ダメな男

岡倉弘毅

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マスター

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 「ばっかじゃないの、アンタ」

 お気に入りのカフェ。マスターは真っ赤な唇からこっぴどい言葉を吐き出す。

「俊のやつ、アンタの体使ってオナってるだけでしょ」

 きれいな顔とのギャップが半端ない……

「俊のどこが良いの? アンタが好きなのはルックスだけじゃないの?

 アンタって好きになる男、みんなルックスが似通っててわかりやすいってか……

 もっと周り見なさいよ。本当にいい男はいくらでもいるのに、ろくでも無い奴ばっか選んで」

「マスター、ちょっと声下げてくんない?」

「他にお客さんはいないんだから良いでしょ」

「真咲君がいるじゃないかよ」

「真咲だってアンタがバカだって知ってるから大丈夫よ」

「何がどう大丈夫なんだよ」

 ぼやいてみるが、まったくもって相手にしてくれない。

 真咲君は可愛い顔と華奢な体つきからは考えられない勢いで、フライパンを振りながらチキンライスを作っている。

 九割九分客は男。メニューはナポリタン、オムライス、ハンバーグ、カレー……つまりは男の好きなメニューばかり。

 男の味覚ってのは男の子からほとんど変化しないって、マスターの奥さんが言ったのだとか……

 女はこんな料理、食べたければ自分で作るわ。と……

 男っていつまで経っても子供よね。猫だって犬だって、ハムスターだって男の子は甘えん坊。

 とか言いながら、息子が甘えてくるのを大喜びしてんだよね。って、愚痴なのか惚気なのかわからないこと言っていた。

 薄い桃色のシャツに白いパンタロン。踵の高い靴を履いているから180は越えて見える。小柄な真咲君とは顔一つ分違う。

 金色の輪にスワロフスキーのピジューがぶら下った大ぶりのイヤリング、赤い口紅。

 この格好で、ノンケの妻子持ちってんだから恐れ入る。

 髪を短くしているのは、子供たちの前では普通のパパをしているからなのだとか。

 髪を長くしたらさぞかし。と思わないでもない。

 ほら、80年代から活躍している三人組のアーティストの一人が、宝塚張りの派手さで長髪で、きれいなのになぜか、男らしい。あんな感じ。

「じゃあ、俺が真咲君に惚れたら、橋渡ししてくれるっての?」

 マスターは俺を、ぎろりと睨んだ。

「冗談じゃないわ。そんなこと言ったら、出禁喰らわすからね」

 どうしろってのよ……
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