上 下
69 / 71
Ⅶ. 有象無象の魑魅魍魎

【2つの能力】

しおりを挟む
「ちっ!しくじったか…しかしどうやって残りの2体を…倒した?」

エミカが耳をすますと
やはりその声は地底から聞こえてくる。

ー 何やろ?やっぱりパペッツ?
それにしてはゾンビを使って攻撃してくるなんて
この人が持ってるのはそう言う能力…なんやろか?

「ならば我が世界に引き入れてくれよう…
ムーヴィン・アウトの能力でな」

その瞬間、大きな地響きがして
地面に大きな亀裂が入った。

ー あかん…引き込まれる!

その時、再び2本の手が
地割れのすき間から伸びて

エミカを後方へと押しやったおかげで
ひび割れた地面への落下を防いでくれた。

「あ、あいたたた…また、あの手や…ん?」

ー あのリストバンド…もしかして?

「くそっ!誰ださっきから…邪魔ばかり」

そんな声と共に裂け目からせり上がってきた
一人の男、

全身黒ずくめでボサボサの髪、
顎には無精ひげ、メイクをしているのか

目の周囲も真っ黒の不気味な様相。

「うわっ!気持ち悪っ!」

「貴様!"気持ち悪い"とは何事だ!初対面なのに失礼なヤツだな」

「あ、もうこっち来んといてって!」

「ならば…もう少し…オレ様は人が嫌がることが大好きでな」

不気味な男が1メートル四方にまで
近づいてきたのを確信したエミカは

「あぁあ…残念、終わったな…あんた」

「何のことだ?」

「もう私の結界の射程距離に入ってしもてるやん」

「な、何だと!?」

「シルバー…ペンタグラム!」

その瞬間、男の周りを取り囲むように
地面に逆さまになった星形が現れ

そこから白煙が立ち上る。

「な…なぬ!貴様の能力…ひとつではないのか?」

エミカは相手を挑発することによって
自分が張った結界へと誘導していたのだった。

「あんたらみたいな"まがい物"の能力と一緒にせんといてな」

― 私ら"Kの戦士"はな、
生まれもってのインテレクチュアル知的なものやねん
遺伝子配合で作られたその場しのぎの能力とは
訳が違うねんで

「ならば…ムーヴィン・アウトで時空の裂け目へと落とし込んで…何っ!」

「おおきにな気色悪いお兄さん、アナタのその能力のおかげでキレイに結界が張れたわー」

男の能力によって作られた地面のひび割れに
引っ掛けて固定する要領で

エミカは敵が気づかない間に敵の前後左右全てに
銀色の強力な糸のような結界を張り巡らせた

そのためもう彼は身動きひとつ取れない。

「さて…これで勝負あったやんな…名前くらいは聞いといたろか?」

「我が名はO-Jaオージャ、ゾンビを操る者なり…これで勝った気になったか?LBKの戦士よ」

「はいはい、言い残すことはそれだけ?」

「出でよ!混合種ハイブリッド!」

再び地面がひび割れそこから無数の手が伸びる

「きゃっ!…とでも言うと思った?」

「何だと?」

「私のヘルファイアをこの結界の糸に引火させたら…」

「何?もう"回復"したのか?」

「や・か・ら…一緒にせんといて言うたやろ?」

「う、うぎゃー!」

 一瞬の出来事だった、全てを燃やし尽くす
エミカの能力"ヘルファイア・スナイプ"によって

O-jaなるパペットもゾンビたちも
そして厩舎の一角も真っ黒な灰と化した。

「申し訳ないわぁ、せやからこう言うとこで使いたくなかってんな」

しかし…こんな一般人がいる施設にまで
刺客を送り込んでくるやなんて

レーテルはそろそろ手段を選ばんように
なってきたな…

早速サヤカさんに連絡せなあかん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

適者生存 ~ゾンビ蔓延る世界で~

7 HIRO 7
ホラー
 ゾンビ病の蔓延により生きる屍が溢れ返った街で、必死に生き抜く主人公たち。同じ環境下にある者達と、時には対立し、時には手を取り合って生存への道を模索していく。極限状態の中、果たして主人公は この世界で生きるに相応しい〝適者〟となれるのだろうか――

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ルール

新菜いに/丹㑚仁戻
ホラー
放課後の恒例となった、友達同士でする怪談話。 その日聞いた怪談は、実は高校の近所が舞台となっていた。 主人公の亜美は怖がりだったが、周りの好奇心に押されその場所へと向かうことに。 その怪談は何を伝えようとしていたのか――その意味を知ったときには、もう遅い。 □第6回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました□ ※章ごとに登場人物や時代が変わる連作短編のような構成です(第一章と最後の二章は同じ登場人物)。 ※結構グロいです。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。 ©2022 新菜いに

煩い人

星来香文子
ホラー
陽光学園高学校は、新校舎建設中の間、夜間学校・月光学園の校舎を昼の間借りることになった。 「夜七時以降、陽光学園の生徒は校舎にいてはいけない」という校則があるのにも関わらず、ある一人の女子生徒が忘れ物を取りに行ってしまう。 彼女はそこで、肌も髪も真っ白で、美しい人を見た。 それから彼女は何度も狂ったように夜の学校に出入りするようになり、いつの間にか姿を消したという。 彼女の親友だった美波は、真相を探るため一人、夜間学校に潜入するのだが…… (全7話) ※タイトルは「わずらいびと」と読みます ※カクヨムでも掲載しています

怖いお話。短編集

赤羽こうじ
ホラー
 今まで投稿した、ホラー系のお話をまとめてみました。  初めて投稿したホラー『遠き日のかくれんぼ』や、サイコ的な『初めての男』等、色々な『怖い』の短編集です。  その他、『動画投稿』『神社』(仮)等も順次投稿していきます。  全て一万字前後から二万字前後で完結する短編となります。 ※2023年11月末にて遠き日のかくれんぼは非公開とさせて頂き、同年12月より『あの日のかくれんぼ』としてリメイク作品として公開させて頂きます。

禁踏区

nami
ホラー
月隠村を取り囲む山には絶対に足を踏み入れてはいけない場所があるらしい。 そこには巨大な屋敷があり、そこに入ると決して生きて帰ることはできないという…… 隠された道の先に聳える巨大な廃屋。 そこで様々な怪異に遭遇する凛達。 しかし、本当の恐怖は廃屋から脱出した後に待ち受けていた── 都市伝説と呪いの田舎ホラー

バベルの塔の上で

三石成
ホラー
 一条大和は、『あらゆる言語が母国語である日本語として聞こえ、あらゆる言語を日本語として話せる』という特殊能力を持っていた。その能力を活かし、オーストラリアで通訳として働いていた大和の元に、旧い友人から助けを求めるメールが届く。  友人の名は真澄。幼少期に大和と真澄が暮らした村はダムの底に沈んでしまったが、いまだにその近くの集落に住む彼の元に、何語かもわからない言語を話す、長い白髪を持つ謎の男が現れたのだという。  その謎の男とも、自分ならば話せるだろうという確信を持った大和は、真澄の求めに応じて、日本へと帰国する——。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...