夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

文字の大きさ
上 下
57 / 71
Ⅴ. Genocide

【The Answer】

しおりを挟む
 ならば・・・?最善の回答は何だ?

「エミカさん、オレに考えがあるんですが」

「いいよ、遠慮なく…何もしないから」

「オレ、一旦ジェノサイドに戻ります」

「ほほぉ、それはまた何で?」

「潜入して何かの情報を持ち帰る…スパイとして」

「でもね…それは逆に危険やねんな、もしも
アナタがこちらの情報を洩らしたら…?」

「その時は…」

「なぁに?」

「まずは…」

「うん」

「父さんを殺してください、オレはこの人の息子だ、オレの責任は父さんの責任でもある、その後でオレを始末すればいいです」

「父さんは人質ってこと?さすが!出来た息子を持ったねぇ、父さん?」

「ドえらい立場に置かれたな、俺」

「なら、アナタの正体がバレて危なくなったら?」

「オレは死にません!母さんたちのこともまだ助けられてないし」

「え?それは…」

僕の言葉を遮るように
エミカはシオンに視線を送りながら

「よし!決まったね、それじゃ何か掴んだら
帰っておいで、その時にうちの組織のメンバーとして迎え入れるから、ふふ」

「すまんな、シオン。まさかこんな危険な任務を背負わせるとは」

「いや、大丈夫、何となく事情はわかった」

「ほんまか?」

「要はあのゾンビの組織とジェノサイドは
何か裏で繋がりがあるってことやんな」

「ふふ、飲み込みが早いこと」

「じゃ、オレはまた戻るから」

「あ、少年、ちょっと待って」

 突如悪戯っぽい表情を浮かべたエミカは
シオンを呼び止めると、こう告げた。

「ひとつ宿題」

「えっ?何ですか?」

「『ジェノサイド』の意味はわかる?」

「え…わからない」

「ふふ、ネットで調べてみたら?それもアナタの任務よ」

「あ、え…?」

「あ、あと、あそこに入る時に検査みたいなのは受けた?」

「確か、それは入門の時に、健康診断みたいなのを…あと血を摂られたり」

「わかった、ありがとう」

「それじゃ、行ってきます」

「健闘を祈る、シオン隊員!」

「は、はい!」

「ふふふ」

ようやくエミカからいつもの笑顔がこぼれた。

「行っちゃったねー」

「いや、あいつならまた戻ってくる」

「へぇ~、すごい自信」

「あの『能力』があれば…」


「ま、あんだけビビらせたら寝返ることもないでしょ」

「あれは言い過ぎやて、ほんまに殺される思てたよ」

「うん…でも、それくらいの覚悟は必要、兄さんもそうでしょ?」

「ま…そうやけど」

少しずつ遠ざかっていくシオンの背中を見送っていると
家から幼稚園に送り出す時の思い出が甦ってきて
思わず涙が出そうになったが

またエミカに笑われてはいけないとグッとこらえた。

するとエミカは急に真剣な表情になり
まじまじと僕を見つめた。

「え?泣いてないって、ほんまに!」

「あ、いやその話やなくて」

「何の話?」
 
「どう思う?」

「え?信用できん?俺の息子のことが」

「あ、そうじゃなくて…」

「そう言や、言うてたな…採血のこと」


「・・・と、なると」

しばしの沈黙の後、先に切り出したのはエミカだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

ちょっとハッとする話

狼少年
ホラー
人の心理をくすぐるちょっとだけハッとする話です。色々な所でちょこちょこ繋がってる所もありますが。基本何処から読んでも大丈夫です。2.3分で読める話ばかりです。ネタが浮かぶ限り更新したす。一話完結です。百話を目指し書いていきます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

都市伝説 短編集

春秋花壇
ホラー
都市伝説 深夜零時の路地裏で 誰かの影が囁いた 「聞こえるか、この街の秘密 夜にだけ開く扉の話を」 ネオンの海に沈む言葉 見えない手が地図を描く その先にある、無名の場所 地平線から漏れる青い光 ガードレールに佇む少女 彼女の笑顔は過去の夢 「帰れないよ」と唇が動き 風が答えをさらっていく 都市伝説、それは鏡 真実と嘘の境界線 求める者には近づき 信じる者を遠ざける ある者は言う、地下鉄の果て 終点に続く、無限の闇 ある者は聞く、廃墟の教会 鐘が鳴れば帰れぬ運命 けれども誰も確かめない 恐怖と興奮が交わる場所 都市が隠す、その深奥 謎こそが人を動かす鍵 そして今宵もまた一人 都市の声に耳を澄ませ 伝説を追い、影を探す 明日という希望を忘れながら 都市は眠らない、決して その心臓が鼓動を刻む 伝説は生き続ける 新たな話者を待ちながら

まばたき怪談

坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。

【全64話完結済】彼女ノ怪異談ハ不気味ナ野薔薇ヲ鳴カセルPrologue

野花マリオ
ホラー
石山県野薔薇市に住む彼女達は新たなホラーを広めようと仲間を増やしてそこで怪異談を語る。 前作から20年前の200X年の舞台となってます。 ※この作品はフィクションです。実在する人物、事件、団体、企業、名称などは一切関係ありません。 完結しました。 表紙イラストは生成AI

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

処理中です...