していくことになった。
更には年がら年中、部屋を飛び回る蚊や
およそ外でしか見ることのない生物、
ゲジゲジやらヤモリやらその他諸々…
一体何処から入ってくるんだ?
こちらの侵入者たちについては
また、機会があれば述べていきたいと思う。
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