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序章. 0と1との境界線

【回顧録 #2」

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 そして5年の歳月が流れ
僕はアラフォーと呼ばれる世代の仲間入り、

娘モモネは成人して社会人の一員となり
シオンも高校に進学した。

共にホラー映画を観たあの頃ほどではないが
シオンとは今も仲の良い親子であることは間違いない。

 そんな当たり前の日常の中、
忘れもしない8月の猛暑が続くある日

家族で僕の生まれ故郷へ向かうことになった。

子供たちは僕が幼少期を過ごした
この片田舎の街を知らない。

が、この時は考えてもいなかった

まさかあの街に行ったことで
あのような事件に巻き込まれるなどと。

そして故郷の末路や僕自身の生い立ち、
更には複雑な家庭環境を知ることになろうとは。

正にあの街の入り口は…境界線だった
そう、夢と現実の境界線。

今から話す物語は僕がこれまで体験した
どんな出来事よりも
複雑怪奇で謎に満ちたストーリー

これが現実なのか、虚実なのか
未だにはっきりとしていない。

ただひとつ間違いないのは
僕たちはあの日、確かにあの街に足を踏み入れた

そして"出会ってしまった"ことで
不自然に回り出した運命の歯車…

全ての物語はそこから始まることになる。
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