夢と現実の境界線のようなモノ

みつ光男

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Ⅰ. ゾンビ大会

【混合種 ーハイブリッドー】

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 アンナは話を続けた
実は看護師が手にしていたあの「注射」こそ
ゾンビを生み出す「新薬」なのだと。

もしも興味本意で注射などされようものなら…
その先に待ち受ける惨劇は容易に想像できるであろう。

「おおー!よかった!興味本位で近づかんといて」

「注射されとったら父さん今頃ゾンビやな」

 薬を投与されると
体内で極端に細胞が活性化した後、
肉体組織の壊死が始まり

人体と薬品との適合がなされてゆく。

その結果、
労働に必要な筋肉とほんの欠片ほどの感情
そして人間の最大の欲求、食欲のみが残された
" ゾンビの素 " が生まれる。

そして早ければ数時間で
全ての記憶が失われる代わりに

無尽蔵の体力と永遠の命が与えられ
休息も睡眠も摂らなくても動き続けられる
ゾンビが誕生するのだと言う。

 そして唯一残された欲求…
食欲を満たすためだけに生き物を襲い続ける。

その動きはまるで歩く死人…ではあるが
中には極端に進化した亜種も存在するらしい。

それが"ハイブリッドゾンビ"
その判別は外見だけでは無理だと言う。

襲われた時、人間と変わらぬその俊敏な動きから
見分けをつけるしかない。

ただヤツらに見つかって無事に逃げられたら、
の話ではあるが。

 表向きは製薬会社と言う肩書きのある組織が
人工的に作成したゾンビを利用して

暴利を貪らんとする…

それが"ゾンビ計画"なのだ。

「じゃあの人たち…施設の看護師とかは何でゾンビに食べられへんの?」

「少年、ええとこに気づいたな。実はアイツらもゾンビやねん」

「え?どう言うこと?」

「これはあくまでも憶測やけどな…」

 ゾンビの開発が進むにつれ、
この組織は" 理性を兼ね備えたゾンビ " を
生み出したのではないだろうか?

いわゆるハイブリッドゾンビの更なる進化形、

そうなるともう人間とゾンビの
見分けがつかなくなる。

「あいつらは死んだ人間を使って遊んでんねん!」

アンナの表情が怒りに震える。

「おかしいやろ、人として」

「しかし、あんな凶暴なゾンビを使いこなせる企業なんてあるんかいな?」

「それは、命の保障が必要ない場所…」

「戦地か…!」

「そ、主に世界の紛争地域、人を襲ってもいなくなっても気にも留められず…」

「逆らえば…ゾンビだから…」

「パンっ!とすればいいだけ」

そう言ってアンナは指で引き金を引くポーズをした。

「ってことは人間兵器の都市伝説は…」

「伝説やなかった、ってわけやねん」
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