夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅱ. 夕焼けのブランコ

【予期せぬ訪問者】

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 僕が山奥の一軒家で曲作りを始めてから
数日が過ぎたある深夜の事だった。

静寂を掻き消すように突然、
家の外で車のエンジン音が聞こえ
代行運転の軽自動車が家の前に横付けされた。

ここには僕一人しかいない、
送って来られる人などいないはずなのに。

車から出てきた運転手が言うには
「ここを指定されました」と。

車から降りてきたスーツ姿の男性が僕に言う。

ー あるアイドルグループと面識のある人が
こちらにいらっしゃると聞き

音楽に関する今回の企画に協力してほしいので
ここまで来ました。

現在、過去の記憶を失っている僕に
以前そのような接点があったかどうかなど
覚えているはずもないのだが

音楽の仕事と聞き
そう言う事なら喜んで、と快く引き受ける。

どうやらテレビ番組の企画で
" 過酷環境で曲を完成させるまで帰れない "
そんなロケがあるらしく

その番組への出演交渉のために
ここに来た、とのこと。

「え?俺がテレビに?」

「はい!悪い話じゃないと思うのですが」

恐る恐る内容を聞いてみる

 それは山の中の一軒家でメンバー全員協力のもと
1曲出来上がるまで続けると言う企画なのだとか。

参加者は「Choosen Ones」と名乗る
アイドルグループの数名、とのこと。

番組スタッフに同伴しているマネージャー曰く

過去に僕が地元の音楽イベントで
彼女たちの音響担当をした際に
メンバーから何かと好印象だったため

趣味の範疇で活動している程度の
全くもってアマチュアである僕に
アドバイザーとして協力してほしいとの事。

それならばもっと著名なミュージシャンに
依頼した方がよいのでは?

そう問い返すと

「それだと何だか面白くならないと思って…」

「メンバーも由良野さんとならぜひ!とのことですし」

「あ、それは光栄なことですが…」

「その方が番組として、面白いので」

バラエティ制作の良し悪しは僕にはわからないが
音楽のことなら何とかなるだろう

そしてこのChoosen Onesなるアイドルは
"Little Braver K"と言うプロダクションに
所属しているらしいのだが

よほど大きな事務所のようで
僕に提示されたギャラも破格の高額、
断る理由は何一つない。

あわよくば僕自身にとっても
恰好の飛躍の機会となるかも知れない、

これは正に降ってわいたような話だった。
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