夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅴ. Genocide

【The Answer】

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 ならば・・・?最善の回答は何だ?

「エミカさん、オレに考えがあるんですが」

「いいよ、遠慮なく…何もしないから」

「オレ、一旦ジェノサイドに戻ります」

「ほほぉ、それはまた何で?」

「潜入して何かの情報を持ち帰る…スパイとして」

「でもね…それは逆に危険やねんな、もしも
アナタがこちらの情報を洩らしたら…?」

「その時は…」

「なぁに?」

「まずは…」

「うん」

「父さんを殺してください、オレはこの人の息子だ、オレの責任は父さんの責任でもある、その後でオレを始末すればいいです」

「父さんは人質ってこと?さすが!出来た息子を持ったねぇ、父さん?」

「ドえらい立場に置かれたな、俺」

「なら、アナタの正体がバレて危なくなったら?」

「オレは死にません!母さんたちのこともまだ助けられてないし」

「え?それは…」

僕の言葉を遮るように
エミカはシオンに視線を送りながら

「よし!決まったね、それじゃ何か掴んだら
帰っておいで、その時にうちの組織のメンバーとして迎え入れるから、ふふ」

「すまんな、シオン。まさかこんな危険な任務を背負わせるとは」

「いや、大丈夫、何となく事情はわかった」

「ほんまか?」

「要はあのゾンビの組織とジェノサイドは
何か裏で繋がりがあるってことやんな」

「ふふ、飲み込みが早いこと」

「じゃ、オレはまた戻るから」

「あ、少年、ちょっと待って」

 突如悪戯っぽい表情を浮かべたエミカは
シオンを呼び止めると、こう告げた。

「ひとつ宿題」

「えっ?何ですか?」

「『ジェノサイド』の意味はわかる?」

「え…わからない」

「ふふ、ネットで調べてみたら?それもアナタの任務よ」

「あ、え…?」

「あ、あと、あそこに入る時に検査みたいなのは受けた?」

「確か、それは入門の時に、健康診断みたいなのを…あと血を摂られたり」

「わかった、ありがとう」

「それじゃ、行ってきます」

「健闘を祈る、シオン隊員!」

「は、はい!」

「ふふふ」

ようやくエミカからいつもの笑顔がこぼれた。

「行っちゃったねー」

「いや、あいつならまた戻ってくる」

「へぇ~、すごい自信」

「あの『能力』があれば…」


「ま、あんだけビビらせたら寝返ることもないでしょ」

「あれは言い過ぎやて、ほんまに殺される思てたよ」

「うん…でも、それくらいの覚悟は必要、兄さんもそうでしょ?」

「ま…そうやけど」

少しずつ遠ざかっていくシオンの背中を見送っていると
家から幼稚園に送り出す時の思い出が甦ってきて
思わず涙が出そうになったが

またエミカに笑われてはいけないとグッとこらえた。

するとエミカは急に真剣な表情になり
まじまじと僕を見つめた。

「え?泣いてないって、ほんまに!」

「あ、いやその話やなくて」

「何の話?」
 
「どう思う?」

「え?信用できん?俺の息子のことが」

「あ、そうじゃなくて…」

「そう言や、言うてたな…採血のこと」


「・・・と、なると」

しばしの沈黙の後、先に切り出したのはエミカだった。
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