夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅲ. 邪魅の棲む街

【正義の味方】

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 実際この世にはそんなポイントが
数知れず点在しているらしいのだが

彼女曰くここは
交通事故でこの世を去った人たちの霊が集まる

"忽怪もっけ死歿街しぼつがい"

 謎の生き物も母親の姿をした生き霊も
僕が深層心理の中で抱いている

"思い"の裏返しが死霊とリンクして
映し出されるのだと言う。

 そう言えば母親は以前
バイクで転倒して一度生死の境をさまよう、

そんなことがあった。

何かしらの交通トラブルにまつわる念が
ここに集まる、と言うことは理解できたが

わからないのは何故僕がここにいるか、だ。

 ただ、この女性の顔に見覚えはあった
"あの日"と着てる服が違うだけだ。

いかにも女子、と言った服装ではなく
あの日のサヤカ同様、一見馴染みのなさそうな
迷彩色の戦闘服に今は身を包んでいる

 ミルカが悲惨な最期を遂げたあのおぞましい
「夕焼けのブランコ」事件があった時

彼女もグループの一員として僕と会っていた。

「そして私の名前は…」

 「いや、オレは知ってるで、久しぶりやな、
エミカちゃん!!!」

「ふふっ、兄さん久しぶり。ま、そういう事やねん」

「全然事態が飲み込めんのやけど」

エミカは僕に言った。

「アナタをうちに連れて行く事、それがキャプテンから依頼された任務やねん。だからしばらく断りなく張り込みさせてもろててんな」

「張り込み?全然気づいてなかった」

「でしょうね?楽やったわぁ、あんだけ無防備やと、で、こんなとこに迷い込むし…ふふ
そんじゃ、うちの組織に入りましょか?」

「組織???」

「そ!正義の味方やで」

 何と言うアバウトで漠然とした勧誘だろう
いきなり僕に"正義の味方になれ"、だと?

一体そこで僕に何が出来ると言うのだろうか?
そして何のために?

そして僕が選ばれた理由わけ…とは?

「この街に入り込んでまうってのは、ある意味『選ばれし者』の証拠やからね、その資格を持ってるってこと…ふふふ」

"選ばれし者"?

それは何らかの能力を持つ者だけが
入ることの出来る世界、と言うことか?

「望んで来てるわけやないんやけどなぁ」

「それもこれも運命運命、さ、行きましょか」

 そして詳しい事は記憶の回復と共に
おのずからわかっていくのだとエミカは言った。

何故僕がここにいるのかわかる日が来るとしたら

それは…"記憶の回復と共に"

 そう言えばあの日サヤカも同じような事を言っていた…
おそらく「一連の奇怪な事件」

「病院での検査」
「体の変化」

これらが記憶を取り戻す鍵になるのだろうと
僕は確信した。
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