僕とあの娘

みつ光男

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第01章. 突然

【舞】

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 これは今を遡ること数10年前、
僕、中村鴻一なかむら こういちが山野田大学在学中に体験した

平凡でどこにでもあるようなそんなある出会いの物語。


 今でもテレビや雑誌などで
"まい"と言う名前を耳にすると胸が少し痛くなる。

当時体感したもどかしい気持ちややり場のない切なさで
心が締めつけられる思いにかられてしまう、

そんなまいは僕の彼女…だった。



 あの頃、僕は大学のすぐ傍にある
四畳半一間の小さな下宿で共同生活をしていた。

おそらく当時の友達はおろか、
同じ下宿の住人や当時バンドのメンバーの一人で
下宿の「半住人」でもあった榊原亮二さかきばら りょうじですら

実際に舞の姿を見た事はないはずだ。

名前は聞いたことあるけどその姿は知らず…
まるで謎の人物って感じ。

 別に彼女の存在を内緒にして
隠すつもりだったわけではない。

むしろ何でも話したがる性格の僕からすれば
舞の存在を敢えて誰にも話さなかったのは
珍しい事だった。

でも僕の大学時代の思い出を語る時に
彼女の存在は欠かせないし

今更ながらこの場を借りて
北浜きたはままいの事を話しておこうと思う。

 舞の話をする前にまず沖野おきの有香ゆうかとの
出会いから話さないと話が前を向いて進まない。

有香との出会いは大学1年の夏、

彼女は僕の通っていた大学の
すぐ隣にある看護学校の生徒で

同じ下宿の2年生の先輩、
薮下やぶしたさんと知り合いだったのだが

有香がこの下宿へ足を運んでいる間に

いつの間にか入学当初からお世話になっていた
4年生の渋谷しぶたにさんと友達になっていて

その流れで僕と知り合いになったと言うわけだ。

 あれはまだ大学に入学して数ヶ月経った頃の
初夏の出来事

有香に初めて会ったのは、亮二に誘われて
前日の夜から男女5人ずつで出かけた
「10人ドライブ」から帰った日の昼過ぎだった。

僕はこの「10人ドライブ」に関しては
全くと言っていいほどがなく

夜を徹してドライブした疲れで
当然ながら昼を過ぎても死んだように眠っていた。

 ちなみにこの場合の"収穫"とは
特定の女の子と仲良くなる事、

このドライブがきっかけで亮二は
新谷和花にいや のどかと付き合い始めた。

 前日の夜から10人で2台の車に分乗して
さほど盛り上がるわけでもなく

食事、カラオケ、ドライブ、と言う
僕にとって実につまらない一夜を過ごし

部屋に戻ったのが朝の7時過ぎだったから

有香との初対面となったのは
それから泥のように眠った数時間後の事だった。
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