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Ⅳ. Memories Of Desperation
【記憶の再生】
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しかし僕のような"普通の人間"が
ここで訓練を受けて
果たして"実戦"の機会などあるのか?
そもそも実戦とは?
この組織は軍隊ではないのだ、
ならば誰と?何のために?
この訓練が今後何かの役に立つのだろうか?
蛇足ながら僕が受けた「特殊訓練」の授業は
やたらデカいおばさんが教官だった。
にも関わらず、何なんだあの俊敏な動きは?
まるでアメフトの選手のように
巨漢でありながら小鹿のような身のこなし。
「ありゃまるで熊だな」
「襲われたら最後やね」
共に特殊訓練に参加しているカツ君と言う
同期の仲間と愚痴をこぼす、
少しずつではあるがこの組織の中で
心を開いて話せる存在が生まれつつあった。
「そこの二人!私は熊じゃないわよ、話してるからもうひとつメニュー追加ね!」
「くそっ!聞かれてたか」
「え?この距離で?」
何と言うことだ、僕たちと彼女とは数メートルどころか
10メートル近く離れている。
「あれも能力のひとつ、ってわけだな」
「聴覚を極限まで研ぎ澄ますわけやね」
日本人とフィンランド人のハーフだと聞いた
ノーラ教官、彼女のことは
また別の機会に話すこともあるだろう。
いつも以上にハードな訓練を受け
この後、疲れた体を引きずりながらも
約束通りサヤカと待ち合わせ場所で合流した。
「ごめーん!兄さん、待たせた?」
「あ、いやさっき来たばっかりやから」
年の離れた上司と部下、でありながら
まるで恋人同士のようなやり取りに思わず吹き出した。
「ぶっ!」
「どないしたん?」
きょとんとした表情で僕を見るサヤカ
「いや…俺らって親子くらいやのに…カップルみたいな会話やな思て」
「そんなに離れてないやん、干支一回りくらいやで」
「そっかぁ」
「で…どないしたん?」
「あ、いや、何でも…」
「ふふ、変な兄さん」
そして共にサヤカの部屋へと向かう。
「ごめーん、雨で服ぐっしゃぐしゃになったからシャワーしてきていいかな?」
「どうぞどうぞ、自分の家やねんから遠慮なく」
サヤカの部屋に一人残された僕が見つけたのは
無造作にテレビの前に積み重ねられた
DVDディスクやビデオテープ
その中でひときわ目を引いたのが
透明なケースに入れられた1枚のDVDだった。
吸い寄せられるかのように
僕はそのDVDのひとつを手に取り、
デッキの中に入れ、再生しようとしている。
そのDVDはケースに"極秘"と表記されていて
おそらく意味深な内容だと確信した。
サヤカがいないことを確認してから
せわしなくリモコンを操作して再生が始まった。
最初は小型飛行機から撮影しているかのような
空からの動画。
眼下に見えるのは体育館のように大きく
原色で派手な色どりのショッピングモールらしき建物。
空から中継をしてるのはテレビ番組のようでもあるが
それにしては構成やカメラワークが雑すぎる。
そして…
「ただ今現場に到着、これから救助にあたる」
こんな感じで始まる
素人のレポーターと思われる声での実況。
そしてこの建物、どこかで見た事がある。
ここで訓練を受けて
果たして"実戦"の機会などあるのか?
そもそも実戦とは?
この組織は軍隊ではないのだ、
ならば誰と?何のために?
この訓練が今後何かの役に立つのだろうか?
蛇足ながら僕が受けた「特殊訓練」の授業は
やたらデカいおばさんが教官だった。
にも関わらず、何なんだあの俊敏な動きは?
まるでアメフトの選手のように
巨漢でありながら小鹿のような身のこなし。
「ありゃまるで熊だな」
「襲われたら最後やね」
共に特殊訓練に参加しているカツ君と言う
同期の仲間と愚痴をこぼす、
少しずつではあるがこの組織の中で
心を開いて話せる存在が生まれつつあった。
「そこの二人!私は熊じゃないわよ、話してるからもうひとつメニュー追加ね!」
「くそっ!聞かれてたか」
「え?この距離で?」
何と言うことだ、僕たちと彼女とは数メートルどころか
10メートル近く離れている。
「あれも能力のひとつ、ってわけだな」
「聴覚を極限まで研ぎ澄ますわけやね」
日本人とフィンランド人のハーフだと聞いた
ノーラ教官、彼女のことは
また別の機会に話すこともあるだろう。
いつも以上にハードな訓練を受け
この後、疲れた体を引きずりながらも
約束通りサヤカと待ち合わせ場所で合流した。
「ごめーん!兄さん、待たせた?」
「あ、いやさっき来たばっかりやから」
年の離れた上司と部下、でありながら
まるで恋人同士のようなやり取りに思わず吹き出した。
「ぶっ!」
「どないしたん?」
きょとんとした表情で僕を見るサヤカ
「いや…俺らって親子くらいやのに…カップルみたいな会話やな思て」
「そんなに離れてないやん、干支一回りくらいやで」
「そっかぁ」
「で…どないしたん?」
「あ、いや、何でも…」
「ふふ、変な兄さん」
そして共にサヤカの部屋へと向かう。
「ごめーん、雨で服ぐっしゃぐしゃになったからシャワーしてきていいかな?」
「どうぞどうぞ、自分の家やねんから遠慮なく」
サヤカの部屋に一人残された僕が見つけたのは
無造作にテレビの前に積み重ねられた
DVDディスクやビデオテープ
その中でひときわ目を引いたのが
透明なケースに入れられた1枚のDVDだった。
吸い寄せられるかのように
僕はそのDVDのひとつを手に取り、
デッキの中に入れ、再生しようとしている。
そのDVDはケースに"極秘"と表記されていて
おそらく意味深な内容だと確信した。
サヤカがいないことを確認してから
せわしなくリモコンを操作して再生が始まった。
最初は小型飛行機から撮影しているかのような
空からの動画。
眼下に見えるのは体育館のように大きく
原色で派手な色どりのショッピングモールらしき建物。
空から中継をしてるのはテレビ番組のようでもあるが
それにしては構成やカメラワークが雑すぎる。
そして…
「ただ今現場に到着、これから救助にあたる」
こんな感じで始まる
素人のレポーターと思われる声での実況。
そしてこの建物、どこかで見た事がある。
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