夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【本当の意味】

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 しかし会場を必要以上に刺激して
混乱に巻き込んではいけない

「その時」が来るまで事を内密に進めなければ…

サヤカは僕にそう伝えた。

 このフェスはライブだけでなく
余興の一環としてクイズコーナーがあり

お客さんがステージに立てたり
MCの人が客席を歩いたりするらしい

お客さんが1曲歌える演出もあるのだとか。

会場はすり鉢状になっていて
移動したり歌う時は客席を自由に移動できる。

死体の二人を探す最大のチャンスは
人の行き来が発生するこの時、とサヤカは言った。

ここで観客を装ってクイズに正解して
違和感なく会場を歩きながら
二人を見つけてゾンビ化を阻止するのだ。

 ただ大きな問題は
お客さんが歌える権利を獲得するためには
イントロクイズに答えて正解する事。

正解と同時にそのイントロに続けて歌えるのだが

フェス出演者のサヤカは解答することが出来ない
ここは僕が何とかするしかない。

「兄さんなら…音楽に詳しいからきっと…」

「よし、何とか答えて二人を探してみる」

 早速第1問のイントロクイズが始まる。

聞き覚えのあるイントロ…それはまるで
切ない泣き声のようなサックスの音色で始まる
80年代の懐メロ曲だった。

サヤカにとってはかなり昔の歌だが
僕ならこの曲は知っている。

「そこのお兄さん!正解です」

クイズに正解した僕は
司会者から強引にマイクを奪うように受け取り
歌いながら会場を探しまわる。

 曲がサビに差し掛かった時
僕はこの曲に込められた真の意味を
自らが口にする事になった。

♪明かりを消して さあ始めよう 
 あの日の二人に戻るために♪

「明かりを消して」?
「アカリをして」?

アカリをこの世から抹殺すると言うことか?

「あの日の二人に戻るため」?

それはまるで
この日のためのダブルミーミングを思わせる

どこか引っ掛かる意味深な内容の歌詞の曲が
選択されていた。

そして・・・

それはあまりにも急な出来事だった。

普段あまり感情を露わにしないサヤカが
会場の片隅から涙交じりの声を上げる。

「カナコ!!!、あんた、まだ恨んでるんか!アホ!」

遠くからでもはっきりと聞こえる
サヤカの慟哭

「その憎しみは…私にだけぶつけてくれたらよかったのに!」

その刹那、一発の銃声が会場に響く。

 銃声に振り返った時、僕は
あまりにもおぞましいこの世のものとも思えない
生き物の姿を目の当たりにした。
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