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19話 叔父さん
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これは後日、叔母さんから聞いた話。
出張から帰った叔父を叔母は自宅で待っていた。
もともと、叔母とは正反対でメンタルの弱い叔父は叔母の予想では卒倒するか、逃げ出すか、泣き出すか...。
まあ、どうやってもそうとうパニックになるだろうと踏んでいた。
ところが、予想に反して叔母が自宅のリビングに居たのを見ても意外と冷静だった叔父は、次の日の朝まで全て夢の中の出来事だと思っていたらしい。
異世界についての説明もすんなり聞いていたからおかしいと思ったんだ。
そう言って後日叔母さんはぼやいていた。
次の日の朝、叔母がまだ居るのを見て今度こそ卒倒した叔父は、気がつくと叔母にしがみついて泣き出しやっと叔母の言うことを信じた。
異世界についてはともかく叔母が生きていると言うことは信じたらしい。
そして、自分も叔母と一緒にこちらの世界に来ると言い張ったらしいが、叔母が仕事を投げ出して来るのは駄目だと突っぱねた。
と言うのも、叔父の仕事はなかなか直ぐに代わりがきくものでも無かったからなのだが。
「まったく!直ぐにでも仕事を放り出してこっちに来るとか言い出したんだぞ!あいつは!」
叔母さんは、叔父と再開した後、異世界に戻ってきたときにプリプリと怒って僕に言った。
「まあ、仕方ないよ。せっかく再会したのにまた直ぐに仕事に行ったんでしょ?」
「それは、当たり前だろう?わたしも、向こうに戻るまで四季の感覚が無くなっていたからうっかりしていたが、ちょうど大事な時期じゃないか!」
「まあ、たぶん。」
僕は叔父の仕事については詳しくはないけど、一応いつ頃が大事な時期なのかぐらいはなんとなく分かっている。
叔父は元フィギュアスケートの選手だ。
僕は現役時代を知らないけれど、映像では見たことがある。
日本人にしては手足が長くて細身の叔父は、優しげな顔立ちに華やかな衣装が似合っていて女性ファンからとても人気があった、らしい。
ただ、残念なことにメンタルがとても弱かった。
「スポーツ選手としては致命的だ。」
と、その頃を知る叔母は容赦がない。
仕事中の叔父は知らないけど、家での叔父はその辺は変わっていない。
今はコーチをやっていて、自分の担当する選手にくっついて世界を飛び回っている。そして、ちょうどシーズン最後の一番大事な時期なはず。
仕事を放り出したら多大な迷惑を周囲に掛ける。
叔母が怒るのも当たり前だろう。
異世界への扉もクローディアに頼んで僕と叔母さんしか開けれないようにしてもらった。
「そうでもしないと、仕事から逃避してこっちの世界に来たがるかもしれないからな。」
「それで?叔父さんは?」
「当分、海外遠征だ。」
せっかく叔母さんと再会できたのに可哀そうに...。
「叔母さんは、向こうで死んだことになっているけど叔父さん以外の人に対しては何て言うの?」
例えば同じマンションの人とか?職場の人とか?
「う~ん、それなんだけどな...。」
叔母さんは少し考え込む。
「生きていましたって説明して歩くのもなぁ。今更職場にも戻れないし、他の人間には死んだままにしておくしかないんじゃないか?マンションから外には出ないようにして、後はこっちで暮らすことにするよ。一応、こっちの世界なら仕事もあるし。」
ええ?それでいいの?
「だってなあ、火葬も葬式もしたんだろう?ああ、そういえば自分の遺骨を見るのは結構ショックだな。」
「まあ、そうだろうね。」
経験はないけど...。
そんな訳で叔母さんは結局、叔父が海外出張から帰ってきた時や、日本に居る時だけマンションに顔を出すことになった。
出張から帰った叔父を叔母は自宅で待っていた。
もともと、叔母とは正反対でメンタルの弱い叔父は叔母の予想では卒倒するか、逃げ出すか、泣き出すか...。
まあ、どうやってもそうとうパニックになるだろうと踏んでいた。
ところが、予想に反して叔母が自宅のリビングに居たのを見ても意外と冷静だった叔父は、次の日の朝まで全て夢の中の出来事だと思っていたらしい。
異世界についての説明もすんなり聞いていたからおかしいと思ったんだ。
そう言って後日叔母さんはぼやいていた。
次の日の朝、叔母がまだ居るのを見て今度こそ卒倒した叔父は、気がつくと叔母にしがみついて泣き出しやっと叔母の言うことを信じた。
異世界についてはともかく叔母が生きていると言うことは信じたらしい。
そして、自分も叔母と一緒にこちらの世界に来ると言い張ったらしいが、叔母が仕事を投げ出して来るのは駄目だと突っぱねた。
と言うのも、叔父の仕事はなかなか直ぐに代わりがきくものでも無かったからなのだが。
「まったく!直ぐにでも仕事を放り出してこっちに来るとか言い出したんだぞ!あいつは!」
叔母さんは、叔父と再開した後、異世界に戻ってきたときにプリプリと怒って僕に言った。
「まあ、仕方ないよ。せっかく再会したのにまた直ぐに仕事に行ったんでしょ?」
「それは、当たり前だろう?わたしも、向こうに戻るまで四季の感覚が無くなっていたからうっかりしていたが、ちょうど大事な時期じゃないか!」
「まあ、たぶん。」
僕は叔父の仕事については詳しくはないけど、一応いつ頃が大事な時期なのかぐらいはなんとなく分かっている。
叔父は元フィギュアスケートの選手だ。
僕は現役時代を知らないけれど、映像では見たことがある。
日本人にしては手足が長くて細身の叔父は、優しげな顔立ちに華やかな衣装が似合っていて女性ファンからとても人気があった、らしい。
ただ、残念なことにメンタルがとても弱かった。
「スポーツ選手としては致命的だ。」
と、その頃を知る叔母は容赦がない。
仕事中の叔父は知らないけど、家での叔父はその辺は変わっていない。
今はコーチをやっていて、自分の担当する選手にくっついて世界を飛び回っている。そして、ちょうどシーズン最後の一番大事な時期なはず。
仕事を放り出したら多大な迷惑を周囲に掛ける。
叔母が怒るのも当たり前だろう。
異世界への扉もクローディアに頼んで僕と叔母さんしか開けれないようにしてもらった。
「そうでもしないと、仕事から逃避してこっちの世界に来たがるかもしれないからな。」
「それで?叔父さんは?」
「当分、海外遠征だ。」
せっかく叔母さんと再会できたのに可哀そうに...。
「叔母さんは、向こうで死んだことになっているけど叔父さん以外の人に対しては何て言うの?」
例えば同じマンションの人とか?職場の人とか?
「う~ん、それなんだけどな...。」
叔母さんは少し考え込む。
「生きていましたって説明して歩くのもなぁ。今更職場にも戻れないし、他の人間には死んだままにしておくしかないんじゃないか?マンションから外には出ないようにして、後はこっちで暮らすことにするよ。一応、こっちの世界なら仕事もあるし。」
ええ?それでいいの?
「だってなあ、火葬も葬式もしたんだろう?ああ、そういえば自分の遺骨を見るのは結構ショックだな。」
「まあ、そうだろうね。」
経験はないけど...。
そんな訳で叔母さんは結局、叔父が海外出張から帰ってきた時や、日本に居る時だけマンションに顔を出すことになった。
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