51 / 71
Ⅳ. Memories Of Desperation
【リアルワールド】
しおりを挟む
僕がゾンビの蠢く地獄へ飛び出してから
隔離されて病院へ運び込まれるまでの記憶は
このショッピングモールでの惨劇を目にした
あまりにもショッキングな光景のせいで
全て失われてしまったのだろう。
つまり僕の母親こそが
賃金の発生しないゾンビを労働力として使用する
「人類ゾンビ化計画」の中心人物の一人だったのだ。
"あの夢"の中でアンナが言っていたように
一度に大量のゾンビを制作するために
こうしたイベントを開き
大量虐殺を繰り返していたのだ。
と、言うことは…
夢で見たシオンと参加したあの"ゾンビ大会"も
アンナの存在も今、家族と離れ離れとなっている原因も
そしてショッピングモールで起きたあの事件、
無惨な光景のどれもこれもが…
全ては夢ではなく現実だったと言うことになる。
「許さない!絶対に許さんぞ」
僕が反撃しようとしたその時、
後ろから誰かに肩を叩かれた…
「思い出してしもてんな」
映像を見ている僕の後ろに立っていたのは
頭にバスタオルを巻いたサヤカだった。
バーチャルの世界から現実に引き戻された僕は
やり場のない怒りに声を震わせた。
「キャプテン、こう言う事やったんやね」
「そう…これはうちの会社が開発したバーチャル体験型の映像システムやねん」
「な、何でおかんが?…」
「コードネーム"KK"…それがあなたのお母さんの名前」
「一体、何で俺の母親が…?」
「今は…それだけしか・・・まだ詳しいことは」
サヤカは俯いて首を横に振った。
「で、あれがあの時、俺が体験した…現実ってこと?」
「思い出した、これで?…思い出せてよかった…んかな?」
そして全てを鮮明に思い出した
あの夏休みの墓参りで里帰りした僕の故郷、
そこで参加したホラーイベントでの恐怖体験と
アンナやサヤカの存在。
「私のことも思い出した?」
「そうや、壁を突き破って入ってきてんな」
「だから…初めてちゃうねんな、あのテレビ番組の収録の時…」
「そっか!やから何となく初めましての感じがせんかったわけやね」
「そっ!よかった…思い出してくれたんや」
とは言え、過去の記憶はまだ戻ってはいない。
「でもそれより前のことは…」
「それもまた、何かのきっかけで…今は無理せんといてな」
僕の記憶を引き戻すきっかけ…
どうもそれは僕が見る夢と何かしらの関係があるようだ。
「"あの夢"はあの日、俺が実際に…」
「夢?」
「あの病院で、ずっと同じ夢を見てて…何かの警告と言うかメッセージみたいに…」
「そっか、目の前であんなの見せられたら、そりゃ、ね、トラウマだわ…って、え?夢」
その時、僕はある重大な事を思い出し
思わずサヤカの言葉を遮った。
「そうや!シオンは?シオンは今どうなってん!!」
僕の記憶はまだシオンが妻や娘を助けようと
あの地獄の中へ飛び出してから途絶えていた。
その頃シオンが
僕の全く想像もつかない場所で
秘かに僕との再会を願っていることなど
今の僕は当然ながら知るよしもなかった。
隔離されて病院へ運び込まれるまでの記憶は
このショッピングモールでの惨劇を目にした
あまりにもショッキングな光景のせいで
全て失われてしまったのだろう。
つまり僕の母親こそが
賃金の発生しないゾンビを労働力として使用する
「人類ゾンビ化計画」の中心人物の一人だったのだ。
"あの夢"の中でアンナが言っていたように
一度に大量のゾンビを制作するために
こうしたイベントを開き
大量虐殺を繰り返していたのだ。
と、言うことは…
夢で見たシオンと参加したあの"ゾンビ大会"も
アンナの存在も今、家族と離れ離れとなっている原因も
そしてショッピングモールで起きたあの事件、
無惨な光景のどれもこれもが…
全ては夢ではなく現実だったと言うことになる。
「許さない!絶対に許さんぞ」
僕が反撃しようとしたその時、
後ろから誰かに肩を叩かれた…
「思い出してしもてんな」
映像を見ている僕の後ろに立っていたのは
頭にバスタオルを巻いたサヤカだった。
バーチャルの世界から現実に引き戻された僕は
やり場のない怒りに声を震わせた。
「キャプテン、こう言う事やったんやね」
「そう…これはうちの会社が開発したバーチャル体験型の映像システムやねん」
「な、何でおかんが?…」
「コードネーム"KK"…それがあなたのお母さんの名前」
「一体、何で俺の母親が…?」
「今は…それだけしか・・・まだ詳しいことは」
サヤカは俯いて首を横に振った。
「で、あれがあの時、俺が体験した…現実ってこと?」
「思い出した、これで?…思い出せてよかった…んかな?」
そして全てを鮮明に思い出した
あの夏休みの墓参りで里帰りした僕の故郷、
そこで参加したホラーイベントでの恐怖体験と
アンナやサヤカの存在。
「私のことも思い出した?」
「そうや、壁を突き破って入ってきてんな」
「だから…初めてちゃうねんな、あのテレビ番組の収録の時…」
「そっか!やから何となく初めましての感じがせんかったわけやね」
「そっ!よかった…思い出してくれたんや」
とは言え、過去の記憶はまだ戻ってはいない。
「でもそれより前のことは…」
「それもまた、何かのきっかけで…今は無理せんといてな」
僕の記憶を引き戻すきっかけ…
どうもそれは僕が見る夢と何かしらの関係があるようだ。
「"あの夢"はあの日、俺が実際に…」
「夢?」
「あの病院で、ずっと同じ夢を見てて…何かの警告と言うかメッセージみたいに…」
「そっか、目の前であんなの見せられたら、そりゃ、ね、トラウマだわ…って、え?夢」
その時、僕はある重大な事を思い出し
思わずサヤカの言葉を遮った。
「そうや!シオンは?シオンは今どうなってん!!」
僕の記憶はまだシオンが妻や娘を助けようと
あの地獄の中へ飛び出してから途絶えていた。
その頃シオンが
僕の全く想像もつかない場所で
秘かに僕との再会を願っていることなど
今の僕は当然ながら知るよしもなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
闇に蠢く
野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。
響紀は女の手にかかり、命を落とす。
さらに奈央も狙われて……
イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様
※無断転載等不可

