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Ⅰ. ゾンビ大会
【奇妙な世界へようこそ】
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独特の張りつめた空気感に思わず口にした
「緊張するなあ」
「まだ何にも出てきてないやん」
「それまでが緊張するんやて…」
「父さん、意外と小心者やな」
二人で話していると白衣の行列の中には数人、
女性看護師さんらしき人がいて
手に注射器を持って歩きながら
「注射の時間ですよ、ご希望の方はどうぞ」
そう言っているのが聞こえる。
「父さんこう言うの好きやろ?キレイな看護師のお姉さんに注射してもらったら?」
「イヤや、痛いのに」
「ほんまにはせんやろ?」
「でも、見てや父さん!」
シオンは急に声を潜めて僕にこう言った。
「あの注射器、本物の針が…ついてる」
嘘だろ?
ゲームの演出に本物の注射器なんか使うのか?
一瞬、背筋に冷たいものが走った。
そんな話をしながら廊下の端に寄って
その " 奇妙な行列 " を見ていると
突然廊下沿いの部屋のドアが開き
ふらりと制服姿の女の子が出てきた。
「ごめん、ちょっとうるさいかも…」
そう呟きながら、廊下に置かれている
黒板クリーナーの電源を入れて使い始めた。
おそらく小学校を利用している名残りで
クリーナーがそのまま設置されているのだろう。
それにしてもこの行動は少し不可解だ
静かな館内にモーター音が鳴り響く。
「あの人、怪しいよね」
するとシオンの声が聞こえたのか
女の子がこっちを見て
「大丈夫、生きてる…生きてる…から」
消え入りそうな声でそう言うと
部屋に戻ろうとする。
ひどく顔色が悪いので、まさか…と思いつつ
「ゲーム出てんの?もしかして、ゾ・・・」
すると彼女は意外にも早く
僕の質問を遮るように呼び掛けに応じてくれた。
「私はただのエキストラなの、名前は塗師 麻央」
「ぬしえ?変わった名字やなぁ?」
「そう、私の名前は塗師麻央…私の名前は…」
女の子は何度も自分の名前を繰り返すと
そのまま部屋に戻っていった。
「名前聞いたわけやないんやけどな」
「これもきっと演出上のセリフなんやろ?」
そしてあの "行列" と"謎の女の子" に
何かヒントが隠されていると確信した僕たちは
行列追跡と女の子の謎を探るため
あらかじめ配られている館内の地図を片手に
「じゃ、ここで二手に別れて様子を見ながら
1階の下駄箱で合流しよか」
そうしてシオンは目の前の階段から2階へ、
僕は一人、謎の行列をチェックしながら
廊下の突き当りまで歩き
もう一つの階段から2階へと向かった。
こうして施設の両端からそれぞれ階段を下って
1階の下駄箱を目指した。
「緊張するなあ」
「まだ何にも出てきてないやん」
「それまでが緊張するんやて…」
「父さん、意外と小心者やな」
二人で話していると白衣の行列の中には数人、
女性看護師さんらしき人がいて
手に注射器を持って歩きながら
「注射の時間ですよ、ご希望の方はどうぞ」
そう言っているのが聞こえる。
「父さんこう言うの好きやろ?キレイな看護師のお姉さんに注射してもらったら?」
「イヤや、痛いのに」
「ほんまにはせんやろ?」
「でも、見てや父さん!」
シオンは急に声を潜めて僕にこう言った。
「あの注射器、本物の針が…ついてる」
嘘だろ?
ゲームの演出に本物の注射器なんか使うのか?
一瞬、背筋に冷たいものが走った。
そんな話をしながら廊下の端に寄って
その " 奇妙な行列 " を見ていると
突然廊下沿いの部屋のドアが開き
ふらりと制服姿の女の子が出てきた。
「ごめん、ちょっとうるさいかも…」
そう呟きながら、廊下に置かれている
黒板クリーナーの電源を入れて使い始めた。
おそらく小学校を利用している名残りで
クリーナーがそのまま設置されているのだろう。
それにしてもこの行動は少し不可解だ
静かな館内にモーター音が鳴り響く。
「あの人、怪しいよね」
するとシオンの声が聞こえたのか
女の子がこっちを見て
「大丈夫、生きてる…生きてる…から」
消え入りそうな声でそう言うと
部屋に戻ろうとする。
ひどく顔色が悪いので、まさか…と思いつつ
「ゲーム出てんの?もしかして、ゾ・・・」
すると彼女は意外にも早く
僕の質問を遮るように呼び掛けに応じてくれた。
「私はただのエキストラなの、名前は塗師 麻央」
「ぬしえ?変わった名字やなぁ?」
「そう、私の名前は塗師麻央…私の名前は…」
女の子は何度も自分の名前を繰り返すと
そのまま部屋に戻っていった。
「名前聞いたわけやないんやけどな」
「これもきっと演出上のセリフなんやろ?」
そしてあの "行列" と"謎の女の子" に
何かヒントが隠されていると確信した僕たちは
行列追跡と女の子の謎を探るため
あらかじめ配られている館内の地図を片手に
「じゃ、ここで二手に別れて様子を見ながら
1階の下駄箱で合流しよか」
そうしてシオンは目の前の階段から2階へ、
僕は一人、謎の行列をチェックしながら
廊下の突き当りまで歩き
もう一つの階段から2階へと向かった。
こうして施設の両端からそれぞれ階段を下って
1階の下駄箱を目指した。
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