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Ⅵ. 新種累々
【対等なる関係】
しおりを挟むそれでいてあの残虐性を露にして
今回のような大量殺戮も涼しい顔でする…
全くもって掴み所がない、
ここで彼女と共にいる1人の大柄な男が口を挟んだ。
「腐鬼様…そろそろ帰りますぞ」
腐鬼はそんな言葉には耳も貸さず
冷めた表情で一瞥すると
「あ、それとお兄さん…ひとつ約束して」
「何を?」
「次出会って戦った時…私に負けたら…」
「何やねんな?」
「内臓ぐちゃぐちゃにかき混ぜて身体中にぶっかけて食べちゃってもいいかしら?」
「腐鬼さま…」
再び男が割り込んでくる。
「な…内臓ぐちゃぐちゃ…に?」
ー や、やっぱりこの女、どうかしてる
いくら遺伝子を組み替えられたパペッツと言え
人間の本質は変わらないだろうに…
ここまでグロい表現で条件つきつけてくるか?
「て…か、負けて動けなくなったら最初からそうするつもりやろ?」
「あら…お見通しなの…ね?」
「その代わり…俺に負けたら」
「ふふ、なぁに?記念に私の腕の一本でも持って帰るぅ?ふふふ」
「食わせろ…!」
その言葉を聞いた腐鬼は再び不敵に笑った。
「あら…私を食べるつもり?」
「違うわ!焼き肉好きなだけ食わせろ!食べ放題でええから」
ガクっ!
後ろでサヤカが思い切りコケてリアクションした
このような非常事態でも
関西人の性は捨て切れないらしい。
ー 兄さん、やっぱり只者じゃない
あの腐鬼に全く臆することなく
対等に話している、
フツーならあのおぞましいオーラに圧倒されて
目を見ることすら出来ないのに…
さっきも何か"気"のような威圧感で
腐鬼の動きを一瞬止めたように見えた
そして腐鬼もまた兄さんを認めるような
そんな態度だし…
やっぱり兄さんは…選ばれし者、なの?
「あら…私は人間の肉の方が好きなんだけど」
「俺が焼き肉食べたい言うてんねん!」
「ふふ…」
その時、僕は確かに見た
それまで離れた場所で話していた腐鬼の首が
急に体から抜け出して僕の顔の近くまで飛んでくるのを…
いや、首が飛んできたのではなかった、
まるで轆轤首のように伸ばして僕の耳元まで来たのだ。
腐鬼はその伸びた首を幾重も僕の体に絡ませると
耳に息が触れるほどの距離まで近づき
「次会うのが楽しみ…ね」
そう一言だけ僕に告げ
その場から一陣の風となって姿を消した。
「はぁぁ…」
緊迫した状況に耐えきれなくなった僕は
再びその場に腰から崩れ落ちた。
「兄さん!」
「おぉ…命拾いした」
そしてサヤカの声でようやく我に返った。
「キャプテン、生存者を探しましょう!で、急いで本部に連絡を!」
「う、うん、わかった」
ほどなく本部からの応援部隊が到着し
懸命の救助が行われたが
残念ながらこの旅館に張り込んでいた隊員は全滅だった。
僕とサヤカはヘリコプターに乗せられ
近くの病院に搬送されることになった。
「リーダーに連絡しないと…」
「あ、エミカにはこれから私が…」
その時、僕は確かに聞いた
「あかん!このままでは…やられてまう」
その声はどこからともなく聞こえる
リーダー、エミカの悲痛な叫び声だった。
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