夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【回り出した運命の歯車】

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 よほど動転していたのだろう、どのようにして
この場所に辿り着いたのかすら覚えていない。

気づけば僕は"PHENIX HALL" と書かれた
大きな看板の下に立っていた。

 あと数分もすれば歓喜と熱狂に包まれた
音楽イベントが始まるこの会場に

ゾンビが現れて人を襲う、などと言う
前代未聞の事件が起きようとしている

何とか未然に防がねば…

 だがしかし、こんなことを話して
誰が信じてくれるだろう?

サヤカ…彼女しかいない!
僕は本能的にそう察知した。

スタッフから渡されていた許可証を首から下げ
会場内を歩き回ってサヤカを探し

ようやくステージ裏でミーティングを終えた
サヤカの姿を見つけた。

「兄さん!」

「サヤカちゃん、信じてもらえんやろけど…聞いてほしいことが…」

ミルカの死、薬の投与、
そしてカナコの事…

信じてもらえないのを承知の上で
今に至る事情を話すと

この受け入れがたい話を
サヤカは瞬時に理解した。

「回り出した…んやな、運命の歯車が」

「え?」

「遂に『その時』が来ましたね…もう私も準備出来てんねん」

サヤカの表情が一変した。

 これまでのアイドルらしい清楚な笑顔ではなく
これから戦地に向かう兵士の様な凛々しい表情へと。

どういうことだ?
これから何が始まると言うんだ?

そしてサヤカは一体何者なんだ?

 そう言えば、カナコはさっき

「あんた生きてたんか?」と
まるで僕を知っているような事を言っていた。

カナコとは誰なのだろう?

「俺…何で"カナコ"って名前に反応したんやろ?」


半信半疑でその事をサヤカに尋ねてみる。

「兄さん、まだ全部思い出せんかも知れへんけど…時間ないから短めに話すね」

サヤカが物静かに語り始めた…

そしてその内容を聞くに連れ
僕は驚きを隠す事ができなかった。
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