夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅰ. ゾンビ大会

【夢と現実の・・・】

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「家族を探してください!助けてください!お願いします!」

誰にも届くことのない絶叫が
逢魔刻おうまがときのショッピングモールに響き渡る。

それが僕の声だったのか
他の誰かの声だったのかすら

既に僕にはどうでもいい事だった。

 そんな僕を見つけた白衣に身を包んだ集団が
突然僕の両腕を掴んだ、

「こちらに来てください!上からの命令なんです!」

そう言われると僕は羽交い締めにされたまま

シオンの安否は?ミユキとモモネは?
その行方すら知らぬまま車に乗せられ

強制的にある病院へと搬送されて行った。

そこで最後に見た景色は
クルクルと回る救急車の赤いランプ

それがやたらと印象的だった。


 ・・・と、いつもここで目が覚める。 

 これまで何度同じ夢を見ただろうか?

目を開くと真っ白な病室の天井が
真っ先に視界へ飛び込んでくる。

ここはとある街の総合病院

僕はこの暗い病室の中で
ただ寝て、起きて、食事をする…

そして繰り返される入念な精密検査
そんな変化のない日々が何週間も続いている。

 体のどこかが悪いのか、それすら知らない
そして過去の記憶も何一つない

家族、友人、それらにまつわる
全ての思い出が僕の中から消え去ってしまった。 

当然ながら、
何故僕がこの病院にいるのかもわからない。

 この病院で退屈な数ヶ月を過ごした後、
ようやく退院して社会復帰した僕は

病院の薦めで
小さな音楽事務所に所属することになった。

 既に年齢は30代半ばを過ぎているが
僕は10代の頃から音楽が好きだった、

本能的に体が覚えているのだろうか?
楽器は今も不自由なく使いこなせる…

入院中も病院でのチャリティイベントに参加して
ギターを弾いたりもした。

唯一残っていた記憶、それは
" 音楽と携わっていた事 "

昔取った杵柄のおかげで

曲を作りながらボランティア施設で
子供たちと共に歌を歌う、

そんな活動で細々と生計を立てていた。

 当然ながら毎日のように見る
実際にあったことなのか

ただの夢の世界の出来事なのか、
それすら見当もつかなかった。 

ただあまりにもリアルな夢を
何度も何度も繰り返し見る… 

そしてそれを起きてからも鮮明に覚えている。

その恐怖から逃げたい事もあって

敢えて"現実世界"へと
"現実逃避"したかったのだろう。
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