夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅳ. Memories Of Desperation

【殺戮の宴】

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 静寂を破るように凄まじい破壊音と銃声が
聴覚を刺激する、それもかなり近くから。

一瞬、壁の裏側へと身を隠し壁に耳を当ててみる
足音が縦横無尽に響き、悲鳴や怒号が入り交じり

聞くに耐えない苦痛を伴う音たちが
鼓膜を揺さぶり続ける。

ー ここにいては危ない!

身を翻してその場を離れようとした時、
誰かが迫ってくるような危険な気配を感じて

僕は非常ドアの向こうの階段から2階に昇って身を隠す。

壁と壁の隙間から下の階の様子をうかがう…

するとそこで視界に入ったのは

迷彩服に身を包んだ男たちが買い物客を追いかけ回し
ある者は銃で、ある者は刃物で
無差別に殺戮を繰り返している光景。

その亡骸を血にまみれた体で重なり合って貪る
ゾンビの群れ、

フェニックスホールの時のように
ゾンビは2体だけではない

まるで群れだ!

確かさっきこんな話をしていた、
"死体が動き出した"…と

このゾンビたちはかつてはこの街の住民だった?
そういえば夢の中で誰かそんな話をしてたな…

そしてそのゾンビの集団は徒党と化して
まるで迷彩服の軍団と共闘するかのように

人を襲い、人を食らう…

正にこの世の地獄とでも言える光景。

足がすくんでそこから動けない、
かと言ってここにいたら僕もいずれ

あの犠牲者たちと同じ末路を歩む結果になるだろう

どうすればいい?
どうすべきだ?


それよりも…

僕が今、見せられているのは何なんだ…
夢なのか?現実なのか?

そしてこのショッピングモール…

あの頃、病院で毎晩のように見ていた
あの"夢"と同じ…場所?

そしてここはあの日…そう、僕が
サヤカを背負って病院を探して歩いていた時

ふと見つけて立ち寄ろうとした
ショッピングモールと同じ建物だ。

でもそこにはイヤな予感がして立ち寄れなかった・・・

僕は今、現実と虚構の狭間に立っている。

その時、ふとある映像が頭の中に浮かんだ


夏休み、家族旅行、ホラーイベント…

待てよ?

僕の家族は今、どこにいる?

あの日から僕は家族の誰とも会っていない
気付いた時にはひとり、病院のベッドの上で

悪夢にうなされていたんじゃないか。


あの日…僕たちが来たのが
このショッピングモールだとしたら

館内のどこかに僕の家族がいるはずだ…


そうだ!


僕はシオンと二人、別の建物で始まった
ゾンビのイベントに行ったんじゃないか!

そこに行けばシオンはいる、そして妻や娘と合流して
こんな物騒なところから早く逃げなければ…

と、その時

「いたぞ!、あそこにも!早く捕えろ」

身を隠していた僕は遂に
迷彩服の軍団に見つかってしまった

その男たちの目を盗んで
何とかその場から離れようとしたが…

そこに現れたのが無数のゾンビたち。

僕は落ちていた大きなショベルを振り回し
手当たり次第にゾンビの頭を掻き切っていく。

鋭利な刃物で野菜を切るように
唸り声を上げるゾンビたちを切り裂いてゆく。

決して柔らかい皮膚ではないゾンビたち…
特殊訓練で鍛えられた僕の体は

一体どこまで進化したのだ?


そして血の海と化した室内を
首のないゾンビたちがうようよとさ迷う中、

不意に飛び出して来た一人の女性が目の前に立ち塞がる

他の男性たちと同様に全身、迷彩服に身を包み
兵士が被るようなベレー帽に
サングラスで顔が隠れているものの

見間違えるはずもない


その顔は紛れもなく…


僕の母親だった!!!
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