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21話 それは私だって望むもの2
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「マリーちゃんを見てね、是非養子にって言っている貴族の方なの。家柄もとても良くて、何不自由ない生活が出来るわ」
張本人の私を置いてけぼりで、婚約者さんはペラペラと話していく。よく回る口だこと。
だけど貼り付けられた笑みはそのままだ。
なにか、何か裏にある。
そもそも私の存在って機密なはずなのでは? ブラッドリーさんの養子、となっているのに養子を手放すなんてどう考えても良くないだろ。
そこまで考えて、もしかして、の仮説が生まれる。
昨日の事件。貴族。私の存在。ホーエンさんの忠告。
――あ。なるほど。
「とっても穏やかな人でね、マリーちゃんも絶対に気にい――」
「私、ブラッドリーさんの養子ですよ?」
「ええ。知っているわ。あなたが養子になった理由、レオさんから――」
「嘘、ですよね?」
婚約者さん見つめる私。彼女は目を大きく見開いて言葉を止める。
私は組織の人間として管理されている。子供だから刑務所にも入れられない。
特別な管理下で、私は保護という形で監視されている。
まあ、なんでここまで自由性が高いのかは置いておこう。私も知らない。知恵袋に聞いてほしい。
そんな私の情報をみすみす外に出せばどうなる?
もしかしたら、組織の情報を抜き取ろうとする奴が居るかもしれない。
殺される、ならまだマシだ。
利用されたら、それこそが脅威なはず。
だから私の情報はそう簡単に易々と手に入るものでもないし、漏らせるものでもない。
ましてやあの彼、レオ・ブラッドリーという男がそんな事をするはずがない。
それはもちろんハマーさんや仲間のみんなもだ。
ここまでボロを出してくれると、仮説が段々と確信的なものへと変わる。
どうして私の監視があの事件の後なのに、厳しくならなかったか。今日の監視は誰も居ないのか。なんで今日は私の頭を彼は撫でてくれなかったのか。
今しがた全部、納得がいった。
「貴女のご両親さん、たしか評議員、ですよね。それに貴族の上層部と仲良しの」
「……え?」
「なるほど、結構です。あなたはそのご両親から私の情報を強請った。そうでは?」
「ち、がうわ。私はレオさんから――」
「彼がそんな事をするわけがない」
予想以上に冷え切った声が出た私に、婚約者さんは目を丸くして見つめるだけだ。
なんで私はこんなに怒っているんだろう。
省エネのフィオナの名が泣くぞ。
私たちが所属する場所なんて、疑われてなんぼだし、そもそもこんな事で怒りを露わにするようではやっていけない。
正確な情報が欲しいならば自分の気持ちを隠せ。
ブラッドリーさんが口を酸っぱくして言っている。
きっと今の私を見たら、呆れられるだろう。それでよく情報部隊が務まるな、と言われてしまう。
なのになんで――。
「レオ・ブラッドリーという人はそういう事をしない」
なんで私は彼の事となると、こんなにもざわつくんだろう。
おかしい。指輪を見てから、ずっとおかしいんだ。
今までのんびりと構えていたのに。ブラッドリーさんが指輪を大切そうに、愛おしそうに見つめていたあの表情が、今も脳裏から離れてくれない。
いつか戻ったら、なんてそんな事を思っていた私は、どうしてかあの時から彼に対して変わった。
それは恋というものに。
今までそんな感情を知らなかった私としては、とんでもなく厄介な存在。
焦りにも似たような、苦しくて落ち着かなくて痛い。そんな感情だ。
だけどなんで今更? おかしいでしょ? それならもっと前からあっても良かったんじゃないの?
