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Ⅵ. 新種累々
【口~くち~】
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シオンとの再会から半年が過ぎた、
心配していないと言えば嘘になるが
彼もきっと今頃、危険と隣り合わせで
極秘に任務を遂行していることだろう。
ところで、今の僕は
それなりに重責な職務を任される立場となり
ここ数日、あるひなびた旅館、高崎荘へと潜入捜査中だ。
所属ユニットのリーダー、エミカ隊員も召集された
「LBK特殊捜査機関 第3セクション」の
メンバーが現在ここに極秘に集結している、
はずなのだが…
今回エミカは別の案件に関わっているため
このミッションには後日加わる予定で
代わりに通信指令部のリリカ隊員が
リーダー補佐としてこのチームをまとめている。
実はここの旅館、宿泊客が滞在中に
行方不明になったり失踪しているため
その原因を探りつつ
一連のゾンビ事件との関わりを調査し
その謎を解き明かす、と言うのが最大の任務。
特に大宴会場での食事の最中に姿を消した
宿泊客が圧倒的に多いため
宴会場には僕を始め数人の捜査員が
正体を隠し観光客を装って監視を続けている。
それでも誰からも怪しまれないよう
夜になると何食わぬ顔で会食が始まる、
「この任務は楽っすね」
「だから私でも勤まるんですよ」
そう言って自虐的に笑うリリカ、
彼女たちの所属する指令部は
基本、通信でのやり取りがメインで
最前線に出ることがないため、他部署からも
働きやすいイメージを持たれているらしい。
「そ、そんらこと、らいんれすよぉ・・・」
ストレスが溜まっているせいかリリカは酒が進み
すっかりしどろもどろになっていた。
「これじゃ任務どころじゃないな…」
数日間、これと言った事件のない日々が続き
隊員たちは少し気の緩みが出始めている、
と言われてもおかしくないくらいに
平穏な時間が続いていた。
宴会の出し物が始まり、僕も呼ばれる
以前知人から"少しは似ている"と言われた
物真似を披露しようとステージに向かう途中で
「あ、K-Tさんちょっと…」
突然声をかけてきた男性に止められる、
彼も隊員の一人だった。
今日、初めて告白することになったが
僕も正式な隊員となってからは
コードネームが与えられ、
みんなからは"K-T"と呼ばれている。
しかしサヤカを始め
エミカや他の前から顔馴染みの隊員からは
相変わらず"兄さん"と呼ばれていた。
「あ、よかった、出し物は苦手で…」
すると男性は小声で僕にこう告げた。
「Razeさんが『全員を緊急収集してください』との事です」
「Razeさん?」
「第10セクションのサブリーダーですよ」
途中からこのミッションに加わった僕は
まだ参加メンバーを把握しきれていないが
"Razeさん"が実質この場を仕切る人らしい
彼が何か情報を掴んだのか?
"緊急対策会議"と記された部屋に行こうとしていると
向こうから一人の女性がやって来た。
見た事のない顔だったが彼女もまた
僕同様にこの会議室に召集されたのだろう、
何の疑いもなく部屋の扉を開けたその時
「た…助けて」
そこで見た光景は目を疑うものだった、
そこにいたのはリリカ…しかも上半身が
"ある場所"からはみ出した状態で。
ある場所・・・
それは人の口の中から。
まるで大蛇のような巨大な人の頭が
二つに割れて巨大な口になり、
リリカを足元から飲み込んでいるではないか。
「リリカさん!」
「あ…Kさん…助け…て」
僕が駆け寄った時、リリカは最期の一声と共に
巨大な口にズブズブと飲み込まれていった。
そして巨大な人の頭の形をした生き物は
僕に気づくと真っ白な肉の塊、
まるで大きなナメクジのような形状に変化して
襲いかかってきた。
心配していないと言えば嘘になるが
彼もきっと今頃、危険と隣り合わせで
極秘に任務を遂行していることだろう。
ところで、今の僕は
それなりに重責な職務を任される立場となり
ここ数日、あるひなびた旅館、高崎荘へと潜入捜査中だ。
所属ユニットのリーダー、エミカ隊員も召集された
「LBK特殊捜査機関 第3セクション」の
メンバーが現在ここに極秘に集結している、
はずなのだが…
今回エミカは別の案件に関わっているため
このミッションには後日加わる予定で
代わりに通信指令部のリリカ隊員が
リーダー補佐としてこのチームをまとめている。
実はここの旅館、宿泊客が滞在中に
行方不明になったり失踪しているため
その原因を探りつつ
一連のゾンビ事件との関わりを調査し
その謎を解き明かす、と言うのが最大の任務。
特に大宴会場での食事の最中に姿を消した
宿泊客が圧倒的に多いため
宴会場には僕を始め数人の捜査員が
正体を隠し観光客を装って監視を続けている。
それでも誰からも怪しまれないよう
夜になると何食わぬ顔で会食が始まる、
「この任務は楽っすね」
「だから私でも勤まるんですよ」
そう言って自虐的に笑うリリカ、
彼女たちの所属する指令部は
基本、通信でのやり取りがメインで
最前線に出ることがないため、他部署からも
働きやすいイメージを持たれているらしい。
「そ、そんらこと、らいんれすよぉ・・・」
ストレスが溜まっているせいかリリカは酒が進み
すっかりしどろもどろになっていた。
「これじゃ任務どころじゃないな…」
数日間、これと言った事件のない日々が続き
隊員たちは少し気の緩みが出始めている、
と言われてもおかしくないくらいに
平穏な時間が続いていた。
宴会の出し物が始まり、僕も呼ばれる
以前知人から"少しは似ている"と言われた
物真似を披露しようとステージに向かう途中で
「あ、K-Tさんちょっと…」
突然声をかけてきた男性に止められる、
彼も隊員の一人だった。
今日、初めて告白することになったが
僕も正式な隊員となってからは
コードネームが与えられ、
みんなからは"K-T"と呼ばれている。
しかしサヤカを始め
エミカや他の前から顔馴染みの隊員からは
相変わらず"兄さん"と呼ばれていた。
「あ、よかった、出し物は苦手で…」
すると男性は小声で僕にこう告げた。
「Razeさんが『全員を緊急収集してください』との事です」
「Razeさん?」
「第10セクションのサブリーダーですよ」
途中からこのミッションに加わった僕は
まだ参加メンバーを把握しきれていないが
"Razeさん"が実質この場を仕切る人らしい
彼が何か情報を掴んだのか?
"緊急対策会議"と記された部屋に行こうとしていると
向こうから一人の女性がやって来た。
見た事のない顔だったが彼女もまた
僕同様にこの会議室に召集されたのだろう、
何の疑いもなく部屋の扉を開けたその時
「た…助けて」
そこで見た光景は目を疑うものだった、
そこにいたのはリリカ…しかも上半身が
"ある場所"からはみ出した状態で。
ある場所・・・
それは人の口の中から。
まるで大蛇のような巨大な人の頭が
二つに割れて巨大な口になり、
リリカを足元から飲み込んでいるではないか。
「リリカさん!」
「あ…Kさん…助け…て」
僕が駆け寄った時、リリカは最期の一声と共に
巨大な口にズブズブと飲み込まれていった。
そして巨大な人の頭の形をした生き物は
僕に気づくと真っ白な肉の塊、
まるで大きなナメクジのような形状に変化して
襲いかかってきた。
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