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Ⅳ. Memories Of Desperation

【常識外】

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 施設でいつもの訓練が終わり
合流した僕とサヤカは特殊訓練のため

雨が降り続く深夜の暗い国道沿いの歩道を
2人で「学校」へと向かって歩き続けていた。

車のライトが雨に反射してとてもキレイだった

 ただ夜中だというのに車の往来が激しく
何度も水しぶきをかけられた。

歩道がやたら狭く時々一列に歩かないと
向こうから来た人とすれ違えなくて

少し窮屈な感覚に陥ったが

サヤカ曰く「これも訓練の一環やから」と

15キロ以上ある道程を歩いて
「特殊訓練」を受ける学校を目指した。

 もしかしたら特殊訓練とはフィジカルな訓練ではなく
僕の心の内面を強化するような訓練、なのかも知れない。

例えば"何か"を思い出してしまった時に
メンタルに支障をきたさないための

鋼の精神力を形成するような…


特殊訓練はマイナス2時間目からのスタート
通常の学校授業が1時間目なら9時から始まるのであれば

マイナス2時間目は早朝6時からの開始
しかもその日の"登校"は必ず徒歩で、と

当初は登校するだけで息が切れ、その場に座り込むほどの
ハードな課程を強いられた。

とにかく全てにおいて通常の規格から外れた
常人の常識では考えられない全くもって破天荒な組織だ。

 "学校"に着いた頃はうっすらと夜が明け始めていて
僕は勝手知ったる感じで下駄箱の方へ歩いていく。

ここもこれまで何度か来ているが
初めての時も"初見"と言う感覚は全くなく
すたすたと館内を歩いていた。

「ほな後でね」

「待ち合わせ、ここでええんかな」

「ワンコールくれたら、ここに来るから…」

 そしてサヤカは階段を登っていった、
僕はフィールドの方へと歩いていく。

ところで「特殊訓練」とは
これまでの訓練を実戦用にアレンジしたもので

90分、ほぼノンストップで行われる。

それは肉体的要素と精神的要素を
同時に鍛練する感じのトレーニングで

ある一定のレベルに到達すると
受けられるようになる、らしい、

僕の肉体もそれなりに強化されているようだ。

 どんなトレーニングなのか…それは
口頭で伝えることすら拒まれるほどに苛酷である。

例えるなら火の輪くぐりのライオンを教育するかの如く
飴と鞭を使い分けるようなプランで遂行され

死に直面してもなお不屈の精神を持ち続ける
心が折れないために何度も心を折るかのような

筆舌に尽くしがたい苦痛と恐怖に追いたてられる
正に特殊な訓練である。


 このような訓練を受けるようになって数ヶ月、
いつしか若くない僕ですら
着実に常人以上のスキルアップを遂げていた。
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