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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【着信】

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「どないしたん?サヤカちゃん」

「実はアカリ、由良野さんに会えるのを楽しみにしてたんです」

「そうなんや?え?何で俺のこと?でも…だからってそこまで…」

「あのですね!兄さん…あ、由良野さん…との企画を実はアカリ…」

何とこの番組は最初から僕が参加する前提で
企画されていたのだと、この時初めて知った。

「え…えっ…と、言われても…」

「聞いてます…記憶を無くされてること。でもいつか思い出してくれたら、今、私の言ってることの意味がわかる思うんです」

「ご、ごめんなまだ何も思い出せなくて」

「いえ、私たちこそ無理なお願いしてしまって…」

アカリの死と僕の抜擢が何かしらの
因果関係で結ばれている?

それすら今の僕には理解不能だ。

しかしこの企画は
アカリが生前非常に楽しみにしていた、

その遺志を汲んでどうしても、と
運営に懇願したのがサヤカだった。

部屋の出口でそんな話をしていると
悲壮な表情をしたミルカが現れた。

「サヤカさん!私、もうイヤや!」

なだめるように肩を抱きサヤカは
ミルカを大部屋に連れて行くが

そのボルテージは下がることがない。

「サヤカさん!アカリちゃんはきっとあの『夕焼けのブランコ』の…犠牲に…」

「あんたまだそんな事言うてるんか。あれはただの都市伝説や」

何のことかわからないが
しばらく二人の会話を聞いていると

"夕焼けのブランコ"に
深い意味が込められているのはわかった。

 "夕焼けのブランコ"と言う言葉が聞こえると
突然その場にいたディレクターの顔色が豹変し

「何ムダ話を話してるんだ、さっさと曲を作らないか!」
と怒り始めた。

どうもスタッフもこの話題には
神経質になってる様子。 

「あ、大丈夫です、ミルには私の方から…」

そう言ってスタッフをなだめるサヤカ。

「すみません、お見苦しいとこをお見せしてしまって」

そう僕に謝るサヤカ、

不穏な雰囲気もサヤカの機転で
何とか事なきを得た。

サヤカは礼儀正しいだけでなく
リーダーシップもあり統率力があると感じた。

しかしミルカの怯え方が
例の電話以降、尋常ではない。

「兄さん、私は絶対にヤメた方がええと思うねん」

ことあるごとにそう口にして
僕にも同意を求めてくる。

しかしあそこまでミルカを怯えさせた着信…

あれは誰からの電話で
一体何のためにかかってきたのだろうか?

ミルカの一件を機にこの現場全体に
少しピリピリとした重い空気が流れ始めた

とてもメンバーに事情を聞けそうな
状況ではないので

僕も周囲の雰囲気に合わせて
深入りしないことにした、その時

「またや!またかかってきてる!」

静寂を裂くように隣室から
ミルカの悲痛な叫び声が聞こえた。

「何なん?あの人!私に何がしたいん?」

「あ!私行ってきます」

サヤカが立ち上ってミルカの部屋へ向かう

アカリの一件、ミルカへの度重なる不審な着信…
何となく嫌な予感がした。
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