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Ⅱ. 夕焼けのブランコ
【カナコ】
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その時だった、
カナコ?カナコだって?
そして失われたはずの僕の記憶の中で
その名前を聞いた時感じた
まるで"開かずの間"を開ける時のような
何とも表現し難い負の感情。
そんな気持ちを振り払おうとしばらく歩く、
そしてアパート周辺から
部屋に戻ろうとすると再び着信
今度はミルカからだ。
電話越しだが明らかに様子がおかしい
どうも泣いているようだ
しかも泣いているだけではない、
息も絶え絶えな感じで
まるで誰かから逃げているように思える。
「はぁ、はぁ…に、兄さん!今どこ?どこにいてますか?ちょっと話したい事が…いや、助けてください!助けて!!」
今、ミルカに何が起きている?
「はよ来て、兄さん!私、殺される!!」
「ミルちゃん、落ち着いて!すぐ行くから…まずはどこにいるか教えて!」
「公園…あの公園やねん、今」
「この前話してた『赤いブランコ』やな?」
「そう!兄さん、はよ!助けて!お願い…」
「ミルちゃん!」
ガチャ!ツーツーツー…
ここで電話が切れた、その公園なら
全力で走って向かえば数分で行ける。
ミルカのもとへ向かうのは当然のことながら
僕はこのアパート周辺から早く離れたかった。
今しがたひとつ、
思い出したくない記憶が甦ったのだ。
ここは以前、例の病院で見た夢のひとつ…
すれ違い様に老婆のゾンビが現れ、
いきなり襲われた場所にとても似ていた。
目覚めた時、とても夢とは思えないほど
あまりにも鮮明に覚えていて
しかも今、それと似た場所が存在していて
そこに僕自身が立っている事に
底知れぬ恐怖を感じた。
そのせいかミルカとの待ち合わせ場所は
すぐ近くのはずなのに
僕は何かに怯えるように
その場を右往左往していたため
彷徨うように歩き回り、10分以上かかって
僕はようやく待ち合わせの公園に着いた。
しばらく探すがそこにミルカの姿はない。
仕方なくブランコに座って待っていた…
その時 背中に人の気配が!
振り返った時は遅かった。
僕が首筋に針を刺されたような衝撃を感じて
振り返ると、そこに立っていたのは
不敵な笑みを浮かべた一人の女性・・・
しかも彼女の服は血まみれ。
「兄さん、あんた生きてたんやな、残念やけどミルさ…いや、ミルカはもう手遅れやで」
「まさかあの時のミルちゃん宛の電話は…カナコか!今、俺に何をしたんや?」
え?
どう言うことだ?
僕は何を言ってるんだ?
何故…何故、僕は目の前の初対面の女性のことを
"カナコ"…そう呼んでいるんだ?
そして何故、カナコもまた僕を知っている?
そして何故僕を"兄さん"、そう呼ぶんだ?
カナコ?カナコだって?
そして失われたはずの僕の記憶の中で
その名前を聞いた時感じた
まるで"開かずの間"を開ける時のような
何とも表現し難い負の感情。
そんな気持ちを振り払おうとしばらく歩く、
そしてアパート周辺から
部屋に戻ろうとすると再び着信
今度はミルカからだ。
電話越しだが明らかに様子がおかしい
どうも泣いているようだ
しかも泣いているだけではない、
息も絶え絶えな感じで
まるで誰かから逃げているように思える。
「はぁ、はぁ…に、兄さん!今どこ?どこにいてますか?ちょっと話したい事が…いや、助けてください!助けて!!」
今、ミルカに何が起きている?
「はよ来て、兄さん!私、殺される!!」
「ミルちゃん、落ち着いて!すぐ行くから…まずはどこにいるか教えて!」
「公園…あの公園やねん、今」
「この前話してた『赤いブランコ』やな?」
「そう!兄さん、はよ!助けて!お願い…」
「ミルちゃん!」
ガチャ!ツーツーツー…
ここで電話が切れた、その公園なら
全力で走って向かえば数分で行ける。
ミルカのもとへ向かうのは当然のことながら
僕はこのアパート周辺から早く離れたかった。
今しがたひとつ、
思い出したくない記憶が甦ったのだ。
ここは以前、例の病院で見た夢のひとつ…
すれ違い様に老婆のゾンビが現れ、
いきなり襲われた場所にとても似ていた。
目覚めた時、とても夢とは思えないほど
あまりにも鮮明に覚えていて
しかも今、それと似た場所が存在していて
そこに僕自身が立っている事に
底知れぬ恐怖を感じた。
そのせいかミルカとの待ち合わせ場所は
すぐ近くのはずなのに
僕は何かに怯えるように
その場を右往左往していたため
彷徨うように歩き回り、10分以上かかって
僕はようやく待ち合わせの公園に着いた。
しばらく探すがそこにミルカの姿はない。
仕方なくブランコに座って待っていた…
その時 背中に人の気配が!
振り返った時は遅かった。
僕が首筋に針を刺されたような衝撃を感じて
振り返ると、そこに立っていたのは
不敵な笑みを浮かべた一人の女性・・・
しかも彼女の服は血まみれ。
「兄さん、あんた生きてたんやな、残念やけどミルさ…いや、ミルカはもう手遅れやで」
「まさかあの時のミルちゃん宛の電話は…カナコか!今、俺に何をしたんや?」
え?
どう言うことだ?
僕は何を言ってるんだ?
何故…何故、僕は目の前の初対面の女性のことを
"カナコ"…そう呼んでいるんだ?
そして何故、カナコもまた僕を知っている?
そして何故僕を"兄さん"、そう呼ぶんだ?
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