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

都市伝説 短編集
春秋花壇
ホラー
都市伝説
深夜零時の路地裏で
誰かの影が囁いた
「聞こえるか、この街の秘密
夜にだけ開く扉の話を」
ネオンの海に沈む言葉
見えない手が地図を描く
その先にある、無名の場所
地平線から漏れる青い光
ガードレールに佇む少女
彼女の笑顔は過去の夢
「帰れないよ」と唇が動き
風が答えをさらっていく
都市伝説、それは鏡
真実と嘘の境界線
求める者には近づき
信じる者を遠ざける
ある者は言う、地下鉄の果て
終点に続く、無限の闇
ある者は聞く、廃墟の教会
鐘が鳴れば帰れぬ運命
けれども誰も確かめない
恐怖と興奮が交わる場所
都市が隠す、その深奥
謎こそが人を動かす鍵
そして今宵もまた一人
都市の声に耳を澄ませ
伝説を追い、影を探す
明日という希望を忘れながら
都市は眠らない、決して
その心臓が鼓動を刻む
伝説は生き続ける
新たな話者を待ちながら
【全64話完結済】彼女ノ怪異談ハ不気味ナ野薔薇ヲ鳴カセルPrologue
野花マリオ
ホラー
石山県野薔薇市に住む彼女達は新たなホラーを広めようと仲間を増やしてそこで怪異談を語る。
前作から20年前の200X年の舞台となってます。
※この作品はフィクションです。実在する人物、事件、団体、企業、名称などは一切関係ありません。
完結しました。
表紙イラストは生成AI
ゴーストバスター幽野怜Ⅱ〜霊王討伐編〜
蜂峰 文助
ホラー
※注意!
この作品は、『ゴーストバスター幽野怜』の続編です!!
『ゴーストバスター幽野怜』⤵︎ ︎
https://www.alphapolis.co.jp/novel/376506010/134920398
上記URLもしくは、上記タグ『ゴーストバスター幽野怜シリーズ』をクリックし、順番通り読んでいただくことをオススメします。
――以下、今作あらすじ――
『ボクと美永さんの二人で――霊王を一体倒します』
ゴーストバスターである幽野怜は、命の恩人である美永姫美を蘇生した条件としてそれを提示した。
条件達成の為、動き始める怜達だったが……
ゴーストバスター『六強』内の、蘇生に反発する二名がその条件達成を拒もうとする。
彼らの目的は――美永姫美の処分。
そして……遂に、『王』が動き出す――
次の敵は『十丿霊王』の一体だ。
恩人の命を賭けた――『霊王』との闘いが始まる!
果たして……美永姫美の運命は?
『霊王討伐編』――開幕!

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる