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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【新薬の実験台として】

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 カナコ…確かにその名には覚えがある
彼女と過去にどこかで会ったことがあるのか?
記憶が交錯する。

「アカリに打ったのと同じ薬や、ゾンビ開発ウィルス」

「な、何を言ってる?何のことだ?」

ゾンビ?
薬?
そしてカナコ?

いつ、どこで、どのようなきっかけで
僕は彼女と出会っていた?

そして謎の死を遂げたアカリは
彼女の手によって…殺されたと言うのか?

「カナコがアカリさんを…?」

「あれ?やなんてえらいよそよそしい呼び方すんねんな?」

「何っ?」

「まぁええわ、アカリの時はまだ開発中やったからこの薬は死人にしか効果なかってん、やから…」

アカリを亡き者にした後で
このウィルスを注入したのだと言うカナコ。

「アカリは実験台になってもらった…ってわけやね」

その表情は恐ろしいほどに冷たい。

「ミルちゃんをどこに連れて行った?」

「新薬のお試しで…」

「な!何だって!」

「あ、この薬なら生きたままでもゾンビになれるのに…ミルカはビビりやからその話したらあそこから飛び降りて死んでまいよってん」

目の前には
2階建ての家の高さほどのジャングルジム。

「な、何てことを!」

「ま、私が突き落としたんやけどな、ギャーギャー泣いてうるさいから。そしたらあいつ噛みつきよって、ほら手が血まみれ…」

「ミルちゃんは知ってたんか、アカリさんの事件も」

「せやな、見てしもたんやろな。やからミルカもアカリと同じ場所で、ここ『夕焼けのブランコ』で、同じ目に…な。」

「・・・ひ、ひどい」

「アカリ、アホやったから簡単やったわ。このロケの下見に来た時、久しぶりに会ったから美味しいモン食べに行こか言うたらほいほい付いてきて…続き聞きたい?に・い・さ・ん…」

「カナコ…お前は…誰なんだ?何でこんなことを」

「あれぇ?記憶無くしてるって噂はほんまやってんな、兄さん」

「な、何でそれを?」

「ま、その方がええよ、思い出したくないこと、めっちゃ体験してるはずやから」

「夕焼けのブランコ…」

「あ、その都市伝説?教えてあげよか?」

冷淡な笑みを浮かべながら
カナコは語り始めた。
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