夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅲ. 邪魅の棲む街

【遭遇】

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 母親は言う。

「ここから先は邪魅の世界…」

そして僕の手を強く掴んで
"夜の世界"の方へ引っ張っていく。

その力はあまりにも強く
僕はあらがう事も出来ず引っ張られるように
「暗い世界」へ連れて行かれる。

 こうしてしばらく、半ば強引に母親に手を引かれたまま
"夜の世界"の歩道を歩いていると
前から異様な人がやってきた。

歩道を埋め尽くすくらいの巨大な女性…
正に"巨女"だった。

その巨女は僕とすれ違いざまに体を押し付けて
僕を車道の方へ押しやろうとする。

体格が大きいだけではない、物凄い力だ
腕一本で大人の男性一人を軽々と歩道の端へと追いやる。

危うく車に轢かれそうになったが
間一髪身を翻して回避し更に前へ進むと

いつしか母親の姿は消えていて
元の道に戻ろうとしてするのだが

歩けども歩けども同じ場所をぐるぐると回っている。

 すると目の前に猫背で小柄な
男と女とも若者とも老人とも
まったく見分けのつかない一人の人間が

ブツブツ言いながら近づいてきた。

見た目は人間なのだがその姿は
まるで別の種類の「生き物」のようだ。

ボロボロの衣服を纏い髪の毛はボサボサ

かけている眼鏡が鼻の上からズレて落ちそうなくらいの
だらしない風体で近づいてきたかと思うと

いきなり僕の腕にしがみついて地面へ倒そうとする。

 小柄なのにその体は石のように重く
僕はその生き物ともつれるように地面へ転がり込む。

重さに耐えながら脱出を試みる僕の耳元で
聞こえるその「生き物」の呟き。

「同じ目に遭いなさい…私と…同じ目に遭いなさい」

何だこいつは!と
少し気が遠くなりかけたその時

バンっ!!


鳴り響く一発の銃声、
謎の生き物はまるで割れた風船のようにぺしゃんこに。 

何が起きた?
そしてこの世界はどこなんだ?

そんな疑問が次々と浮かび
頭がクエスチョンマークで溢れている。

「ふふふふ」

どこかから聞こえる女性の笑い声
次は何が、誰が現れると言うんだ?

「誰?誰なんや?」

「大丈夫ーーっ?ふふっ」

 笑い声が聞こえたのはうつ伏せになった僕の
頭の上からだった。
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