夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【既視感】

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 背中越しの会話は途切れることなく
僕たちは喋り続けていた。

「この辺の地理に詳しいんですね?」

「そう、何か懐かしい雰囲気がするねんな、ここ」

「え?そうなんです?」

「せやねん、何かここにこんなのあるんちゃうかな?なんて思て歩いたらほんまにあるとか」

「え?それってデジャブ的な?」

「ははは、そんな能力ないけどね」

「すごいですね!特殊能力やん」

サヤカは力が抜けている状態なのだろうか?

全体重を僕に委ねているらしく
アイドルで小柄な女性とは言えなかなか重い。

「サヤカちゃん、意外と…お…」

「『重たいな』とか言うたら背中の上で暴れますよ」 

「おも…ったより…軽…」

「えー、聞こえへんしー」 

束の間の穏やかな時間。

「それより何で兄さんは私を最初から『サヤカちゃん』て呼ぶんですか?他のメンバーやと親しくなるまでは『さん付け』か『名字』やのに」

「サヤカちゃんとは何か初めて会ったような気がしなくて、前にどこかで会ってたって言うか…」

この時、背中の上のサヤカの表情が
一瞬悲しそうな顔になったのは知る由もなかった。

「それもさっき言ってたのと関係あるんかもですね」

「あと、みんなが『サヤカちゃん』て呼んでる呼び方が好きなんで」

「もう『サヤカちゃん』て歳でもないのにね」

「またまたー!」

「ほんまに!この夏でもう26やねんから…アイドルとしては若くないねんて」

「確かに…」

「そこ!肯定したらあかんやろー!」

「ははは、ごめんごめん」

 そんな話をしながら10分ほど歩いただろうか?
小さな橋を渡ると目の前には小さな川が流れ

道の左側にもうひとつ橋が現れた
欄干が錆び付いた今にも壊れそうな橋…

その向こうに見えるのは
ボロボロのほったて小屋のようなあばら家。

この家は、僕が幼少期に祖母が住んでいた家と
似た雰囲気の場所に建っている。



まさか誰もいないだろうと思いながらも
気になったので橋を渡り

家に立ち寄ってみると…
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