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Ⅱ. 夕焼けのブランコ
【愛憎渦巻く】
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突然音もなく玄関の引き戸が開き
出てきたのは見覚えのある顔の女性
僕とどこか似た面影
忘れていた記憶が一つ呼び起こされた。
それは数年前に他界した僕の父親の借金を苦に
ある日突然、家族の前から姿を消した
実の母親だった。
ボロボロの服を着て、灯りもつけずに
家の中を片付けている。
僕は何事もなかったように母親に話しかけた。
「もう、そろそろ帰ってきたら?」
「いや、私は近所の人にもお義母さんにも
合わせる顔がないし…」
「あれは誰のせいでもないし、自分を責めるのもどうかと思うけどな」
「私はもう帰れんよ、あの家には」
自分で言っておきながら、ふと気づいた。
「あれ」って何の事だ?例の借金のことか?
詳しいことは思い出せない
そして僕は再び母親に視線を戻した。
その姿があまりにも貧相だったからか
サヤカが
「これでおいしいものでも食べてください」
そう言って数枚の500円硬貨を渡す。
「ああ、もうそんな勿体ない、私なんかお金をもらえるような人間じゃないので」
そう言って硬貨を返そうとしたので
「あ、このお金、私落としました、誰か拾ってくれたらいいんですけど」
とぼけた感じでお金を床に置いていくサヤカ。
「この人には今仕事でお世話になってるんや…今回は遠慮せずにもらっとけば?」
僕はそう言い残して家を出る。
再び歩き始めて振り返ると、母親は外に出て
そのお金を通行人に渡そうとしていた。
「どこまでもお金、受け取らないつもりなんですね」
サヤカは寂しそうな目をしていた
そんな僕たちの後ろ姿を
手のひらを返すように振り返った母親の視線が
射るように凝視している事など
ニ人とも気づくはずもなく…
二人の後ろ姿を睨みながら母親が呟く。
「何だ、生きていたのか?しかも気づいていない?…記憶が消えている…のか?」
そしてその後ろから現れたもう一人の若い女性。
「そうみたいやな…それにあんなしょーもない女と仲良くして…サヤカ…!忘れてへんからな」
そう言うと二人は
再び無言であばら家の中へと姿を消した。
出てきたのは見覚えのある顔の女性
僕とどこか似た面影
忘れていた記憶が一つ呼び起こされた。
それは数年前に他界した僕の父親の借金を苦に
ある日突然、家族の前から姿を消した
実の母親だった。
ボロボロの服を着て、灯りもつけずに
家の中を片付けている。
僕は何事もなかったように母親に話しかけた。
「もう、そろそろ帰ってきたら?」
「いや、私は近所の人にもお義母さんにも
合わせる顔がないし…」
「あれは誰のせいでもないし、自分を責めるのもどうかと思うけどな」
「私はもう帰れんよ、あの家には」
自分で言っておきながら、ふと気づいた。
「あれ」って何の事だ?例の借金のことか?
詳しいことは思い出せない
そして僕は再び母親に視線を戻した。
その姿があまりにも貧相だったからか
サヤカが
「これでおいしいものでも食べてください」
そう言って数枚の500円硬貨を渡す。
「ああ、もうそんな勿体ない、私なんかお金をもらえるような人間じゃないので」
そう言って硬貨を返そうとしたので
「あ、このお金、私落としました、誰か拾ってくれたらいいんですけど」
とぼけた感じでお金を床に置いていくサヤカ。
「この人には今仕事でお世話になってるんや…今回は遠慮せずにもらっとけば?」
僕はそう言い残して家を出る。
再び歩き始めて振り返ると、母親は外に出て
そのお金を通行人に渡そうとしていた。
「どこまでもお金、受け取らないつもりなんですね」
サヤカは寂しそうな目をしていた
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手のひらを返すように振り返った母親の視線が
射るように凝視している事など
ニ人とも気づくはずもなく…
二人の後ろ姿を睨みながら母親が呟く。
「何だ、生きていたのか?しかも気づいていない?…記憶が消えている…のか?」
そしてその後ろから現れたもう一人の若い女性。
「そうみたいやな…それにあんなしょーもない女と仲良くして…サヤカ…!忘れてへんからな」
そう言うと二人は
再び無言であばら家の中へと姿を消した。
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