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Ⅰ. ゾンビ大会

【過疎の街】

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 車1台が何とか離合出来るくらいの
狭い国道脇にある自動販売機、

決してバリエーションが多いとは言えない
ジュースを選ぶのに散々悩みながら

「すんごい田舎だよね」

娘のモモネが半ば呆れ顔でそう呟いた。

 ここは僕の生まれ故郷である小さな街だ
自宅から車で5時間、夏休みの家族旅行感覚で
墓参りを兼ねて数年ぶりに帰省している。

物心ついてから子供たちが
この街に来たことはない、

目の前は迫り来るような山の木々が
足元には清流が視界に飛び込んでくる、
大自然の圧迫感のみが強調された過疎の街。

観光地があるわけでもなく、
唯一のレジャー施設と言えば

この街の全てを網羅していると言わんばかりの
場違いなほどに大きなショッピングモール。

 その施設に隣接するように建つ
廃校となった小学校を利用して
"ゾンビ大会"なるイベントが開催されると知った。

物語の舞台は、ある病院…と言う設定

古びた総合病院で謎の研究をしている途中
人間がゾンビ化してしまい

そのゾンビたちを倒しながら謎を解いて脱出する
ちょっとしたホラーサバイバルゲーム。

確かに廃校で未使用の学校など
ホラーゲームにはうってつけの舞台だ。

 まるで収容施設を連想させるような
建物周辺の通路にまで張り巡らされた
頑丈な金網と有刺鉄線が
禍々まがまがしい雰囲気を更に増幅させる。

ゾンビ大会・・・だって?

あまりに陳腐なネーミングのイベントではあるが
他に余興もない、過疎の街

暇つぶしのつもりで僕は高校1年生の息子、
シオンと二人で参加することにした。

暇つぶし、とは言いながらも数日前に
シオンが小学校の頃に二人で観た
ホラー映画がテレビで久しぶりに放送され

懐かしさと共に妙な冒険心をくすぐられた。

その間、妻ミユキとモモネは
アウトレットを扱うショッピングモールで
買い物をして時間をつぶす事になり

途中から二手に分かれた。

参加者全員が集められた3階のスタート地点、
まずは人がゾンビ化した原因を調べるため

施設内に点在しているキーマンから情報を収集しつつ
更にはゾンビの魔の手から逃れながら

最終的には生きてこの場を抜け出すのが
このイベントの最終的な目的

もちろん "ゲームオーバー" となっても
命を取られるわけではない。

巨大な手術室を思わせる
真っ白な壁の広い部屋に集められた
大勢の参加者たち

このイベントホールがスタート地点のようだ。
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