いざ他人の誰かのものになると分かった途端に焦ってさ。
グルグルと回る感情は、消化しきれない何かが残っているようで気持ち悪い。
ねっとりと絡みつくような嫌悪感。それは目の前の婚約者さんと会ってから更に増す。
その不快感もあって顔をしかめる私に、婚約者さんは一度にっこりと笑って――。
「どうして、邪魔をするの」
憎しみのこもった瞳で私を睨みつけた。
仮面が剥がれ落ちるとは、まさにこの事だろう。ここまで見事だと、感心してしまうほどだ。
僅かに震える声で私を睨みつける彼女は、子供に向けていいような表情じゃない。
私が子供じゃなくてよかったね。ギャン泣きされても咎められないよ。
その表情を私はただそれを見つめるだけ。
「私は、レオさんと幸せになれるのに」
「そうなんですね」
「ええ、ええ、そうよ、そうなのよ。だけどっ! あんたのせいよ!」
掠れる声の中で鋭い言葉は私に向けられたもの。その彼女の目はポタリポタリと涙が溢れながらも、まるで親を殺された子供のような形相で私を見ている。
私のせいだと?
冗談よしこちゃんだ。
見た目は子供、中身は三十路の私が?
まさかこの人、ブラッドリーさんのことをロリコンだと思っているの?
ちょっとブラッドリーさん、これ、かなりヤバイのでは~? どんなに自分のことを後回しにするブラッドリーさんだとしても、これは放置していい案件ではないんだけど。
それとも何か?
ブラッドリーさんは婚約者さんと結婚出来ないのは私のせいだと言うのか?
「何を言ってるんですか」
嘲笑にも似た言葉はつい溢れた本音だ。
どんなにブラッドリーさんの方が、家事も料理も仕事も全て上回っていたとしても、ブラッドリーさんはそんな事で結婚を足踏みしないだろう。
だから理由は私だと言うのか?
寝言は寝て言ってほしいね。
私が彼の幸せをどうこう出来るわけないんだから。
婚約者さんは表情を変えるどころか、更に険しくする。
「彼はね、ずっと私に会えない仕事だった。やっと会えたと思ったけど、私は相手にされない。いつも後回し」
「ブラッドリーさんは忙しいですから」
「そうね、ええ、そうよ。だけど、あんたに会う時間は作った」
ポツリと呟かれた言葉は暗くドロリとした感情にも似たものだ。絶望感、に近いかもしれない。
婚約者さんは自嘲するように笑うけど、涙は止まらない。
「突然出てきたあんたはレオさんの一番を容易く奪っていった。私と会う時は事務的なもの。相手にされてない、って分かってる」
「……は? え、いや、ちょっと待ってください。あなたはブラッドリーさんの婚約者では……」
「私が親に頼み込んだの。やっとあの人の隣にあの女が居なくなって、喜んだのもつかの間。あんたが現れた……!」
テーブルの上で固く握られた手は、ぶるぶると震えている。爪が手の甲に食い込みそうだ。俯いてしまった婚約者さんの表情は分からない。
だけどきっと、彼女は今もブラッドリーさんの事を思っているんだろう。
そんな彼女を見て、私は少しずつ自分の足場が崩れるかのように余裕が無くなっていくのが分かる。
どうして。どういうこと。なんで。
そんな言葉が埋め尽くされる。
彼女は誰よりもブラッドリーさんの隣にいる権利がある。
なのに彼女は私を羨んでいる。
誰よりも隣に居られるのに、それなのに、私を羨んでいる。
ゆっくりと上げられる顔と目が合う。
「どうして……私はいつも二番手なの?」
弱り切って、ゆらゆらを揺らめく瞳。
婚約者、というのも微妙な立場なのかもしれない。
じゃあ彼が大切そうに持っていた指輪は、いったい誰のもの?
それは彼女がつけている指輪が証拠なんじゃないの?
