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Ⅰ. ゾンビ大会

【リアルゾンビパラダイス】

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 1階にある下駄箱のすぐ隣には
螺旋状になっている非常階段がある。

ただ万が一の事態が起きて上に逃げたとしても
その先のドアが開かなければ
これ以上逃げ場所はない。

ゾンビ映画でよく観る
ドアノブをガチャガチャ回している間に
追い付かれガブリっ!なんてのがオチだ。

ナイフを持ったサイコパスなら
後ろからグサッと刺されるパターン…

いずれにしても即効ジ・エンド。

最後の手段、正面玄関から強行突破?
命がいくつあっても足りない。

それならば下駄箱を横切った先にある
渡り廊下になっている別棟へ逃げるか?

その手前左側には
『視聴覚室』と書かれた部屋もある。

 螺旋階段と正面玄関を除くと
別棟の体育館に続く渡り廊下と視聴覚室、

逃亡、または身を潜める選択肢は2つ。

体育館に行くには
一旦外に出なければいけない。

それは危険だと本能的に察した、

たただならぬ気配の主たちが
僕の気配を察して正面玄関前から
裏側の体育館に押し寄せてきたとしたら…

そしてその前にシオンと合流して
この情報を伝えないと

お互いが「たくさんのかの存在」から
気づかれる前に…

 シオンがこちらに向かって来てないだろうかと
一旦、下駄箱から廊下近くまで戻った時
別棟の方から聞こえた叫び声と大勢の足音。

ついに現れた?
ゾンビか?

しかし館内放送などはない。

何も知らない他の参加者たちはまだ
2階、3階あたりをうろついているのだろう

誰一人として1階の非常事態を知る者はいない。

"何か"が起きている、いやこれは
誰かが何かを起こしている?
もうゲームを楽しんでいる余裕などなかった。

一刻も早く
シオンと再会してここを脱出しなければ…
それくらい身の危険を感じた

その時だった

「うわー!!!」

 静寂を裂くように遠くから大きな声がして
たくさんの人がこちらに向かって近づいてきた。

声がした別棟の方を見ると
顔だけゾンビのメイクをして
熊やウサギの着ぐるみを着た集団が大挙して

物凄い形相で逃げるように走っている。

ただ、それは明らかに"人間" だった。
安っぽいメイクで "ゾンビの顔" をしてはいるが

参加しているであろう小さな子供たちに
必要以上に怖がられないよう
着ぐるみ姿になった安っぽい扮装だ。

 その姿を見た瞬間、改めて悟った
施設の外にいるのはマジでヤバいヤツらなんだと。

" ゾンビメイクの着ぐるみたち " は
室内の僕に気づくことなく
誰かから逃げるように走り去って行った。
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