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Ⅴ. Genocide

【絆】

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「…多分『』るね」

「…おそらく」

「次、父と息子が再会する時は…」

「うん」

「その絆が試されることになりそうやね」

「せやな、俺にとっても試練…やなぁ」

「がんばってな、!」

「また、そうやって茶化すし」

「何言うてんの?本心やんか」

「どうだか」

「あれ、信じてない?」

「そりゃ、ね」


次、シオンと再び会う日…それはいつになるのだろう?
今は袂を分かちそれぞれの任務を果たそうとしているが

いつかまたかつてのように共に過ごし

そして

共に仲間として戦う日が再び来るであろうことを
僕は信じてやまない。

あの日、お互いに生死の境をさまよいながら
こうして生き延びてきた。

まさかこんな形で再会するとは夢にも思っていなかったが
これからはではない、正に生きるか死ぬか

なのに僕たちの敵はまだ未知数で
そんな得体の知れない世界へ

シオンは自ら挑んでいった。

次、会う時僕は父として一人の男として
シオンと共に戦っていこう、そんな決意を新たにした。

「お!兄さん、俄然やる気出てきたね」

「そうやね、やっぱり家族ってスゴいな」

「家族かぁ、私もそんなの憧れ…て」

「え?リーダー・・・」

「あ、何でもない、気にせんといて」

先ほどの僕とシオンとのやり取りを見ていた
エミカから感じてはいたが

何とも寂しそうな、それでいて
羨望の眼差しで見られているような

不思議な感覚を体感していた。

いつも笑顔のエミカだが
きっと思い出したくないような
辛い過去があるのかも知れない。

僕たちは車を出発させ次の現場へ向かっていた。

「しかしシオンの能力、向こうが気付いたら喉から手が出るほど欲しいやろな」

「そうなんや?じゃ少年は尚更慎重に行動せんとね」

「もし気付かれたら、手段を選ばず…」

「それが、あの『レーテルメディカル社』の、と言うか、アナタのお母さんのやり方やからね」

「あのおかんが…悪の組織の、なぁ、でも思うんやけど」

「何?」
 
「どうしても独断で、とは思えんくて」

「心当たりでも?」

「裏で誰か一枚噛んでるような…」

「ふふ、それ思い出したら教えてな」

「あぁ、もう少し俺の記憶が戻れば」

「でも、そこまで回復してるやん。アナタのの底知れない凄さよ、ふふ」

「そもそも俺の能力って何なんやろ?」

「それが…私たちでもわかんないから調べてんのよね」


ところで、ジェノサイドの意味って…?
僕が聞こうとしたその時

「少年、早く言葉の意味調べてな、せやないとアナタも『殺人マシン』にされてしまうで…」


"Genocide" -ジェノサイド-


それは正にあの忌まわしき「ゾンビ大会」
さながらの事件のような出来事を意味する…



集団殺戮・・・



その最前線にこれから18歳の少年は
何も知らずに飛び込んでいくのであった。

「ところで兄さん、あの少年のって?」

「ふふふふ」

「な、何やのん、勿体ぶって!」

「最初は軽い予知能力やってんな」

「で?今はどない?」

「きっと成長してドエラいことになってるはず」

「え?何なん、ほんまに?」

「ま、アイツが帰ってきたらわかるって」

「もう、ちゃんと教えてや!上司の権限で聞く必要あり!」

「俺が言うた通りにあの才能を磨いてたら…」

「もう…ええわ、ひとりで酔いしれてるやん」


シオン、待ってるぞ
に磨きをかけて帰って来いよ、

記憶が戻ってきたのもその能力のおかげ、
なんだからな。

そうすれば…間違いなく無敵だ。
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