ブラッドリーさんとお揃いの指輪。
なのに彼女は自分よりも私を羨む。
どうして、どうしてそんなの。
今にも言葉になりそうな気持ちを鎮めるように、小さく息を吐いて一度目を閉じる。
落ち着け。私にはやらなきゃいけない事があるだろ。
「……だから私の事を調べたんですか?」
「ええ、そうよ。ブラッドリーさん、なかなか自分の家に帰ってないから」
「その時に私の事を知ったんですか?」
「あんたがどんな子供かは知らないけど、ブラッドリーさんが所属しているところで管理されてるって教えてもらったの」
「……なるほど」
「だそうですよ、ブラッドリーさん」
伏せていた目を上げて、彼女の奥、つまりは喫茶店の奥へと目線をやる。
婚約者さんは驚いた表情で固まっているなかで、ゆっくりと近付いてくるのはブラッドリーさんとハマーさん。
表紙はなく、ただ婚約者さんを見下ろしている。仕事の時の顔だ。
ブラッドリーさんの登場に、婚約者さんは顔を青くして席から立ち上がる。
「なん、で……」
「最初から居たんだ。マリーに接触してくるのは分かっていたからな」
「この子は、囮……?」
ゆっくりと私の方に目線を戻す婚約者さんに、私はただ見つめるだけだ。
数秒間見つめ合っていると、呆然とした表情から彼女は力なく笑った。
「結局、私はどんなに頑張っても二番手なんだね」
その言葉に出かかった言葉を飲み込む。
無言の私に、ブラッドリーさんは婚約者さんの腕を掴んだ。
「詳しい話を機関で聞かせてもらう」
ハマーさんに連れて行くよう指示を出す。きっと外には他の機関の人が居るんだろう。
彼女は捕まることはないけど、きっと彼女に情報を提供した人物は厳しく罰せられるだろう。それは今何か企んでいる貴族へと。
これは貴族内部を洗いざらいにする足がかりとなるはずだ。
そしてブラッドリーさんとの婚約も無しになるだろう。
彼は最初からきっと婚約者さんを利用していただかに過ぎない。
彼にとって、大切なものとはそういう事なのだ。
「すまなかった」
「いえ、気にしないでください」
「マリーのおかげだ。ありがとう」
お礼なんて言われる筋合いはないのに。仕事なのだから。
もしあの婚約者さんが自分の立場に満足していれば。きっとブラッドリーさんと結婚出来たのだろう。
欲しがり過ぎたのだ。彼女は。
彼女は私を羨んだ。
でも私は彼女が羨ましくて仕方がない。
張本人の私を置いてけぼりで、婚約者さんはペラペラと話していく。よく回る口だこと。
だけど貼り付けられた笑みはそのままだ。
なにか、何か裏にある。
そもそも私の存在って機密なはずなのでは? ブラッドリーさんの養子、となっているのに養子を手放すなんてどう考えても良くないだろ。
そこまで考えて、もしかして、の仮説が生まれる。
昨日の事件。貴族。私の存在。ホーエンさんの忠告。
――あ。なるほど。
「とっても穏やかな人でね、マリーちゃんも絶対に気にい――」
「私、ブラッドリーさんの養子ですよ?」
「ええ。知っているわ。あなたが養子になった理由、レオさんから――」
「嘘、ですよね?」
婚約者さん見つめる私。彼女は目を大きく見開いて言葉を止める。
私は組織の人間として管理されている。子供だから刑務所にも入れられない。
特別な管理下で、私は保護という形で監視されている。
まあ、なんでここまで自由性が高いのかは置いておこう。私も知らない。知恵袋に聞いてほしい。
そんな私の情報をみすみす外に出せばどうなる?
