夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅵ. 新種累々

【狂鬼乱憮】

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 僕は旅館へ向かう途中サヤカに幾つかの質問をした。

「ところでキャプテン…」

「どしたん?」

「そのパペッツってのはゾンビと同じように人も食べるってこと?」

「そうやで、むしろ主食やな」

「リリカさんを食べた…人間の敵…か、そんなん作ってどうするんやろ?」

「さあ?世界征服でもするつもりやろか?」

ほどなく二人は旅館に到着した。

「キャプテン!着きました、例の部屋に案内します!」

「うん…頼む…わ…え?何これ?」

 旅館に足を踏み入れた瞬間、僕たちは愕然とした。

そこはまるで地獄だった…

床一面に敷き詰められた
ヘドロのように真っ黒な半分固形状の液体。

吐き気を催すような悪臭の中、
海面に浮かぶ浮標のようにプカプカと浮かんでいるのは

紛れもなく無数の人間の頭部だ。

「Raze!Razeはどこにいてるんや!」

その時、真っ黒な液体に満たされた床から
一本の腕が伸びた。

「キャプテン…に、逃げてください」

「Raze!どないしたんや!あんたがいてこんなことになるやなんて!」

「ここには、ふ…ふ…がい…ます、ゲ、ゲホっ!」

「な、何やて!」

Razeはその言葉を最後に僕たちの前で息を引き取った。

「兄さん!逃げて!私と一緒に!本部に連絡入れるから救助を待と!」

サヤカの取り乱す様を見てただ事ではないと
僕は確信した。

現場の惨状を目の当たりして
腐鬼なる存在への畏怖の念が増していった。

 その頃、高崎荘の屋根の上では…
どろどろに溶けかけた人間の頭部を手にして
微笑む腐鬼の姿が。

「やっぱりお腹すかせて下界に来るとダメね…」

そう言うと頭からバリバリと音を立てて
喰いちぎる。

「ありったけ食べちゃうもんね…」

そんな腐鬼を隣にいる一人の男が
溜め息をつきながら諫める。

「腐鬼様、このような勝手なことをされては私が総統にお叱りを受けるではありませんか!」

「お黙り!トゥヨ…もうあんなカビ臭い塔の番人なんて退屈で退屈でやってられないっての」

「しかしですね…」

「あ!あそこにいるのって…」

「またそうやってごまかそうとする!」

眼下にサヤカとK-Tの姿を確認した腐鬼は興味深そうに

「あれ、サヤカじゃない?またちょろちょろ蝿みたいに飛び回ってるのねぇ?」

「おや、のサヤカ様ですか?それはまた珍客、腐鬼様…どうなさいます?」

「そうねぇ、ちょっと挨拶しとこうかしら…」

そう言って彼女は3階の屋根からふわりと舞い降りた。

 一方その頃、サヤカとK-TはRazeの最期の言葉を聞いて
正にに旅館から外に出ようとしていた。

「キャプテン、どないしたの?そんなに震えて」

「腐…腐鬼がここに…何で?何で!!」


「何でここにいるのか…知りたい?」

「え…その声…?」

そんなサヤカの行く手を阻んだのは…

「サヤカちゃあん…腐鬼が何でここにいるのか…聞きたいんでしょ?それじゃ今から教えてあげるねぇ」

こうしてサヤカは腐鬼と
望まざる二度目の対面を果たすこととなった。
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