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Ⅲ. 邪魅の棲む街

【モルモット】

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 僕は再び入院する事になった例の病院で
また同じように検査漬けの日々を
送ることになった。

それはまるで実験台にされた動物のようだった
あまり気分の良いものではない。

今回の検査はおそらくカナコに投与された
ゾンビウィルスに関する研究のためだろう。

それによって僕の記憶を呼び戻す
何らかの手がかりを得る可能性が
見い出せるのかも知れない。

 と、その前に
ミルカの一件の影響でお蔵入りになってしまった
" 過酷環境で1曲作るまで帰れない " ロケ、

この番組の顛末てんまつから話さないといけない。

 そもそもあのロケに参加したメンバーで
純粋にアイドルとしての活動のみをしていたのは

ミルカだけで

後のメンバーは全員、サヤカ同様に
何かしらの特殊部隊に所属する
二足のわらじを履いた存在だと

後に聞かされた時は驚いた。

あのロケ自体がそもそもアカリの死因となった
"夕焼けのブランコ事件"を調査するための
極秘プロジェクトだったのだ、と

サヤカが教えてくれた。

 当然ながら番組が放送されることはなく
全てはベールに包まれたままとなった。

確かミルカが「夕焼けのブランコ」と口にした時
スタッフの顔色が変わったのを覚えているが

メンバーはもちろんスタッフも含め
全て部外者には内密に進められていた。

ではミルカは何故あの場所へ?

 を知っていた、であろうミルカは
おそらく真犯人をおびき寄せるおとりとして
連れて来られたのではないだろうか?

そこにまんまと現れたのが…カナコ
だったと言う解釈をすれば

全てが一本の線で繋がる。

しかしカナコが全てを計画した
いわゆる主犯格の人物とは思えない。


そして何故僕はあの場所に招かれた・・・?

「で、何で俺が呼ばれたんやろ?」

「そ…それは、あの事件には…兄さんがいることが…」

サヤカの説明は何故か釈然としなかった。

 もしかしたら"あの夢"と今回の事件
そしてゾンビに関する何かが
僕の記憶喪失と繋がっているのかも知れない。

その為に僕の記憶を取り戻す必要があり
あの場に導かれた?

今はそう考えるのが賢明だ。

 それよりも再び僕は入院した病院で
以前と同じように繰り返される謎の検査…

こんな毎日にそろそろ嫌気が差していた。
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