もしかしたら、組織の情報を抜き取ろうとする奴が居るかもしれない。
殺される、ならまだマシだ。
利用されたら、それこそが脅威なはず。
だから私の情報はそう簡単に易々と手に入るものでもないし、漏らせるものでもない。
ましてやあの彼、レオ・ブラッドリーという男がそんな事をするはずがない。
それはもちろんハマーさんや仲間のみんなもだ。
ここまでボロを出してくれると、仮説が段々と確信的なものへと変わる。
どうして私の監視があの事件の後なのに、厳しくならなかったか。今日の監視は誰も居ないのか。なんで今日は私の頭を彼は撫でてくれなかったのか。
今しがた全部、納得がいった。
「貴女のご両親さん、たしか評議員、ですよね。それに貴族の上層部と仲良しの」
「……え?」
「なるほど、結構です。あなたはそのご両親から私の情報を強請った。そうでは?」
「ち、がうわ。私はレオさんから――」
「彼がそんな事をするわけがない」
予想以上に冷え切った声が出た私に、婚約者さんは目を丸くして見つめるだけだ。
なんで私はこんなに怒っているんだろう。
省エネのフィオナの名が泣くぞ。
私たちが所属する場所なんて、疑われてなんぼだし、そもそもこんな事で怒りを露わにするようではやっていけない。
正確な情報が欲しいならば自分の気持ちを隠せ。
ブラッドリーさんが口を酸っぱくして言っている。
きっと今の私を見たら、呆れられるだろう。それでよく情報部隊が務まるな、と言われてしまう。
なのになんで――。
「レオ・ブラッドリーという人はそういう事をしない」
なんで私は彼の事となると、こんなにもざわつくんだろう。
おかしい。指輪を見てから、ずっとおかしいんだ。
今までのんびりと構えていたのに。ブラッドリーさんが指輪を大切そうに、愛おしそうに見つめていたあの表情が、今も脳裏から離れてくれない。
いつか戻ったら、なんてそんな事を思っていた私は、どうしてかあの時から彼に対して変わった。
それは恋というものに。
今までそんな感情を知らなかった私としては、とんでもなく厄介な存在。
焦りにも似たような、苦しくて落ち着かなくて痛い。そんな感情だ。
だけどなんで今更? おかしいでしょ? それならもっと前からあっても良かったんじゃないの?
いざ他人の誰かのものになると分かった途端に焦ってさ。
グルグルと回る感情は、消化しきれない何かが残っているようで気持ち悪い。
ねっとりと絡みつくような嫌悪感。それは目の前の婚約者さんと会ってから更に増す。
その不快感もあって顔をしかめる私に、婚約者さんは一度にっこりと笑って――。
「どうして、邪魔をするの」
憎しみのこもった瞳で私を睨みつけた。
仮面が剥がれ落ちるとは、まさにこの事だろう。ここまで見事だと、感心してしまうほどだ。
僅かに震える声で私を睨みつける彼女は、子供に向けていいような表情じゃない。
私が子供じゃなくてよかったね。ギャン泣きされても咎められないよ。
その表情を私はただそれを見つめるだけ。
「私は、レオさんと幸せになれるのに」
「そうなんですね」
「ええ、ええ、そうよ、そうなのよ。だけどっ! あんたのせいよ!」
掠れる声の中で鋭い言葉は私に向けられたもの。その彼女の目はポタリポタリと涙が溢れながらも、まるで親を殺された子供のような形相で私を見ている。
私のせいだと?
冗談よしこちゃんだ。
見た目は子供、中身は三十路の私が?
まさかこの人、ブラッドリーさんのことをロリコンだと思っているの?
ちょっとブラッドリーさん、これ、かなりヤバイのでは~? どんなに自分のことを後回しにするブラッドリーさんだとしても、これは放置していい案件ではないんだけど。
それとも何か?
ブラッドリーさんは婚約者さんと結婚出来ないのは私のせいだと言うのか?
「何を言ってるんですか」
嘲笑にも似た言葉はつい溢れた本音だ。
どんなにブラッドリーさんの方が、家事も料理も仕事も全て上回っていたとしても、ブラッドリーさんはそんな事で結婚を足踏みしないだろう。
だから理由は私だと言うのか?
寝言は寝て言ってほしいね。
私が彼の幸せをどうこう出来るわけないんだから。
婚約者さんは表情を変えるどころか、更に険しくする。
「彼はね、ずっと私に会えない仕事だった。やっと会えたと思ったけど、私は相手にされない。いつも後回し」
「ブラッドリーさんは忙しいですから」
「そうね、ええ、そうよ。だけど、あんたに会う時間は作った」
ポツリと呟かれた言葉は暗くドロリとした感情にも似たものだ。絶望感、に近いかもしれない。
婚約者さんは自嘲するように笑うけど、涙は止まらない。
「突然出てきたあんたはレオさんの一番を容易く奪っていった。私と会う時は事務的なもの。相手にされてない、って分かってる」
「……は? え、いや、ちょっと待ってください。あなたはブラッドリーさんの婚約者では……」
「私が親に頼み込んだの。やっとあの人の隣にあの女が居なくなって、喜んだのもつかの間。あんたが現れた……!」
テーブルの上で固く握られた手は、ぶるぶると震えている。爪が手の甲に食い込みそうだ。俯いてしまった婚約者さんの表情は分からない。
だけどきっと、彼女は今もブラッドリーさんの事を思っているんだろう。
そんな彼女を見て、私は少しずつ自分の足場が崩れるかのように余裕が無くなっていくのが分かる。
どうして。どういうこと。なんで。
そんな言葉が埋め尽くされる。
彼女は誰よりもブラッドリーさんの隣にいる権利がある。
なのに彼女は私を羨んでいる。
誰よりも隣に居られるのに、それなのに、私を羨んでいる。
ゆっくりと上げられる顔と目が合う。
「どうして……私はいつも二番手なの?」
弱り切って、ゆらゆらを揺らめく瞳。
婚約者、というのも微妙な立場なのかもしれない。
じゃあ彼が大切そうに持っていた指輪は、いったい誰のもの?
それは彼女がつけている指輪が証拠なんじゃないの?
ブラッドリーさんとお揃いの指輪。
なのに彼女は自分よりも私を羨む。
どうして、どうしてそんなの。
今にも言葉になりそうな気持ちを鎮めるように、小さく息を吐いて一度目を閉じる。
落ち着け。私にはやらなきゃいけない事があるだろ。
「……だから私の事を調べたんですか?」
「ええ、そうよ。ブラッドリーさん、なかなか自分の家に帰ってないから」
「その時に私の事を知ったんですか?」
「あんたがどんな子供かは知らないけど、ブラッドリーさんが所属しているところで管理されてるって教えてもらったの」
「……なるほど」
「だそうですよ、ブラッドリーさん」
伏せていた目を上げて、彼女の奥、つまりは喫茶店の奥へと目線をやる。
婚約者さんは驚いた表情で固まっているなかで、ゆっくりと近付いてくるのはブラッドリーさんとハマーさん。
表紙はなく、ただ婚約者さんを見下ろしている。仕事の時の顔だ。
ブラッドリーさんの登場に、婚約者さんは顔を青くして席から立ち上がる。
「なん、で……」
「最初から居たんだ。マリーに接触してくるのは分かっていたからな」
「この子は、囮……?」
ゆっくりと私の方に目線を戻す婚約者さんに、私はただ見つめるだけだ。
数秒間見つめ合っていると、呆然とした表情から彼女は力なく笑った。
「結局、私はどんなに頑張っても二番手なんだね」
その言葉に出かかった言葉を飲み込む。
無言の私に、ブラッドリーさんは婚約者さんの腕を掴んだ。
「詳しい話を機関で聞かせてもらう」
ハマーさんに連れて行くよう指示を出す。きっと外には他の機関の人が居るんだろう。
彼女は捕まることはないけど、きっと彼女に情報を提供した人物は厳しく罰せられるだろう。それは今何か企んでいる貴族へと。
これは貴族内部を洗いざらいにする足がかりとなるはずだ。
そしてブラッドリーさんとの婚約も無しになるだろう。
彼は最初からきっと婚約者さんを利用していただかに過ぎない。
彼にとって、大切なものとはそういう事なのだ。
「すまなかった」
「いえ、気にしないでください」
「マリーのおかげだ。ありがとう」
お礼なんて言われる筋合いはないのに。仕事なのだから。
もしあの婚約者さんが自分の立場に満足していれば。きっとブラッドリーさんと結婚出来たのだろう。
欲しがり過ぎたのだ。彼女は。
彼女は私を羨んだ。
でも私は彼女が羨ましくて仕方がない。
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